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ラフマニノフ 「音の絵」「ピアノソナタ」の紹介・評価|ラフマニノフのピアノ作品ランキング
前回は、「楽興の時」「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」の紹介・評価をしましたので、今回は、ラフマニノフのピアノ作品集「音の絵」「ピアノソナタ」を紹介・評価していきたいと思います。
「音の絵」と「ピアノソナタ」は、ラフマニノフが最も油がの乗っていた時代の1907年〜1917年に作曲された作品であり、芸術性の高い作品になっています。
ラフマニノフ自身が、ヴィルトゥオーソ(格別な技巧や能力によって名人、達人の域に達した人物)であったこともあり、「音の絵」と「ピアノソナタ」は、ラフマニノフの作品の中でも、相当のピアノ技術の持ち主でないと弾くことが困難な作品です。
そんなラフマニノフの作品を評価していきますが、評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価と違うところもあるかもしれませんが、その点、ご了承ください。
ラフマニノフの曲を聞いてみたい方、ラフマニノフのピアノ曲の評価や、おすすめの曲を知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
評価結果は、以下の通りになりました。
作品 | 評価(10点満点) |
---|---|
音の絵 作品33 | 6.63点 |
音の絵 作品39 | 7.11点 |
ピアノソナタ第1番 | 7.0点 |
ピアノソナタ第2番 | 7.67点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
音の絵 作品33
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | ヘ短調 | 短調の曲ですが、華やかさのある行進曲のような曲です。ラフマニノフは「ショパンの練習曲 作品25-4を弾きながら、この第1番を作曲した」と述べています。中間部はなんとなくショパンの曲に似ているといえば似ているかもしれませんが、ショパンほど甘美的な曲ではありません。 | 5点 |
2 | ハ長調 | 装飾音を終始鳴り響かせ、水が光で反射しキラキラした印象主義的な旋律と、ロマン派の甘美的な旋律が入り混じったような曲です。ラフマニノフの作品の中では女性的で美しい曲です。 | 8点 |
3 | ハ短調 | 低音が響く葬送曲のような暗い前半から、後半は、長調に転調し、高音と低音が入り混じった美しい旋律を持つ二部構成の曲です。後半は、ショパンを感じさせる甘美的なメロディを持っています。 | 7点 |
4 | ニ短調 | ロシアの民謡を感じさせる舞曲のような曲ですが、ラフマニノフらしい男らしさを感じます。短調の曲ですが、弾むようなリズムが、楽しさを感じさせます。 | 6点 |
5 | 変ホ短調 | 高速で、かなりのピアノ技術が必要そうな曲です。近代的な要素を多分に含んでおり、ラフマニノフの目指していたロマン派の要素とは異なる曲です。まさに練習曲に相応しい作品です。 | 6点 |
6 | 変ホ長調 | ラフマニノフ本人が、「市場の情景」であると言っていた通り、華やかな市場を想像できる曲です。前曲ほどの高速さはありませんが、広い音域の和音を一定のリズムで演奏しなければないところは、高度なピアノの演奏技術が必要な曲です。 | 7点 |
7 | ト短調 | ゆったりとした憂鬱な静かなイントロから、一気に、盛り上がりを見せたかと思うと、また静かな憂鬱な旋律へと戻り終了していきます。静と動がはっきりとした曲です。 | 7点 |
8 | 嬰ハ短調 | 雷電のように低音の激しい曲ですが、ロマンチックさが秘められており、ショパンの練習曲のようにも聞こえます。左手の低音の練習曲だと思いますが、この曲も相当なピアノの演奏技術が必要そうに感じます。 | 7点 |
平均点 | 6.6点 |
「音の絵」は2集に分かれており、この作品は、その第1集にあたり、1911年に作曲されています。ラフマニノフが作曲した当時は、9曲で成り立っていましたが、そのうちの1曲は、第2集に組み込まれました。
短い曲が多く、練習曲と前奏曲を足したような作品で、ロマン派と印象派を含んだ曲で構成されています。練習曲だけあって、ピアノ演奏の難易度の高い作品です。
音の絵 作品39
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | ハ短調 | 不気味な雰囲気を持つ曲から「音の絵」第二集が始まります。中間部では、高音が出てきて少し明るさがありますが、おどろおどろしさを持つ低音が中心で、緊迫感のある曲です。 | 7点 |
2 | イ短調 | 「海とかもめ」の標題を持つ曲です。前半は坦々としたリズムで音が繰り広げられ、後半では、第1番「ハ短調」と同様、低音のおどろおどろしさが出てきます。寒寒しい冬の海をカモメが飛んでいるイメージを持つ曲です。 | 7点 |
3 | 嬰ヘ短調 | 第1番「ハ短調」、第2番「イ短調」と暗めの曲が続きましたが、この曲は、華やかで迫力のある作品です。しかし、短調の曲ということもあって、暗さを秘めており、冒頭部の華やかさとは別に、末尾は、静かに終わっていきます。 | 7点 |
4 | ロ短調 | ロシアの民謡を感じさせる舞曲風で、躍動感が溢れている曲です。暗めの曲が多い「音の絵」第二集ですが、その中では、この曲は、異彩を放ち、浮いている印象を持ちます。 | 6点 |
