Time Out of Mind
評価: 3.4
1997年発売の30作目のアルバムで、「Oh Mercy」以来のダニエル・ラノワが、プロデュースしたアルバムです。「Oh Mercy」も名作でしたが、本作も傑作なアルバムに仕上がっています。ダニエル・ラノワのプロデュース能力の凄さを感じるとともに、ボブ・ディランの曲との相性の良さを感じます。全体的に、激しい曲はなく、渋いブルース曲が多くを占めており、16分に及ぶ「Highlands」などは、アンビエントの要素も感じさせます。ボブ・ディランの1990年代のアルバムの中では、最も素晴らしいアルバムとなりました。本作は、1998年のグラミー賞で最優秀アルバム賞とベスト・コンテンポラリー・フォーク・アルバム部門を受賞しています。
The Times They Are a-Changin 時代は変る
評価: 3.5
1964年発売の3作目のアルバムで、全曲ボブ・ディランのオリジナル曲が収録されており、ボブ・ディランのアルバムの中で、最も政治色が強い作品になっています。ジャケットのボブ・ディランの難しい顔が、このアルバムを象徴しています。プロテスト・ソング以外にも、恋人スーズ・ロトロとの別れを歌った「いつもの朝に」や「スペイン革のブーツ」が、本作を、更に冷たくさせています。前作「フリーホイーリン」のプロテスト・ソングには、カラッとした明るさがありましたが、本作は、明るさはなく、深刻さが増しています。全米チャート20位、全英チャート4位を記録しました。
Oh Mercy
評価: 3.6
1989年発売の26作目のアルバムで、U2やピーター・ガブリエルのプロデューサーで有名なダニエル・ラノワが、プロデュースしたアルバムです。それが功を成し、久々の傑作なアルバムに仕上がりました。ノリの良いロック調のオープニング・ナンバー「Political World」から、本作が良作であることが分かり、このオープニング・ナンバーのキレの良さが、そのままラストまで続いていきます。ボブ・ディランの声は、以前に増して、しゃがれ声になっているように感じます。1980年代のアルバムは、不毛な作品が続いてきましたが、本作で、完全に不毛時代を脱出することができました。1980年代ラストに相応しい素晴らしいアルバムです。
Modern Times
評価: 3.7
2006年発売の32作目のアルバムで、「欲望」以来30年ぶりの全米チャート1位を記録し、ボブ・ディラン初の初登場1位となったアルバムです。ボブ・ディランのひねくれた毒がなくなり、マイルドな曲が多く収録されているため、一般受けするアルバムです。ジャケットのように夜のニューヨークに似合い、普通にバーでかかっていても聞き流せる心地よさがこのアルバムにはあります。1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、それぞれの時代に、1枚は名作なアルバムを制作してきたボブ・ディランですが、2000年代においては、本作を名作として位置づけることができます。ボブ・ディランが65歳のときに発売されたアルバムですが、全く衰えを感じさせないアルバムです。
Desire 欲望
評価: 3.8
1976年発売の17作目のアルバムで、ボブ・ディランのアルバムの中では、最も尖っており、傑作アルバムとの呼び名の高いアルバムです。有名・無名問わず、多くのミュージシャンをスタジオに呼んで制作が開始されましたが、有名なアーティストは離脱し、結果、エミルー・ハリス以外、無名のアーティストで制作されたアルバムです。特に、本作では、スカーレット・リヴェラのバイオリンが、光っており、今までのボブ・ディランのアルバムにはない雰囲気を作り出しています。投獄された黒人ボクサー ルービン・カーターを歌った「ハリケーン」や、マフィアのジョイ・ガーロをテーマにした「ジョーイ」など、話題性のある曲を収録しており、5週連続全米No.1を記録するなど、ベストセラーとなった作品です。
The Freewheelin’ Bob Dylan
評価: 4.0
1963年発売のセカンド・アルバムで、ボブ・ディランのオリジナル曲が大半を占めている作品です。反体制的な主張や抗議を取り入れたプロテスト・ソングが多いですが、「くよくよするなよ」や「北国の少女」などのラブ・ソングも収録されています。本作から、ボブ・ディランは、一気にスターダムにのし上がっていきます。ジャケットに写っている女性は、当時のボブ・ディランの恋人スーズ・ロトロで、ボブ・ディランと仲睦まじく見えますが、実際は、別れる、別れないのゴタゴタのなか撮影されています。全米チャート22位、全英チャート1位を記録しました。

