ラフマニノフ 「楽興の時」「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」の紹介・評価

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ラフマニノフ 「楽興の時」「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」の紹介・評価|ラフマニノフのピアノ作品ランキング

前回は、ラフマニノフの「4つの小品」「3つの夜想曲」「幻想的小品集」「サロン的小品集」の紹介・評価をしましたので、今回は、ラフマニノフのピアノ作品集「楽興の時」「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」を紹介・評価していきたいと思います。

「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」は、ラフマニノフの熟練した作品であり、ロマン派、特にショパンの影響を受けていることが分かる作品です。

ラフマニノフらしい男らしい曲から、甘美的な曲まで聴きどころの多い作品となっています。

そんなラフマニノフの作品を評価していきますが、評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価と違うところもあるかもしれませんが、その点、ご了承ください。

ラフマニノフの曲を聞いてみたい方、ラフマニノフのピアノ曲の評価や、おすすめの曲を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

評価結果は、以下の通りになりました。

作品評価(10点満点)
楽興の時7.33点
10の前奏曲集6.7点
13の前奏曲集6.61点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

楽興の時

No曲名感想評価点
1変ロ短調全体的に荘厳で静かな曲ですが、激しく盛り上がるパートがあったり、ショパンのような甘美的なメロディが出てきたりします。この作品の中では、最も長い曲で、8分近くあります。荘厳さ、華やかさ、美しさを秘めた曲です。7点
2変ホ短調第1番の「変ロ短調」から一転、この曲は、激しさがあり、終始、休まるところはなく、高速なピアノ演奏が続けられます。焦りや怒り、不安を感じさせる曲でもあります。8点
3ロ短調スローテンポのとても暗い曲で、「葬送行進曲」や「哀歌」と呼ぶに相応しい曲です。ピアノの低音が多く使用されており、重低音が響きます。6点
4ホ短調この曲は、左手が疾走する速い曲で、嵐を感じさせる曲です。左手の練習曲としても通じ、左手はショパンの「革命」を想起させますが、右手は、「革命」ほどの激しさは感じられません。8点
5変ニ長調心安らぐ美しい曲です。第4番「ホ短調」が嵐を感じさせる曲でしたので、その嵐が去り、光が差し込んできて眩しいイメージを持ちます。左手のメロディが終始繰り返され、田園的な雰囲気も感じさせます。「楽興の時」の中では、最も落ち着ける曲です。7点
6ハ長調冒頭部は、中低音の重厚なメロディが繰り返され、その後、高音の軽やかなメロディが続いていきます。最終曲に相応しく、堂々たる曲で、ピアノの音域を極限に使用したラフマニノフらしく男らしい曲です。8点
平均点7.3点

 ラフマニノフが、1896年、23歳のときに作曲した6曲から成るピアノ曲集です。シューベルトの曲の中にも、同じ題名の「楽興の時」という作品がありますが、シューベルトというよりも、ショパンや、リストの影響を感じる作品です。
 当時のラフマニノフは金欠でかなり苦しかったことから、お金を得るために、急ぎ作り上げた作品と言われていますが、円熟味を帯びた素晴らしい作品です。

10の前奏曲集

No曲名感想評価
1嬰ヘ短調左手の暗いメロディに、ぽつん、ぽつんと入ってくる右手の高音の音が、特徴的な曲です。右手の高音の音は、どことなく、アンビエント・ミュージックのように感じます。6点
2変ロ長調第1番「嬰ヘ短調」の静かな曲から一転、派手な右手の和音が鳴り響く曲で、ロマン派を感じさせます。全体的に華やかで暑苦しさを感じますが、中間部では、音数が控えめになり、涼しさも出てきます。8点
3ニ短調荘厳な響きを持ち、バロックの雰囲気を感じさせる曲です。冒頭の「上から下に降りていくメロディ」が繰り返され、中間部では、高音主体の速いテンポの曲調に変わっていきます。しかし、それほど大きな展開はなく、地味な曲に感じます。5点
4ニ長調スローテンポのとても美しい曲で、ショパンを感じさせます。ラフマニノフの曲は、豪快で男らしい曲が多いですが、このような甘美で繊細な曲も作曲できるのは、ラフマニノフの優しさが表れているのかもしれません。7点
5ト短調ロシアの民族的な行進曲を感じさせ、この前奏曲集の中では、最も有名な曲です。この作品を弾くには、ラフマニノフのような大きな手が必要であり、ピアノの演奏技術の高い難曲です。7点
6変ホ長調第4番「ニ長調」と同様、ショパンのような甘美な曲です。第4番よりは、テンポは早く、水の流れや水のキラキラを感じさせる印象主義的な要素が入っており、とても美しい曲です。7点
7ハ短調この曲は、とても速く、繊細なピアノ演奏技術が求められ、ショパンの練習曲に入っていそうな曲です。ショパンでいうと、「革命」や「木枯らし」といった感じでしょうか。7点
8変イ長調こちらも繊細な曲で、ショパンに印象主義を加えたような曲調です。速い曲ではありますが、美しさと壮大さを秘めており、広い草原をイメージできます。8点
9変ホ短調この曲は、舞曲のようで、同じリズムとメロディが繰り返されていきます。ショパンの練習曲(作品10 第2番)に雰囲気が似ています。6点
10変ト長調この「前奏曲」の中では、最もゆったりとして静かな曲です。中間部では、テンポが速くなっていきますが、激しさはなく、終始、静かな演奏がされています。6点
平均点6.7点

