Miles Davis(マイルス・デイヴィス) アルバムの紹介・評価|1984-86年

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Miles Davis 1984-86年アルバム(”Decoy” “You’re Under Arrest” “Aura” “TUTU”)の紹介・評価

前回紹介しました「On the Corner」「Get Up With It」「The Man With the Horn」「Star People」に引き続き、

今回は、1984-86年に制作されたアルバム「Decoy」「You’re Under Arrest」「Aura」「TUTU」を紹介・評価していきたいと思います。

マイルスは、1970年中頃から、健康状態の悪化で、長期休養に入っていましたが、1980年中頃から、本調子に戻り、良作なアルバムを発表していきます。

今回紹介するアルバムも、良質なアルバムばかりですが、「Aura」だけは、パッレ・ミッケルボーグが中心として制作されたアルバムであるため、マイルスのアルバムとしては、異質な作品になりました。

そんなマイルス・デイヴィスのアルバム4枚を、独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していきたいと思います。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Decoy6点
2You’re Under Arrest6.67点
3Aura5点
4TUTU7点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

Decoy

No曲名感想評価点
1On The Cornerこの曲は、本作のシンセサイザー奏者ロバート・アーヴィングの曲です。アフリカン・リズム、ワウ・ギター、チョッパー・ベースをバックに、マイルスの軽快なトランペットが乗ってくるファンキーな曲です。ブランフォード・マルサリスのソプラノ・サックスも軽快に演奏がされています。7点
2Robot 415変わった名前のこの曲は、マイルスとロバート・アーヴィングの共作曲で、1分ちょっとの短い曲です。シンセサイザーとアフリカン・リズムが中心の曲で、マイルスのファンキーなトランペットが印象的です。5点
3Code M.Dこの曲もロバート・アーヴィングの曲で、1980年代を感じさせるシンセサイザーが特徴的です。このアルバムが、ロバート・アーヴィングのシンセサイザーが立役者であることが、最も分かる曲です。6点
4Freaky Deakyマイルスの作曲で、この曲では、マイルスはトランペットではなく、シンセサイザーを演奏しています。メロディらしいメロディは登場せず、実験要素の強い曲です。「Bitches Brew」や「Get Up With It」の雰囲気を感じます。5点
5What It Isマイルスとジョン・スコフィールドの共作曲で、ダリル・ジョーンズのファンキーなベースが印象的な曲です。ここでのソプラノ・サックスは、ブランフォード・マルサリスではなく、ビル・エヴァンスが演奏しています。6点
6That’s Rightマイルスとジョン・スコフィールドの共作曲で、ギル・エヴァンスがアレンジに加わっています。ギル・エヴァンスと言えば、「Porgy And Bess」や「Sketches of Spain」などのギル・エヴァンス・オーケストラとの共演作を思い浮かべてしまいますが、ここでは、オーケストラは入っておらず、各メンバーのソロ演奏が繰り広げられています。7点
7That’s What Happenedこの曲も、マイルス・デイヴィスとジョン・スコフィールドの共作曲で、本作の締めに相応しいファンキーさが全開している曲です。ファンキーなベースとギターが特徴的で、カシオペアをのような軽快さを持っています。6点
平均点6点

 本作には、キーボード奏者のロバート アーヴィング3世とギターのジョン スコフィールドの作曲または共作が多く収録されています。一部の曲で、ブランフォード・マルサリスが、ソプラノ・サックスを演奏しています。
 前作「Star People」の続編のようなアルバムで、「Star People」よりも更にファンキーさが増し、オープニングから、チョッパー・ベース、ワウギター、アフリカン・リズムとファンキーさが全開しています。マイルスの体調が良くなっていることが感じられる作品です。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet,synthesizers
Robert Irving III:synthesizers,electric drum programming,synth bass
John Scofield:guitars
Darryl “The Munch” Jones:electric bass
Al Foster:drums
Mino Cinelu:percussion
Branford Marsalis:soprano saxophone
Bill Evans:soprano saxophone
Gil Evans:arrangements