Blonde on Blonde

評価: 4.2
1966年発売の7作目のアルバムで、ボブ・ディランのこれまでのアルバムの集大成的な作品です。「追憶のハイウェイ61」の延長線上のアルバムですが、当時では珍しい2枚組のアルバムで発売したり、レコード1面(D面)に、1曲だけ収録するといったチャレンジングな試みがされています。メロディアスでキャッチーな曲が多く、特に、「I Want You」「Just Like a Woman」は、ボブ・ディランを知らない人にも馴染みやすい名曲です。本作発売後、ボブ・ディランはバイク事故を起こし、しばらく、隠遁生活を送ることになります。

Highway 61 Revisited 追憶のハイウェイ61

評価: 4.4
1965年発売の6作目のアルバムで、前作「Bringing It All Back Home」以上に、ロック色が押し出されたフォーク・ロックの名盤アルバムです。エレクトリック化が進み、本作では、キーボードの比重が高まっています。マイク・ブルームフィールドやアル・クーパーがゲスト参加しており、アル・クーパーは、オルガンとピアノを演奏しています。本作の中では、「ライク・ア・ローリング・ストーン」が最も有名な曲で、ボブ・ディランのシングルで、初めてヒットし、全米No.2を記録しています。「ライク・ア・ローリング・ストーン」以外では、廃れた都会を感じさせる渋いブルース曲「Ballad of a Thin Man」や、11分にも及ぶバラード曲「廃墟の街」が、おすすめ曲です。捨て曲はなく、名盤の名に相応しい歴史的なアルバムです。

