Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|マラソンセッション4部作

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Miles Davis(マイルス・デイヴィス)マラソンセッションの紹介・評価

ジャズ界の帝王 Miles Davis(マイルス・デイヴィス)のアルバムを、数回に渡り、紹介・評価していきます。

ジャズをこれから聞いてみたいと思っているジャズ初心者の方は、まずは、マイルス・デイヴィスのアルバムから聞いていくことで、間違いはありません。

マイルス・デイヴィスを聞いていくと、有名ジャズ・ミュージシャン達に芋づる式に広がっていくからです。

ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、ウェイン・ショーター、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、セロニアス・モンク などのジャズ・ミュージシャン達を必然的に知ることができます。

その中から、自分の好みのジャズ・ミュージシャンを聞いていくことで、ジャズの知識を広げていくことができます。

マイルス・デイヴィスのアルバムは、時代とともにサウンドが変化していくため、一概に、おすすめのアルバムを紹介するのは難しいですが、

ジャズ初心者の方でも分かりやすいマラソンセッションと呼ばれる4部作を、まずは、おすすめします。

マラソンセッションとは、当時マイルス・デイヴィスが契約していた「プレスティッジ」と早く契約を終わらせたいために、1956年に2日間(5/11と10/26)で制作した4枚のアルバムを指しています。

「2日間で4枚のアルバムを制作した」と聞くと、やっつけ仕事のような質の低いアルバムを想像してしまいますが、全くそんなことはなく、4枚全て質の高い素晴らしいアルバムです。

そんな4枚のアルバムを、今回、紹介・評価していきたいと思います。


評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

マラソンセッション4部作の評価結果は以下になります。

No作品評価点(10点満点)
1Workin’6.25点
2Steamin’7.33点
3Relaxin’7.66点
4Cookin’8.00点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

アルバム名発売年評価点
Workin’1956年6.25点

【各楽曲の評価】

1. It Never Entered My Mind(評価点:10点)

1940年のミュージカル「ハイアーアンドハイアー」のために書かれた作品で、優れたバラード曲です。

マイルスのお得意のミュート・トランペットで演奏され、このバラード曲を、美しくもセンチメンタルに仕上げています。

2. four(評価点:5点)

マイルスのオリジナル曲で、行進曲のようなスウィンギーな曲です。

ジョン・コルトレーンのサックスが、まだ未熟な演奏であるため、世間からは、「イモ演奏」だと言われていました。

この曲のジョン・コルトレーンのサックス・ソロは、「イモ演奏」だと言われも仕方ないくらいのぎこちなさを感じます。

3. In Your Own Sweet Way(評価点:6点)

デイヴ・ブルーベック作曲のジャズのスタンダード曲です。

マイルスは、ミュート・トランペットで演奏しており、本作の中で、ミュート・トランペットで演奏しているのは、この曲と、「It Never Entered My Mind」の2曲のみになります。

4. The Theme (Take 1)(評価点:5点)

マイルスのオリジナル曲で、本作の中に、Take1とTake2の2曲収録されています。

共に、ベースとドラムのリズム主体の曲です。

5. Trane’s Blues(評価点:6点)

曲名から分かるように、ジョン・コルトレーンのオリジナル曲です。

マイルス→ ジョン・コルトレーン→ レッド・ガーランド→ ポール・チェンバースとソロが続き、最後は、マイルスと、ジョン・コルトレーンのハーモニーで締めくくられます。

6. Ahmad’s Blues(評価点:5点)

ピアニスト アーマッド・ジャマルの作曲の、この曲は、ピアノ、ベース、ドラムのみの演奏で、マイルスのトランペットと、ジョン・コルトレーンのサックスは、入っていません。

この時代のマイルスのアルバムで、マイルスが演奏していないことは珍しいことです。

7. Half Nelson(評価点:8点)

マイルスのオリジナル曲です。

この曲のみ10月に演奏されており、5月の演奏の他の曲と比較すると、ジョン・コルトレーンのサックスの演奏技術が飛躍的に向上してることが分かります。

そのため、マイルス、ジョン・コルトレーン、フィリー・ジョー・ジョーンズの激しい演奏を聞くことができます。

8. The Theme (Take 2)(評価点:5点)

Take 1と同じ曲ですが、曲の長さが、1分超と短くなっています。


【アルバム全体のコメント】

5月の演奏が多いため(5月の演奏が7曲、10月の演奏が1曲)、ジョン・コルトレーンのサックスは、演奏技術がまだ高くありません。

そのためジョン・コルトレーンにとっては満足できるアルバムではありませんが、10月演奏の「Half Nelson」を聞くと、たった5ケ月の間で、ジョン・コルトレーンの演奏技術が急成長したことが分かります。

