Miles Davis(マイルス・デイヴィス) アルバムの紹介・評価|1950-54年

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Miles Davis 1950-54年の初期アルバム(”クールの誕生” “Dig””Young Man With a Horn” “Miles Davis Vol.2” “Miles Davis Vol.3″)の紹介・評価

前回紹介しましたMiles Davis マラソンセッションに引き続き、マイルス・デイヴィスのアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

今回は、マイルス・デイヴィスの最初期のアルバム「クールの誕生」「Dig」「ブルーノートのアルバム」(「Young Man With a Horn」「Miles Davis Vol.2」「Miles Davis Vol.3」)を紹介します。

クールというジャンルの起源となった「クールの誕生」は、「アドリブを中心としたビバップの反動として生まれたリラックスした軽いサウンドが特徴」で、スウィング・ジャズ・オーケストラまではいかないまでも、小編成のバンドで演奏されているアルバムです。

「クールの誕生」発表後、マイルス・デイヴィスは、麻薬に溺れることになり、音楽活動ができなくなっていきます。

そのような中、ブルーノートの社長であるアルフレッド・ライオンから「1年に1回の録音を行う」という約束を持ちかけられ、1952年〜1954年にブルーノートからアルバムを発売します。

その間に、マイルス・デイヴィスは、健全な音楽活動をするためには、麻薬をやめる必要があることを痛感し、1953年には、マイルス・デイヴィスは、自力で麻薬を断ち切ります。

このような初期の時代のマイルス・デイヴィスのアルバムを、各曲に点数をつけて、評価していきたいと思います。

評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価や、おすすめのアルバムを知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

初期アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1クールの誕生5.27点
2Dig6.0点
3Young Man With a Horn6.17点
4Miles Davis Vol.25.83点
5Miles Davis Vol.36.33点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

クールの誕生

No曲名感想評価点
1Moveアメリカのジャズ・ドラマー デンジル・ベストが作曲したアップテンポの作品です。主題の後、マイルスのトランペット → リー・コニッツのアルト・サックス → マックス・ローチのドラム のソロが入りますが、クールの定義通り、あまりアドリブがなく、ソロ演奏も短くなっています。5点
2Jeru本作にバリトン・サックスで参加しているジェリー・マリガンが作曲したスイングしている作品です。マイルスのトランペットソロのあと、ジェリー・マリガンのスインギーなバリトン・サックスのソロ演奏が聞けます。5点
3Moon Dreamsチャミー・マグレガーとジョニー・マーサーが作曲したポップソングで、美しいバラード曲です。ソロ演奏はほとんどなく、小編成のバンド演奏が主体で、分かりやすいメロディの聞きやすい作品です。6点
4Venus de Milo2曲目の「Jeru」と同様、ジェリー・マリガンの作曲であるために、「Jeru」に似た雰囲気があります。「Jeru」と同様、ジェリー・マリガンのバリトン・サックスのソロ演奏が入っています。5点
5Budoマイルスとバド・パウエルの共作で、この曲は、ソロ演奏が長いため、聞き応えのある作品です。トランペット → サックス → トロンボーン → サックス → ドラム の順番でソロ・リレーが展開されていきます。6点
6Deceptionマイルスのオリジナル曲であるため、トランペット中心の作品です。途中のトランペットとサックスのソロ演奏が、聞きどころです。5点
7Godchildアメリカのジャズ・ピアニストジョージ・ウォーリントンの作曲で、ジャズでは珍しいでチューバのイントロから始まります。そのため、重低音が響いている作品です。5点
8Boplicityクレオ・ヘンリーという方が作曲した作品で、スローテンポで始まるこの曲は、サックス、トランペットのソロの響きが良く、途中で、ピアノ・ソロを聞くことができます。5点
9Rockerこの曲もジェリー・マリガンの作曲で、ホーン中心のピアノレスの作品です。5点
10Israelビル・エヴァンス・トリオの演奏で有名な曲ですが、ここでの演奏は、ビル・エヴァンスのような甘美な演奏ではないため、全く印象が異なります。6点
11Rougeモダン・ジャズ・カルテットのピアニスト ジョン・ルイスの作品です。この曲でも、ジョン・ルイスがピアノを演奏しており、ピアノ・ソロが演奏されています。5点
平均点5.3点

 革新的なことが好きなマイルスが、クールという保守的なサウンドを作り出したというのは、意外性があります。ただ、このアルバム以降、マイルスは、クールに関心が無くなったようで、ハード・バップへと進んでいきます。
 どの曲も同じような印象の曲で、アドリブがほとんどないため、あまり面白みのないアルバムだと感じています。可もなく不可もない曲ばかりが収録されています。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
J. J. Johnson:trombone
Kai Winding:trombone
Junior Collins:French horn
Gunther Schuller:French horn
Sandy Siegelstein:French horn
Bill Barber:tuba
Lee Konitz:alto saxophone
Gerry Mulligan:baritone saxophone
John Lewis:piano
Al Haig:piano
Joe Shulman:bass
Nelson Boyd:bass
Al McKibbon:bass
Max Roach:drums
Kenny Clarke:drums

