Miles Davis(マイルス・デイヴィス) アルバムの紹介・評価|1954-55年

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Miles Davis 1954-1955年アルバム(”Walkin'” “Bags Groove” “The Musings of Miles” “Miles” “Round About Midnight”)の紹介・評価

前回紹介しました「クールの誕生」〜「Blue Noteのアルバム」に引き続き、今回は、1954-1955年に制作されたアルバム「Walkin’」「Bags Groove」「The Musings of Miles」「Miles」「Round About Midnight 」を紹介・評価していきたいと思います。

この時期のマイルス・デイヴィスのアルバムは、レコード会社Prestigeから、CBSに移る時期に制作されたものです。(Prestigeのアルバムが、「Walkin’」「Bags Groove」「The Musings of Miles」「Miles」で、「Round About Midnight」はCBSのアルバムです。)

MJQのミルト・ジャクソンや、セロニアス・モンクと共演したり、ジョン・コルトレーンが参加し始めたりと、興味深い時代のアルバムです。

そんなマイルス・デイヴィスのアルバムを、独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価してみたいと思います。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Walkin’6.0点
2Bags Groove6.67点
3The Musings of Miles5.83点
4Miles5.67点
5Round About Midnight7.5点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

Walkin’

No曲名感想評価点
1Walkin’アルバムのタイトル名にもなっているミドルテンポのブルース調の作品です。イントロの主題は、トランペット、テナー・サックス、トロンボーンの3管ホーンで演奏され、小編成バンドのような重厚さがあります。あまり有名なサックス奏者ではありませんが、ラッキー・トンプソンのテナー・サックスのソロが、いい味を出しています。6点
2Blue ‘n’ Boogieディジー・ガレスピー作曲のスタンダード曲で、アップテンポの作品です。1曲目のミドル・テンポの曲から一気に盛り上がっていきます。迫力のあるトランペットとテナー・サックスのバトル演奏が聞きどころの曲です。7点
3Solarマイルスのオリジナルのバラード曲です。マイルスのトランペットが中心の曲ですが、テナー・サックスとピアノのソロも入ってきます。この曲のサックスは、ラッキー・トンプソンと同様、あまり有名ではないサックス奏者デイヴィッド・シルドクラウトが演奏しています。6点
4You Don’t Know What Love Isソニー・ロリンズの演奏で有名なポピュラー・バラード曲です。この曲では、アルト・サックスを除いたカルテットによる演奏で、マイルスの1ホーンの静かな演奏が聞けます。5点
5Love Me or Leave Meバラード曲が続きましたが、この曲は、アップ・テンポの曲で、マイルスの高速なミュート・トランペットを聞くことができます。サックス、ピアノも高速に演奏されています。6点
平均点6.0点

 マイルスの麻薬中毒から立ち直った直後のアルバムで、マイルスにとっては、起死回生のアルバムになりました。
 ルーシー・トンプソンと、デイブ・シルドクラウトが、サックスを演奏しています。あまり有名なサックス奏者ではありませんが、味わい深い演奏を聞くことができます。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
J. J. Johnson:trombone
Lucky Tompson:tenor sax
Davey Schildkraut:alto sax
Horace Silver:piano
Percy Heath:bass
Kenny Clark:drums

Bags Groove

No曲名感想評価点
1Bags Groove(take1)ミルト・ジャクソンの作曲で、「Bags」というのは、ミルト・ジャクソンのあだ名になります。ファンキーなイントロから、マイルスのトランペットのソロが入りますが、マイルス演奏中は、セロニアス・モンクにピアノを入れないように頼んだという有名なエピソードがあります。セロニアス・モンクのピアノは、上手いのか下手なのか分からない独特な演奏をしています。8点
2Bags Groove(take2)1曲目「Bags Groove」のテイク2で、take1の方が緊張感を感じますが、さほど大差はありません。7点
3Aireginソニーロリンズの作曲で、ナイジェリアの綴りを逆にした曲名がついています。マイルスのマラソン・セッションである「Cookin’」にも収録されていますが、「Cookin’」よりもスロー・テンポの演奏がされています。「Cookin’」では、ジョン・コルトレーンが、サックスを演奏していますが、こちらの演奏は、ソニー・ロリンズの演奏です。7点
4Oleoこの曲もソニーロリンズの作曲で、マイルスのミュート・トランペットを聞くことができます。マラソン・セッションである「Relaxin’」にも収録されていますが、本作と「Relaxin’」では、前曲「Airegin」と同様、サックス奏者が、ジョン・コルトレーンとソニー・ロリンズの違いがあります。6点
5But Not for Meジョージ・ガーシュインの作曲で、マイルスのミドル・テンポの美しいトランペットと、ホレス・シルヴァーのファンキーなピアノが特徴的な作品です。6点
6Doxyソニーロリンズ作曲のファンキーでブルージーな曲です。このような曲は、ホレス・シルヴァーのファンキーなピアノがよく似合います。ソニー・ロリンズのサックスが、はっきりとした綺麗な音で演奏しているため、聞きやすい曲になっています。6点
平均点6.7点

