Shadows in the Night
評価: 2.4
2015年発売の36作目のアルバムで、全曲フランク・シナトラのカヴァー曲で構成されているアルバムです。ボブ・ディランの歌声は、いつものダミ声とは異なり、ジャズらしく、メロディを抑え静かに歌っています。全体的に暗く静かなジャジーなアルバムであるため、今までのボブ・ディランのカントリーやロック、ブルースを期待して聞くと、肩透かしをくらいます。本作を聞くと、ボブ・ディランの熟練さを感じるとともに、「ボブ・ディランも歳をとったな」としみじみと感じてしまいます。
Fallen Angels
評価: 2.45
2016年発売の37作目のアルバムで、前作「Shadows in the Night」と同様、全曲フランク・シナトラのカヴァー曲で構成されているアルバムです。1970年代の後半から1980年代初頭に、ゴスペル3部作で、ボブ・ディランがゴスペルを歌っていたのと同様に、ボブ・ディランがジャズを歌うことに対して、しっくりきているような、きていないような微妙な印象を持ちます。前作「Shadows in the Night」とセットにして聞くのが良い作品です。
Triplicate
評価: 2.5
2017年発売の38作目のアルバムで、ジャズのスタンダード曲が多く収録された3枚組のアルバムです。前々作「Shadows in the Night」、前作「Fallen Angels」は、フランク・シナトラのマイナーな曲に焦点を当てていましたが、本作は、有名なスタンダード曲ばかりを、カヴァーしています。オーケストラやストリングスが加わったことにより、前々作、前作よりも迫力が増していますが、全体的に、ムード音楽のような雰囲気があります。往年のボブ・ディラン ファンは、まさか、このようなムード音楽を、ボブ・ディランが歌うなんて想像すらできなかったかと思います。ジャズ好きな人が、ジャズのスタンダード曲集として聞くには、楽しめるアルバムです。
John Wesley Harding
評価: 2.55
1967年発売の8作目のアルバムで、前作までのエレクトリックな演奏は無くなり、アコースティックに戻った作品です。1966年に、ボブ・ディランは、バイク事故によって、全てのスケジュールをキャンセルし、隠遁生活を送っていました。この隠遁生活では、ザ・バンドのメンバーと山にこもり、穏やかな生活を送っていたようで、本作は、まさに、山奥の穏やかな生活を再現しているような作品となっています。ジミ・ヘンドリックスのカヴァーで有名な「All Along the Watchtower」だけが、尖った印象を受けますが、それ以外は、穏やかなカントリーの曲が多くを占めています。天気の良い日に外でこのアルバムを聞けば、のんびりとした気分に浸れる、そんなアルバムです。
Under the Red Sky
評価: 2.6
1990年発売の27作目のアルバムで、デヴィッド・ウォズとドン・ウォズ兄弟のプロデュースによる1990年代最初のアルバムになります。前作「Oh Mercy」は、久々の傑作のアルバムでしたが、本作は、シンプルなロックのアルバムで、ボブ・ディランの中では、地味な部類に属する作品となりました。前作「Oh Mercy」が、傑作アルバムになったのは、ダニエル・ラノワの手腕によるところが大きかったですが、本作では、ウォズ兄弟のプロデュースとなったため、作風が変わってしまいました。ジョージ・ハリスン、エルトン・ジョン、スラッシュ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなど、豪華アーティストが多数参加しています。
Nashville Skyline
評価: 2.65
1969年発売の9作目のアルバムで、前作「John Wesley Harding」と同様、カントリーに傾倒した作品ですが、いつものボブ・ディランのダミ声ではなく、カントリーらしい美しい歌声を披露しています。カントリーに傾倒してしまっただけでも驚きであるのに、この歌声には、当時のボブ・ディランのファンは、相当、驚いたのではないかと想像します。オープニング・ナンバー「Girl from the North Country」は、カントリー歌手ジョニー・キャッシュとデュエットしており、ボブ・ディランは、ジョニー・キャッシュの歌声に負けじ劣らずの美しい声で歌っています。本作の中では、映画「真夜中のカーボーイ」の主題歌のために作曲した「Lay Lady Lay」が有名曲で、ボブ・ディランのライブの定番曲になっています。ボブ・ディランの異質な作品と捉えるのがよいアルバムです。
Street Legal
評価: 2.7
1978年発売の18作目のアルバムで、「血の轍」「欲望」と名作が続いてきましたが、それらの名作とは異なる方向に進んでしまった作品です。全体的にソウル色が強く、女性コーラスやサックスを取り入れて大掛かりなバンド形式で演奏されています。本作発売前に、武道館コンサートが行われましたが、そのコンサートでも、大編成のバンドにバックコーラスを取り入れたものでした。この武道館コンサートは、白けた微妙な雰囲気だったそうですが、本作も、微妙な雰囲気を感じさせる作品です。しかし、英国チャートでは、No.2を記録し、プラチナ・ディスクに認定されました。
Good as I Been to You
評価: 2.75
1992年発売の28作目のアルバムで、1964年発売の『Another Side of Bob Dylan』以来の全曲アコースティック・ギターによる弾き語りのアルバムです。1960年初頭に比べると、録音技術が向上し、同じアコースティック・ギターのアルバムであっても、雰囲気が異なり、聴きやすいアルバムに仕上がっています。また、全曲カヴァー曲で、ボブ・ディランのオリジナル曲が収録されていない初のアルバムでもあります。本作ら、後期のボブ・ディランの酔っ払い風のボーカルに変わってきています。アコースティック・ギターの味わい深いアルバムです。
World Gone Wrong 奇妙な世界に
評価: 2.8
1993年発売の29作目のアルバムで、前作「Good as I Been to You」と同様、全曲カヴァー曲のアコースティック・ギターによる弾き語りのアルバムです。本作は、グラミー賞ベスト・トラディショナル・フォーク・アルバムを受賞しました。前作よりもリラックスした雰囲気で、静かな渋い曲が多く収録されています。本作は、トラディショナルなアルバムですが、トラディショナルの曲を知らない人やトラディショナルが苦手な人でも、問題なく聞くことができます。それだけ、ボブ・ディランのギター演奏と歌声には、説得力があります。ジャケットも、前作と比べると、ヨーロッパ風で数段良くなりました。
Rough and Rowdy Ways
評価: 2.85
2020年発売の39作目のアルバムで、2012年のアルバム「Tempest」以来のボブ・ディランのオリジナル曲で構成されたアルバムです。前3作のようなジャズのアルバムではありませんが、前3作の雰囲気をうまく取り入れた静かなブルース・アルバムです。ボブ・ディランが79歳のときのアルバムですが、79歳とは思えない、昔と変わらない歌声を維持しています。ボブ・ディランの達観した音楽を味わえる深みのある、そんなアルバムです。
次は、19位 → 10位 です。