Dig

No曲名感想評価点
1Digジャッキー・マクリーンの作曲で、ジャッキー・マクリーン自身が、アルト・サックスの演奏を行なっています。ソニー・ロリンズのテナー・サックス、マイルスのトランペット、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックスの白熱した長いソロが展開されています。5点
2It’s Only a Paper Moonアメリカの作曲家ハロルド・アーレンのポピュラーソングです。スローテンポのマイルスのトランペットが中心の曲ですが、途中、ソニー・ロリンズのテナー・サックスのソロが入ります。6点
3Denialマイルスのオリジナル曲で、アップテンポな作品です。高速なトランペットの演奏が特徴で、途中、サックス・ソロが入りますが、終始、高速なトランペット演奏が続きます。6点
4Bluingこの曲もマイルスのオリジナル作品で、美しいバラード曲です。イントロのピアノから、マイルスのトランペットへと続きます。マイルスのトランペットとソニー・ロリンズのテナー・サックスのソロの掛け合いが聞きどころの作品です。6点
5Out of the Blueマイルスのオリジナル曲が3曲続きます。この曲もスローテンポな曲で、トランペット、テナー・サックス、アルト・サックスのソロが入ります。5点
6My Old Flame本作の中で、一番のバラード曲で、ピアノ、トランペットの甘い演奏を聞くことができます。途中のソニー・ロリンズのテナー・サックスも、とても甘い演奏がされています。7点
7Conceptionジャズ・ピアニスト ジョージ・シアリングのスタンダード曲です。前曲「My Old Flame」から一転、明るくアップテンポな曲で、トランペット、サックス、ピアノの順に軽快なソロが演奏されています。7点
平均点6.0点

 ジャッキー・マクリーン、ソニー・ロリンズ、アート・ブレーキーと豪華メンバが参加していますが、マイルスのアルバムの中では、マイナーなイメージのあるアルバムです。
 ジャッキー・マクリーンとソニー・ロリンズは、このアルバム参加時は、まだ無名でしたが、その中で、マイルスがメンバに選んだのは、先見の明があったと言えます。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Jackie McLean:alto saxophone
Sonny Rollins:tenor saxophone
Walter Bishop Jr.:piano
Tommy Potter:bass
Art Blakey:drums

Young Man With a Horn

No曲名感想評価点
1Dear Old Stockholmスウェーデンの民謡「麗しのヴェルムランド」が原曲のスタンダード曲です。途中、ジャッキー・マクリーンのアルト・サックスのソロがありますが、マイルスのトランペットが中心の作品です。6点
2Would’n Youディジーガレスピーによって書かれた1942年のジャズ・スタンダード曲です。「Relaxin’」にも収録されてる曲で、「Relaxin’」の演奏に比べると、テンポが遅く、しっとりした作品に仕上がっています。5点
3Yesterdaysジェローム・カーンの作曲で、1933年のミュージカル「ロバータ」のために書かれたバラード曲です。トランペットのワンホーンの演奏で、泣きのマイルスのトランペット演奏を聞くことができます。8点
4Chance It本作でベースを演奏しているオスカー・ペティフォードの作品で、軽快なアップテンポの曲です。イントロからマイルスのトランペットが飛ばしており、それに引きづられて、アルト・サックス、トロンボーンのソロ演奏も軽快に飛ばしています。6点
5Donnaマイルスのオリジナル曲でクレジットされていますが、「Dig」と同じメロディーを持つ作品です。「Dig」は、ジャッキー・マクリーンの作曲でクレジットされていますが、どちらが作曲者なのか不明な曲です。「Dig」よりもテンポが遅く演奏されています。5点
6How Deep Is The Oceanアーヴィング・バーリン作曲のバラード曲です。「Yesterdays」と同様、トランペットのワンホーンで演奏されています。「Yesterdays」では、泣きのマイルスのトランペットが聞けましたが、こちらは、マイルスの甘い演奏を聞くことができます。7点
平均点6.2点

 1952年当時は、10インチLP「Young Man With a Horn」として発売されました。その後、Bule Noteの2枚目のアルバム「Miles Davis Vol.2」の曲もまとめて、「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1」に収録されました。
 本作の録音時のマイルスは、麻薬中毒で最悪の状態でしたが、そのことを全く感じさせない演奏を披露しています。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Jackie McLean:alto saxophone
J・J・Johnson:trombone
Gil Coggins:piano
Oscar Pettiford:bass
Kenny Clarke:drums