 ソニー・ロリンズといい、ミルト・ジャクソンといい、セロニアス・モンクといい、超豪華メンバが共演しているアルバムです。
 「Bags Groove」の中で、マイルスのソロ中に、セロニアス・モンクのピアノが入っていないのは、マイルスとセロニアス・モンクが喧嘩をしたため(俗に言う喧嘩セッション)と言われていますが、実際は、喧嘩なんてされていなく、おもしろおかしく尾ひれをつけたネタのようです。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Sonny Rollins:tenor saxophone
Milt Jackson:Vibraphone
Theronious Monk:piano
Horace Silver:piano
Percy Heath:bass
Kenny Clark:drums

The Musings of Miles

No曲名感想評価点
1Will You Still Be Mine本作は、マイルスの1ホーンの演奏ですが、サックスがなくても、マイルスのトランペットだけで十分魅力があることが分かる曲です。また、本作からレッド・ガーランドが加入しており、ピアノ・ソロが軽快で、レッド・ガーランドの参加効果が表れています。7点
2I See Your Face Before Meアーサー・シュワルツ作曲のバラード曲です。マイルスのトランペットは、甘い演奏をしていますが、録音状態が悪いのか、音がこもっており、その良さが半減してしまっています。5点
3I Didn’tマイルスのオリジナル曲で、アップテンポの激しい作品です。レッド・ガーランドと同様、フィリー・ジョー・ジョーンズが、本作から参加しています。この曲は、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムの激しい演奏が聞けます。6点
4A Gal in Calicoアーサー・シュワルツ作曲のミドルテ・ンポの明るい作品です。マイルスのミュート・トランペットや、レッド・ガーランドの軽快なピアノを聞くことができます。6点
5A Night in Tunisia多くのジャズ・ミュージシャンに演奏されているディジー・ガレスピーの有名曲です。もともとは、アップ・テンポの曲ですが、ここでのマイルスの演奏は、速度を落としてミドル・テンポで演奏してます。5点
6Green Hazeマイルスのオリジナル曲で、スロー・テンポのブルージーな作品です。マイルスとレッド・ガーランドの演奏は、このようなブルージーな曲がよく似合います。6点
平均点5.8点

 ソニー・ロリンズが隠遁生活に入ってしまい、適当なサックス奏者が見つからなかったために、マイルス 1ホーンのアルバムになっています。サックスが入っていなくても、1ホーンで十分聴き応えのあるアルバムです。
 レッド・ガーランドが初参加したアルバムですが、1ホーンで十分魅力的なアルバムになったのは、レッド・ガーランドの貢献が大きかったと思います。軽快なピアノを披露しています。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Red Garland:piano
Oscar Pettiford:bass
Philly Joe Jones:drums