Blood on the Tracks 血の轍

評価: 4.5
1975年発売の15作目のアルバムで、ボブ・ディランのアルバムの中で、傑出した最高傑作アルバムです。妻サラとの破局時に発表されたアルバムであるため、哀愁漂うラブ・ソングが多くを占めています。前作「Planet Waves」は、バンド形式の作品でしたが、本作は、アコースティック・ギターの弾き語りに戻っています。ボブ・ディランの本気度を感じさせる作品ですが、ボブ・ディラン自身は、「なぜ、こんな暗いアルバムが売れるのか分からない」と、意にも介さないような発言をしています。しかし、本作の収録曲は、どの曲も素晴らしく、ボブ・ディランのアルバムの中で、最もメロディアスで魅力的なアルバムです。前作に引き続き、全米No.1を記録しました。
ボブ・ディランのライブ・アルバム
- Before the Flood 偉大なる復活
- 1974年にザ・バンドと一緒に回ったツアーの模様を収録した2枚組ライブ・アルバムです。このツアーは、当時のロック史上最大のもので、総動員数延べ65万人と大規模なツアーでした。
- ボブ・ディランには珍しく、ファンの望む代表曲をふんだんに演奏しており、ボブ・ディランのベスト・アルバムとして聞くのにも最適なアルバムです。ザ・バンドの演奏も迫力満点です。
- Hard Rain 激しい雨
- 1976年のローリング・サンダー・レヴュー(1975年-76年にボブ・ディランを中心としたアーティストらによって行われたライブツアー)の模様を収録したライブ・アルバムです。
- 1976年は、パンクが勃発してきた時代で、ボブ・ディランもパンクを意識したのか、このライブでは荒削りな演奏がされています。
- 「はげしい雨が降る」を、雨の中で演奏したことが、このアルバム名の由来となっていますが、なぜか、「はげしい雨が降る」は、このアルバムから外されてしまっています。
- Bob Dylan at Budokan 武道館
- 1978年に日本武道館で行われたコンサートの模様を収録した2枚組のライブ・アルバムです。
- ボブ・ディランの代表曲が詰まっており、ベストな選曲がされていますが、サックスやフルート、女性コーラスが入ったりと、スタジオ・アルバムとは異なるアレンジがされています。観客も、このアレンジに戸惑ったのか歓声がまばらに感じます。
- Real Live
- 1984年ヨーロッパ公演から、7月のニューキャッスル、ロンドン、ダブリンの公演を収録したライブ・アルバムです。ボブ・ディランの初期の名曲を多く取り上げています。
- ミック・テイラーやサンタナが参加していることから、ロック色の強い演奏となっています。ミック・テイラーのギターは、ローリング・ストーンズを彷彿させています。
- Dylan & the Dead
- 1987年のグレイトフル・デッドとの共演ツアー「Alone & Together」の模様を収録したライブ・アルバムです。ゴスペル時代の曲と、1960年代の古い曲が選曲されており、比較的、スタジオ・アルバムに忠実に演奏を行っています。
- グレイトフル・デッドの影響を受けてか、ボブ・ディランは、1988年から、「ネヴァー・エンディング・ツアー」を開始していきます。
- MTV Unplugged
- 1994年ニューヨークのソニー・ミュージック・スタジオで録音されたスタジオ・ライブ・アルバムです。
- 元々、ボブ・ディランの音楽は、アコースティックから始まっているため、アンプラグドをやっても、何も目新しさは感じませんが、1960年代の古い曲を中心に演奏しているため、ボブ・ディランの真骨頂が発揮されています。
ボブ・ディランのその他のアルバム
- Shadow Kingdom
- 2021年7月に有料配信されたモノクロのパフォーマンス映像の音源を収録したアルバムです。ボブ・ディランの既出曲ばかりですが、ドラムレスの渋いアレンジがされています。
- ボブ・ディランの有名曲は収録されておらず、コアな選曲がされています。1970年代、1980年代の曲が数曲、選曲されていますが、1960年代の曲が大部分を占めています。
まとめ
最後に、ボブ・ディランのランキング結果をまとめます。
順位 | アルバム名 | 点数 |
---|---|---|
1位 | Blood on the Tracks 血の轍 | 4.5 |
2位 | Highway 61 Revisited 追憶のハイウェイ61 | 4.4 |
3位 | Blonde on Blonde | 4.2 |
4位 | The Freewheelin’ Bob Dylan | 4.0 |
5位 | Desire 欲望 | 3.8 |
6位 | Modern Times | 3.7 |
7位 | Oh Mercy | 3.6 |
8位 | The Times They Are a-Changin 時代は変る | 3.5 |
9位 | Time Out of Mind | 3.4 |
10位 | Tempest | 3.35 |
11位 | Together Through Life | 3.3 |
12位 | Planet Waves | 3.25 |
13位 | Bringing It All Back Home | 3.2 |
14位 | Infidels | 3.15 |
15位 | Love and Theft | 3.1 |
16位 | Another Side of Bob Dylan | 3.05 |
17位 | Saved | 3.0 |
18位 | Slow Train Coming | 2.95 |
19位 | New Morning 新しい夜明け | 2.9 |
20位 | Rough and Rowdy Ways | 2.85 |
21位 | World Gone Wrong 奇妙な世界に | 2.8 |
22位 | Good as I Been to You | 2.75 |
23位 | Street Legal | 2.7 |
24位 | Nashville Skyline | 2.65 |
25位 | Under the Red Sky | 2.6 |
26位 | John Wesley Harding | 2.55 |
27位 | Triplicate | 2.5 |
28位 | Fallen Angels | 2.45 |
29位 | Shadows in the Night | 2.4 |
30位 | Self Portrait | 2.35 |
31位 | The Basement Tapes 地下室 | 2.3 |
32位 | Christmas in the Heart | 2.25 |
33位 | Down in the Groove | 2.2 |
34位 | Shot of Love | 2.15 |
35位 | Dylan | 2.1 |
36位 | Bob Dylan | 2.0 |
37位 | Empire Burlesque | 1.95 |
38位 | Knocked Out Loaded | 1.9 |
39位 | Pat Garrett & Billy the Kid | 1.8 |
TOP10内に、1960年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代のアルバムが、それぞれランクインする結果となりました。
60年に渡る音楽活動を行っている中で、どの時代にも、優れたアルバムがあるということに、ボブ・ディランの偉大さを感じます。
現在80歳を超えているにも関わらず、いまだに、アルバムを発表したり、ライブをやったりと、音楽制作意欲にも、感服してしまいます。
今後も、元気に、音楽活動を続けていってもらいたいと願っています。
次回は、3大ギタリストの1人であったジェフ・ベックの全アルバム ランキングをしていきたいと思います。