You’re Under Arrest

No曲名感想評価点
1One Phone Call/Street Scenesマイルスの曲で、スティングがフランス語の語りをを行なっています。サイレンの音や、ヒップホップのような語りが入り、ロック寄りの曲に仕上がっています。その中でも、マイルスのトランベットは前面に出て、きちんと主張しています。6点
2Human Natureマイケル・ジャクソンの大ヒット作「スリラー」に収録されていた曲で、マイルスは、原曲を忠実に演奏しています。この明るいバラード曲を、泣きのトランペットで演奏しているところに面白さがあります。8点
3Intro: MD 1/Something’s on Your Mind/MD 2マイルス、ヒューバート・イーヴス三世、ジェイムス・ウィリアムスの曲で、イントロの機関車の音から、ファンキーなベース、マイルスのミュート・トランペットへと継がれていきます。途中のジョン・スコフィールドの哀愁のあるギターが印象的です。7点
4Ms. Morrisineマイルス、モリシン・タインズ・アーヴィング、ロバート・アーヴィングの曲で、重くのしかかってくるベースとシンセサイザーをバックに、マイルスのトランペットは、哀愁を醸し出しています。5点
5Katia Preludeマイルスとロバート・アーヴィングの曲で、ジョン・マクラフリンがハードなギターを演奏してします。ジョン・マクラフリンのギターとダリル・ジョーンズのファンキーなベースが独壇場の曲です。7点
6Katia前曲「Katia Prelude」から引き継がれ、途中で、マイルスの短いトランペットが入ってきます。全体的に縦ノリのリズムが特徴で、ノリの良い曲です、7点
7Time After Timeシンディー・ローパーの大ヒット曲で、このアルバムのハイライト曲です。マイルスのトランペットは、美しいバラード曲に仕立てており、数多くあるマイルスのバラード曲の中でも、特に美しい演奏を行なっています。9点
8You’re Under Arrestジョン・スコフィールドの曲で、ジョン・スコフィールドがギターを演奏しています。マイルスの激しいトランペットの傍らで、ねじれたシンセサイザーとギターが特徴のファンキーな曲です。6点
9Medley: Jean Pierre/You’re Under Arrest/Then There Were Noneマイルス、ロバート・アーヴィング、ジョン・スコフィールドの曲で、子供の鳴き声や、爆弾の音、鐘の音などが入り、シリアスな雰囲気があります。途中のホラーなキーボードや、スローテンポのマイルスのトランペットが印象的です。5点
平均点6.67点

 本作は、初のポップスのカヴァー曲を収録しており、マイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」と、シンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」を、インストゥルメンタルの形でカヴァーしています。
 全体的に、ジョン・スコフィールドとジョン・マクラフリンのギター、ダリル・ジョーンズのエレクトリック・ベースが目立ち、ファンキーなアレンジがされています。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Robert Irving III:synthesizers
John Scofield:guitar
John McLaughlin:guitar
Darryl Jones:bass
Al Foster:drums
Vincent Wilburn:drums
Steve Thornton:percussion
Bob Berg:soprano saxophone,tenor saxophone