Miles

No曲名感想評価点
1Just Squeeze Meデューク・エリントン作曲のスローなバラード曲です。イントロのレッド・ガーランドのピアノとマイルスのミュート・トランペットが、渋く、後のマラソン・セッションの先駆けのような作品です。6点
2There Is No Greater Loveアイシャム・ジョーンズ作曲のスタンダード・ナンバーで、こちらもスローテンポのバラード曲です。前曲「Just Squeeze Me」の明るめのバラード曲とは対照的に、こちらは、大人の渋いバラード曲です。渋いバラード曲には、マイルスのミュート・トランペットがよく似合います。7点
3How Am I to Know?ドロシー・パーカー作曲の映画「ダイナマイト」の主題曲です。ここでも、マイルスは、ミュート・トランペットで演奏しており、キレのある演奏を聞くことができます。しかし、ジョン・コルトレーンのサックスは、途切れ途切れで、耳に付く演奏がされています。5点
4S’posinルディ・ヴァリーのヒット曲で、前曲「How Am I to Know?」と同様、アップ・テンポの作品です。マイルスのキレのある演奏は前曲と変わりませんが、ジョン・コルトレーンのサックスは、前曲よりもスムーズな演奏がされています。6点
5The Themeマイルスのオリジナル曲ですが、この曲は、ポール・チェンバースの長いベースソロが入っており、ポール・チェンバースが主役の作品です。5点
6Stablematesアメリカのサックス奏者ベニー・ゴルソンの作品です。ここでのジョン・コルトレーンのサックスは、このアルバムの中で一番まともな演奏がされており、聞き応えがあります。しかし、全盛期のジョン・コルトレーンの音数の多いスピード感は、まだありません。5点
平均点5.7点

 アルバムのサブ・タイトル「ザ・ニュー・マイルス・デイヴィス・クインテット」とあるように、第1期黄金クインテットの最初のアルバムです。
 ソニー・ロリンズの代わりに、ジョン・コルトレーンが参加することになりましたが、世間一般的に、「初期のジョン・コルトレーンの演奏は、いも」だと言われているように、本作のジョン・コルトレーンのサックスは、イマイチ感があります。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor saxophone
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

Round About Midnight

No曲名感想評価点
1Round About Midnight言わずと知れたセロニアス・モンク作曲の名曲です。マイルスの数ある演奏の中でもトップに位置付けられる曲で、途中からのテンポが早くなってから登場するジョン・コルトレーンのサックスも、当時のジョン・コルトレーンの演奏としては、上々な出来に仕上がっています。10点
2Ah-Leu-Cha チャーリー・パーカーの作曲で、サックスとトランペットが同時に対位的に演奏されているのが特徴的です。7点
3All Of Youコール・ポーターによるミュージカルのために書かれた曲で、スローテンポの明るめのバラード曲です。マイルスのミュート・トランペットの後、ジョン・コルトレーンらしいミドル・テンポのサックス・ソロが入ってきます。8点
4Bye Bye Blackbird多くのミュージシャンに演奏されている古くからあるスタンダード曲です。この曲もマイルスのトランペットは、ミュートで演奏されています。ジョン・コルトレーンのサックスは、一聴してジョン・コルトレーンだと分かる独特な演奏がされています。8点
5Tadd’s Delightジャズ・ピアニスト タッド・タメロン作曲の軽快な作品です。軽快なマイルスのトランペットと、気だるい感じのジョン・コルトレーンのサックスの対比に面白味を感じます。トランペットとサックスで隠れてしまっていますが、レッド・ガーランドの軽快なピアノ・ソロも光っています。6点
6Dear Old Stockholmスェーデンのフォーク・ソングで、ブルージーな作品です。ポール・チェンバースの長い静かなベース・ソロの後に、ジョン・コルトレーンの迫力のあるサックス・ソロが入ってきます。この曲は、あまりマイルスのトランペットは目立っていません。6点
平均点7.5点

 コロムビア・レコードに移籍後の初のアルバムで、演奏は素晴らしく、音も非常に良く、マイルスのアルバムの中で、上位に位置付けられるアルバムです。本作を聴くと、もっともっとジャズを聴きたくなってしまいます。
 全曲素晴らしいですが、やはり、タイトル名にもなっている「Round About Midnight」が、一番の聴きどころの作品です。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor saxophone
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

まとめ

マイルス・デイヴィスの1954-1955年のアルバム5枚を紹介・評価しました。

今回紹介しましたアルバムは、マイルス・デイヴィスの第1期 黄金メンバであるジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズが形成されるまでのアルバムでした。

ソニー・ロリンズや、セロニアス・モンクなど、豪華アーティストと共演しているだけでも、この時代のアルバムを聴く価値があります。

次回は、「Round About Midnight」以降の1957年-58年のアルバムを紹介していきたいと思います。

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