5 | 変ホ短調 | 最初から最後までドラマチックで、哀愁の漂う曲です。ラフマニノフのピアノ曲の中では、あまり有名ではないのかもしれませんが、ピアノ協奏曲第2番のように展開が素晴らしく、ラフマニノフのピアノ曲の中では、個人的に好きな曲の一つです。 | 9点 |
6 | イ短調 | 「赤頭巾ちゃんと狼」の標題を持つ曲です。言われてみれば、赤ずきんちゃんが狼から逃げている雰囲気が出ています。なぜ、「赤頭巾ちゃんと狼」をテーマにしたのかは不思議ですね。おとぎ話のような暖かさはなく、怖さが溢れている曲です。 | 6点 |
7 | ハ短調 | 「葬送行進曲」の標題を持つ曲です。死をテーマにしているため、とにかく暗く絶望的な作品です。後半に、長調に転調し、希望が見えてくる瞬間があり、唯一、救いを感じます。 | 7点 |
8 | ニ短調 | 「音の絵」第二集の中で、最も美しい曲で、印象主義の色合いが強い作品です。ショパンを彷彿させるメロディが、所々で垣間見れます。終盤に向けて、盛り上がっていく展開が素晴らしい作品です。 | 8点 |
9 | ニ長調 | 「音の絵」第二集の中で、唯一の長調の曲で、ラフマニノフは、この曲を、「民族的風景、東洋の行進曲」と標しています。その通り、行進曲ではありますが、東洋さはあまり感じられず、ロシアの行進曲に近い作品です。 | 7点 |
平均点 | 7.1点 |
ラフマニノフの友人であるスクリャービンや、父親が亡くなった時代に作曲された作品であることから、暗い曲が多くを占めています。
暗い作品ではありますが、ドラマチックな展開が見られ、ラフマニノフの円熟した作曲能力が見られます。練習曲というよりも芸術性の高い作品です。
ピアノソナタ第1番
No | 曲名 | 感想 | 評価 |
---|---|---|---|
1 | 第1楽章 | この曲は、ゲーテの「ファウスト」の肖像を標題にしています。ベートベンのピアノソナタのような格式がある一方、近代的な要素も含まれており、変拍子で、目まぐるしく曲が展開されていきます。ピアノの演奏技術は、鬼気迫るものがあります。 | 6点 |
2 | 第2楽章 | この曲は、「グレートヒェン」の肖像を標題にしており、ベートベンのピアノソナタと同様、第2楽章はテンポの遅い静かな曲になっています。古典的な要素が強く、ピアノのきらめきがとても美しく、甘美的な曲です。 | 8点 |
3 | 第3楽章 | この曲は、「メフィストフェレス」の肖像を標題にしており、自由なソナタ形式で、ピアノの超絶技巧を必要とする曲です。第1楽章と同様、曲の展開が目まぐるしく、躍動感がすごく、ピアノソナタとは思えないくらいのドラマチックな展開がされています。 | 7点 |
平均点 | 7.0点 |
ゲーテの「ファウスト」を題材として構想されたピアノソナタで、第1楽章が「ファウスト」、第2楽章が「グレートヒェン」、第3楽章が「メフィストフェレス」の標題を持つソナタです。
この作品では、第2楽章が有名で、第1楽章はあまり演奏されることがありませんが、第1楽章も名曲です。近代音楽において、ゲーテの「ファウスト」を題材にしたり、ソナタ形式の曲を作曲したりと、ラフマニノフは、時代遅れなど気にせず、独自路線をいっています。
ピアノソナタ第2番
No | 曲名 | 感想 | 評価 |
---|---|---|---|
1 | 第1楽章 | ピアノソナタ第1番の方は、古典的なピアノソナタ形式を感じさせるところがありましたが、この曲は、古典的なソナタ形式の要素はなく、ラフマニノフの独自性が表れています。高速の迫力のある演奏が大半ですが、途中で、ゆったりとしたテンポに変わったり、美しいメロディが表れたりと目まぐるしい展開がされます。 | 8点 |
2 | 第2楽章 | 前半は、ピアノソナタ第1番 第2楽章と同様、テンポの遅い静かな曲です。どことなくラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」のメロディに似ています。後半から、曲調が激しく変化していき、高速の迫力のある演奏に変わっていきますが、末尾は、静かに終了していきます。 | 7点 |
3 | 第3楽章 | 全体的にショパンのスケルツオを彷彿させる曲です。オーケストラのような迫力があり、ピアノ1本で、よくここまで情熱的な音楽を作れるものだと感心してしまいます。それだけピアノの演奏が難曲なのだと思います。末尾は、速度を加速させて、一気に盛り上げて終了していきます。 | 8点 |
平均点 | 7.7点 |
ピアノソナタ第1番は、ゲーテの「ファウスト」を題材として作曲されたピアノソナタでしたが、第2番の方は、特に題材はなく作曲されています。
とにかく曲の展開が目まぐるしく、壮大でドラマチックな作品です。ピアノの音数が多く高速であるため、一聴しただけで、ピアノの演奏が難曲であることが分かります。
まとめ
今回は、ピアノ独奏曲の作品集の中から、「音の絵」と「ピアノソナタ」を紹介・評価しました。
「音の絵」と「ピアノソナタ」は、演奏技術も、芸術性の高さも、ラフマニノフらしさが表れている作品でした。
ラフマニノフの熟練した迫力のあるピアノ独奏曲を、聞いてみたい方は、「音の絵」と「ピアノソナタ」から聞いていくことをおすすめします。
次回は、ピアノ独奏曲の最後として、ピアノ単独作品を紹介・評価していきたいと思います。
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