 この作品ができる前に、「幻想的小品集」の中で、「前奏曲」が作曲されていましたが、それから11年後に制作された作品集です。長調と短調の曲が交互に配置されており、ショパンの前奏曲を意識して作られていることが分かります。
 ショパンに影響を受けていることが感じられ、激しい曲と静かな曲のバランスがよい作品です。

13の前奏曲集

No曲名感想評価
1ハ長調速く華麗な曲から、この前奏曲の幕が開けられます。終盤は、スローテンポになっていきますが、大部分のパートでは、速い演奏が繰り広げられ、ピアノ技巧も難しそうな曲です。6点
2変ロ短調冒頭は、静かな曲調ですが、速度を変化させていき、熱を帯びてきます。中間部は、右手で速い高音が演奏されていき、主題とは全く異なるメロディに変化します。そのバランスが絶妙な曲です。7点
3ホ長調全体的に華麗な曲で、舞曲のようなメロディや、暗めのメロディが表れたりと、曲調も激しく変化していきます。末尾では、静かに終了していきます。7点
4ホ短調冒頭で重厚な和音が繰り返された後、素速い軽めの和音が演奏されます。単音のパートでは、美しさがありますが、和音のパートは、重厚で情熱を帯びています。ピアノ演奏の難易度が高い曲です。7点
5ト長調ゆっくりとしたとても美しい曲で、冒頭は、リストの「愛の夢」を連想させます。高音の細かい音は、鳥の声を表しているようです。中間部では、トリルが多く出てきて華麗さも加わっていきます。8点
6ヘ短調第5番「ト長調」の美しさから一転、重低音の嵐のような激しさを持ち、練習曲にしても良さそうなダイナミックな曲です。1分半の短い曲です。6点
7ヘ長調この曲は、行進曲風のリズムが繰り返されていき、そのリズムに乗って、サロン風のメロディが加わっていきます。中間部では転調され、暗めのメロディも出てきて、アンバランスな変わった曲です。5点
8イ短調印象的なメロディが2回奏でられたあと、上から下へと目まぐるしく動き回る情熱的な曲です。華麗ではありますが、忙しさを感じる曲です。6点
9イ長調和音が多く使用された重厚さのある美しい曲です。和音を終始演奏しなければならないことから、ピアノ技巧を必要とします。音数がかなり多いですが、冗長な感じはせず、静けさを感じるパートもあります。7点
10ロ短調暗く悲しみを感じる冒頭部から、徐々に音量が大きくなり、重低音の和音が響いてきます。中間部では、右手の高音の速い演奏も繰り広げられ、壮大でドラマチックな展開を見せる曲です。7点
11ロ長調2分弱の短い曲ですが、ゆったりとした独特のリズムを持つ可愛らしい曲です。特に大きな展開はなく、この独特のリズムが繰り返されます。5点
12嬰ト短調「雪でおおわれた大地をソリが鈴を鳴らしながら走る様子を表している」と言われている曲で、右手の高音がせわしくなく動き続けているメロディが、雪をイメージすることができます。高音を多く使用している曲です。7点
13変ニ長調ラストは、6分ほどの壮大な曲で、出だしは荘厳なゆったりとした和音から始まり、そこからリズミカルな曲へと展開されていきます。中間部では、左手の重低音と右手の高音が鳴り響き、激しさと華麗さを持ち合わせてクライマックスを迎えます。8点
平均点6.6点

 「10の練習曲」から9年後の1910年に作曲された作品で、「10の練習曲」と同様、異なる長調と短調の曲が交互に配置された作品です。
 「10の練習曲」よりも円熟味が増し、更に情緒性が増したように感じます。「第5番の甘美的な曲」や、「第10番、第13番のドラマチックな展開を見せる曲」、「第6番の嵐のような激しさを持つ曲」など、バラエティ豊かな作品集です。

まとめ

今回は、ピアノ独奏曲の作品集の中から、3作品を紹介・評価しました。

「楽興の時」は、まだ、ラフマニノフが23歳のときの作品ではありますが、熟練さを感じさせる作品で、今回紹介しました3作品は、どれも、ラフマニノフの円熟味を感じる作品でした。

甘美なラフマニノフを味わうには、この「楽興の時」「10の前奏曲集」「13の前奏曲集」から、聞いてみるのが良いかと思います。

次回は、練習曲集「音の絵」と「ピアノソナタ」を紹介・評価していきたいと思います。

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