アルバム名が「Workin’」であるためか、ジャケットの背景が道路工事になっており、あまりカッコ良いジャケットとは言えず、ジャケットで損をしているように感じます。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor sax
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

アルバム名発売年評価点
Steamin’1956年7.33点

【各楽曲の評価】

1. Surrey with the Fringe on Top(評価点:7点)

ロジャース&ハマースタインが、1943年のミュージカル「オクラホマ」のために作った曲です。

「Workin’」の「It Never Entered My Mind」と同様、レッド・ガーランドのピアノからマイルスのミュートのトランペットで始まります。

ジョン・コルトレーンのサックス・ソロは、まだ成長過程の段階で、ぎこちなさを感じます。

2. Salt Peanuts(評価点:6点)

ディジー・ガレスピーとケニー・クラークの合作曲で、ディジー・ガレスピーが演奏しているオリジナル曲では、「ソッ ピナ、ソッ ピナ」と歌われています。

本作では、オリジナル曲よりも、高速に演奏されており、レッド・ガーランドのピアノ・ソロ、ジョン・コルトレーンのサックス・ソロ、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラム・ソロも、カッコ良く高速に演奏しています。

3. Something I Dreamed Last Night(評価点:9点)

サミー・フェイン作曲の古い歌曲です。

センチメンタルなバラード曲で、マイルスのミュート・トランペットが、このバラード曲を光らせています。

ジョン・コルトレーンは、成長過程のためか、この曲には、参加させてもらえていません。

4. Diane(評価点:7点)

「第七天国」という古い映画の主題曲で、アーノウ・ラペーとルー・ポラックの合作曲です。

この曲も、マイルスのミュート・トランペットと、レッド・ガーランドのピアノが主役の曲です。

5. Well, You Needn’t(評価点:6点)

セロニアス・モンク作曲の挑戦的なユーモアのある曲です。

この曲のみ10月の演奏で、マイルスやレッド・ガーランドのソロ演奏は、もちろん素晴らしいですが、ジョン・コルトレーンのサックス・ソロが、成長したことの分かる素晴らしい演奏がされています。

6. When I Fall in Love(評価点:9点)

最後は、 ビクター・ヤングとエドワード・ヘイマンが、1952年の映画「零号作戦」の主題歌として作曲した甘いバラード曲です。

「Something I Dreamed Last Night」と同様、バラード曲であるためか、ジョン・コルトレーンは、この曲には、参加させてもらえていません。

レッド・ガーランドのピアノが主役で、甘いバラード曲に似合う美しい演奏がされています。


【アルバム全体のコメント】

「Workin’」と同様、5月の演奏が多いため、演奏技術がまだ高くなかったジョン・コルトレーンは、「Something I Dreamed Last Night」や「When I Fall in Love」のバラード曲に参加させてもらえていません。

そのため、ジョン・コルトレーンにとっては、かわいそうなアルバムです。

マイルスのトランペットと、レッド・ガーランドのピアノ演奏が素晴らしく、ジョン・コルトレーンが参加していない曲があっても、このアルバムの魅力が落ちることはありません。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor sax
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