Miles Davis Vol.2

No曲名感想評価点
1Tempus Fugitバド・パウエルの作曲で、曲名の「Tempus Fugit」は「光陰矢の如し」を意味するラテン語です。曲名通り、アップテンポの曲で、高速で痛快なトランペット、サックス、トロンボーンのソロを聞くことができます。6点
2Enigma本作で、トロンボーンを演奏しているJ・J・ジョンソン作曲のバラード曲です。ピアノのソロが少し入っていますが、それ以外にソロ演奏はありません。バックでサックス、トロンボーンの音が重なりながら、マイルスのトランペットが、1音1音丁寧にしっかりと演奏されています。6点
3Ray’s Ideaディジー・ガレスピーのビッグバンドで初めて録音されたギル・フラーが作曲した作品です。ミドルテンポの明るいパーティー・ソングです。5点
4Kelo蛙のような曲名ですが、2曲目と同様、J・J・ジョンソン作曲のミドルテンポの曲です。トロンボーンは、細かいフレーズを演奏するには適さない楽器と言われていますが、ここでのJ・J・ジョンソンの演奏は、しっかりとしたメロディーを演でています。5点
5I Waited for Youギル・フラーとディジー・ガレスピーの共作の名バラード曲です。ピアノとトランペットが中心の曲で、マイルスは、淡々と丁寧にトランペットを演奏しています。7点
6C.T.A.本作で、テナー・サックスを演奏しているジミー・ヒースの作品で、リーモーガンのアルバム「Candy」にも収録されている曲です。リーモーガンの方は、トランペットのワンホーン演奏ですが、こちらは、トランペット、サックス、トロンボーンで演奏され音圧が増しています。6点
平均点5.8点

 ブルーノートの社長であるアルフレッド・ライオンから「1年に1回の録音を行う」という約束の中、制作された2枚目のアルバムです。当時は、10インチLPで発売され曲数が少なかったため、CDの時代になって、ブルーノートで発売された3枚のアルバムは、「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1、vol.2」の2枚に集約されました。
 「I Waited for You」以外の曲は、「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1」に収録されました。「I Waited for You」は、「マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.2」に収録されています。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Jimmy Heath:tenor saxophone
J・J・Johnson:trombone
Gil Coggins:piano
Percy Heath:bass
Art Blakey:drums

Miles Davis Vol.3

No曲名感想評価点
1Take Offマイルスのオリジナル曲で、明るく軽快なトランペットが特徴的な曲です。本作が録音されたとき、マイルスは麻薬中毒から脱することができ、その効果が、この曲に表れています。7点
2It Never Entered My Mindロジャースとハートが、1940年のミュージカル「ハイアーアンドハイアー」のために書いた曲で、「Workin’」にも収録されています。「Workin’」の演奏との違いは、ピアノが、ホレス・シルヴァーであることと、マイルスのトランペットのミュート音が違うところにあります。個人的には、「Workin’」の方の演奏が好きですが、どちらも名曲であることには違いありません。9点
3Well, You Needn’tセロニアス・モンクの作曲で、セロニアス・モンクの曲の中では、メジャーな作品です。色々なジャズ・ミュージシャンに演奏されていますが、本作での演奏は、比較的スローテンポで演奏されています。5点
4Lazy Susanマイルスのオリジナル曲で、1曲目「Take Off」と同様、明るく軽快な作品です。この時代のマイルスの調子の良さが表れています。6点
5Weirdoマイルスのオリジナル曲で、「Take Off」「Lazy Susan」とは異なり、ブルース調の作品です。このようなブルース演奏は、ホレス・シルヴァーのファンキーなピアノがよく似合います。5点
6The Leapラスト・ナンバーも、マイルスのオリジナル曲で、ホレス・シルヴァーのファンキーなピアノ・ソロが聞き応えのある作品です。マイルスのトランペットも軽快な演奏がされています。6点
平均点6.3点

 本作は、他のブルーノートのアルバム「Young Man With a Horn」「Miles Davis Vol.2」とは異なり、マイルスのトランペット 1ホーンの演奏であるため、マイルスの調子の良さが分かるアルバムです。
 CDの時代になってから、本作の収録曲は、全曲、「マイルス・デイヴィス・オールスターズ vol.2」に収録されました。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Horace Silver:piano
Percy Heath:bass
Art Blakey:drums

まとめ

ブルーノートのアルバム含め、初期のマイルス・デイヴィスのアルバム5枚を紹介・評価しました。

マイルス・デイヴィスのスタジオ・アルバムは、全て聴いていますが、後のマイルス・デイヴィスの革新的なアルバムが凄すぎるため、初期のアルバムは、つまらなさを感じていました。

しかし、純粋なジャズ・アルバムとして聞けば、演奏技術も含め、どのアルバムも優れていますので、まだ聞いたことがない方は、ぜひ、この機会に聞いてみることをおすすめします。

次回は、マラソン・セッションの手前までの1954年-55年のアルバムを紹介していきたいと思います。

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