アルバム名発売年評価点
Relaxin’1956年7.66点

【各楽曲の評価】

1. If I Were a Bell(評価点:9点)

フランク・レッサーが1950年のミュージカル「ガイズ&ドールズ」のために作曲した作品です。

「学校で流れるチャイム」を、ピアノで演奏しているイントロから、軽快なマイルスのトランペットとジョン・コルトレーンのサックスが続いていきます。

レッド・ガーランドのピアノが、更に、2人の演奏を軽快にさせていきます。

2. You’re My Everything(評価点:10点)

1931年のハリー・ウォーレンが作曲したバラード曲です。

レッド・ガーランドの美しいピアノから、マイルスのミュート・トランペットが始まるイントロだけで、痺れてしまいます。

ジョン・コルトレーンのサックス・ソロも素晴らしく、ジョン・コルトレーンらしい、とろけるようなバラード演奏が聞けます。

3. I Could Write a Book(評価点:8点)

リチャード・ロジャースが作曲した1940年のミュージカル曲です。

「If I Were a Bell」と同様、マイルスの軽快なトランペットから始まります。

その後のジョン・コルトレーンのサックスも軽快で、演奏技術が向上していることが分かります。

4. Oleo(評価点:6点)

1954年にソニー・ロリンズが作曲した作品です。

ポール・チェンバースの高速のベースがこの曲を引っ張っていき、マイルス、レッド・ガーランド、ジョン・コルトレーン全員が軽快な演奏をしています。

ポール・チェンバースのうねりを上げているベースが特徴的です。

5. It Could Happen to You(評価点:7点)

ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲のスタンダード曲です。

愛らしいメロディを持っているため、マイルスのミュートのトランペットと、ジョン・コルトレーンのサックスの演奏が、可愛らしく感じます。

6. Woody ‘n’ You(評価点:6点)

ディジーガレスピーによって書かれた1942年のジャズ・スタンダード曲です。

ディジーガレスピーらしい激しさのある速い曲で、メンバー全員が迫力のある演奏を行っています。


【アルバム全体のコメント】

ジョン・コルトレーンの演奏技術が向上した10月の演奏が多い(5月の演奏が2曲、10月の演奏が4曲)ことから、マラソン・セッション唯一、ジョン・コルトレーンが、全曲参加しているアルバムです。

曲の合間にマイルスの声が入っていることでも有名なアルバムです。

ラストには、ジョン・コルトレーンの「栓抜きどこ?」という声も入っています。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor sax
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

アルバム名発売年評価点
Cookin’1956年8.0点

【各楽曲の評価】

1. My Funny Valetine(評価点:10点)

リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートが、ミュージカル「ベイブス・イン・アームス」のために作曲した作品で、代表的なジャズ・スタンダード曲です。

「Cookin’」は、この曲のために制作されたと言っても過言ではないくらい、マイルスのミュート・トランペット演奏の美しさが、際立っています。

レッド・ガーランドのピアノと、ポール・チェンバースのベースも素晴らしく、マイルスのトランペットを引き立たせています。

2. Blues by Five(評価点:7点)

マイルスのオリジナル曲で、曲名通りのブルース調の曲です。

マイルス→ ジョン・コルトレーン→ レッド・ガーランド→ ポール・チェンバースの順にソロ演奏が展開されていきます。

ジョン・コルトレーンの演奏技術が向上した10月の演奏ですが、ジョン・コルトレーンのソロは、遅れをとっているように聞こえます。

3. Airegin(評価点:7点)

ソニー・ロリンズ作曲のジャズ・スタンダード曲で、「Airegin」という曲名は、ナイジェリアを逆にした言葉です。

マイルスのトランペットと、ジョン・コルトレーンのサックスが主役の曲で、ジョン・コルトレーンのソロは、マイルスの演奏に負けじと、頑張っています。

ジョン・コルトレーンの成長が伺える曲です。

4. Tune Up – When Lights are Low(評価点:8点)

「Tune Up」と「When Lights are Low」の2曲がメロレーになっており、「Tune Up」は、Miles Davisのオリジナル曲、「When Lights are Low」は、サックス奏者ベニー・カーターの作品です。

「Tune Up」は、マイルスのトランペット、ジョン・コルトレーンのサックスが最初に飛ばしていき、その後、ポール・チェンバースのベース、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムも飛ばしていきます。

これぞジャズの凄みを感じさせる曲です。

「When Lights are Low」は、「Tune Up」とは異なり、落ち着いた大人の作品です。


【アルバム全体のコメント】

全曲1日のセッション(1956年10月の演奏)で構成されており、マイルスは「プレスティッジ」との契約を早く終わらせたいために、1テイクで完成させています。

本作は、名バラード曲「My Funny Valetine」が際立っており、ジョン・コルトレーンは参加していませんが、マイルスのミュート・トランペットの緊張感漂う美しい演奏には、筆舌に尽くし難いものがあります。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor sax
Red Garland:piano
Paul Chambers:bass
Philly Joe Jones:drums

まとめ

マラソンセッション4部作を紹介・評価しましたが、10月の録音が多いアルバムの方が点数が高くなりました。

これは、ジョン・コルトレーンのサックス演奏の出来、不出来に、左右されているところがあります。

5月録音の方は、ジョン・コルトレーンのサックス演奏は、世間で言われているようにイモっぽい演奏が多く、曲の評価を下げているように感じます。

10月録音の方は、ジョン・コルトレーンのサックス演奏は、5月の演奏と比較すると、成長著しく、たった5ケ月で、こんなに変わるものかと驚かされます。

マイルスは、演奏が未熟だったジョン・コルトレーンを起用し続けていたことに、先見の明を感じます。

次回は、1950-54年のアルバムを紹介していきたいと思います。

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