Aura

No曲名感想評価点
1Introこのアルバムは、パンチの効いた曲からスタートします。不気味なシンセサイザーに、ハードなジョン・マクラフリンのギターが絡んでくるところから、今までのマイルスのアルバムとは異なることが分かります。5点
2Whiteマイルスの渋ーいミュートトランペットから始まるこの曲は、途中から、前衛音楽のようなバック演奏が加わり、不気味な雰囲気へと変化していきます。ホラーな曲です。4点
3Yellowハープから入るこの曲は、近代クラシックのようで、時折、爽やかさも感じますが、全体的に不気味な雰囲気は変わらず、重く暗い曲です。中盤からは、大胆なオーケストラが加わり、一気に盛り上がりを見せていきます。4点
4Orange3曲目までの前衛音楽のような作風から一変し、打ち込みや、チョッパー・ベースを入れたロックな曲です。ジョン・マクラフリンのハードなギターとマイルスのミュート・トランペットの演奏が繰り広げられています。6点
5Red冷たいシンセサイザーの音と冷たいマイルスのトランペットで、ひんやりとした印象を受けます。終始バックで鳴り響いている打ち込みのドラムと、途中途中で入ってくる大音量のオーケストラの音が、マイルスの都会的なトランペットを邪魔しているように感じます。5点
6Greenバックのシンセサイザーの音とマイルスのトランペットは、神聖さがあり、厳かな印象を受けます。ウッド・ベースの響きが心地よく、このアルバムの中では、最も美しい曲です。7点
7Blueレゲエ調のリズムと渋いマイルスのトランペットが、チグハグな印象を受けます。バックのエレクトリック・ベースも、異質に感じてしまいます。2点
8Electric Red曲名の通り、打ち込みのドラムとエレクトリック・ベースが激しい曲です。意外にも、このエレクトリック化されたバック演奏に、マイルスのトランペットは、よく合っています。6点
9Indigoこのアルバム唯一のピアノが主体の曲で、速いリズムに、軽快なピアノ演奏と、このアルバムの中では、一番ジャズらしい曲です。本曲には、マイルスのトランペット演奏は、入っていません。6点
10Violetラスト・ナンバーは、このアルバムを象徴しているように、不気味なシンセサイザーの音をバックに、ハードなギターと、渋いマイルスのミュート・トランペットが絡み合い、不思議な雰囲気を出しています。5点
平均点5点

 本作は、デンマークの作曲家でトランペット奏者のパッレ・ミッケルボーグがプロデュースし、すべての作曲と編曲はミッケルボーグが行なっています。そのため、マイルス名義のアルバムですが、通常のマイルスのアルバムとは一線を画しています。
 異様な雰囲気に包まれており、決して悪いアルバムではありませんが、マイルスのアルバムとして評価した場合は、評価を低くせざるを得ない作品です。パッレ・ミッケルボーグの名義で、マイルスがゲスト参加している体裁で、本作を発表していたら、もっと評価が高くなっていたのではないかと感じます。
 ジャケットのマイルスは、「ケバケバしい帽子を被っているな」と思っていたところ、良く見たら、帽子の回りに文字が記されているだけでした。また、写っているマイルスは、「デコイ」のジャケット写真の別テイクが使用されており、ジャケットからも本作を重要視していないことを感じさせます。

(主要メンバ)
Miles Davis:trumpet
Bent Jædig:Saxophones
Flemming Madsen:Saxophones and woodwinds
Jesper Thilo:Saxophones and woodwinds
Per Carsten:Saxophones and woodwinds
Uffe Karskov:Saxophones and woodwinds
Kenneth Knudsen:Keyboards
Ole Kock Hansen:Keyboards
Thomas Clausen:Keyboards
Bjarne Roupé:Guitars
John McLaughlin:Guitars
Niels-Henning:Bass
Ørsted Pedersen:Bass
Bo Stief:Bass
Lennart Gruvstedt:Drums
Vincent Wilburn Jr.:Drums

TUTU

No曲名感想評価点
1Tutu重くずっしりとしたマーカス・ミラーらしい曲から、スタートします。この曲だけで、このアルバムが何を目指しているのか、どのような内容なのかが分かるオープニングに相応しい曲です。8点
2Tomaasマイルスとマーカス・ミラーの共作で、このアルバムで唯一、マイルスが作曲に絡んでいます。南国風のリズムに、カッティング・ギターが心地良く、キーボードが奏でるメロディが耳に残ります。この明るい曲調にマッチしないマイルスのスリリングなトランペットが、この曲を、異質な雰囲気にしています。7点
3Portia都会的な美しいマイルスのトランペットに、マーカス・ミラーの物憂げなソプラノ・サックスが応答します。夜の都会に似合うハード・ボイルドな1曲です。9点
4Splatch前曲「Portia」のハード・ボイルドから一変、ロック色の強い曲です。ヘビーでダイナミックなリズムが特徴的で、マイルスも、軽快にミュート・トランペットを演奏しています。7点
5Backyard Ritualこのアルバムには、マーカス・ミラーが作曲に関わっていない曲が2曲ありますが、この曲は、その中の1曲で、ジョージ・デュークの作品です。打ち込みのリズムを使用した都会的な曲で、マーカス・ミラーのバス・クラリネットが、この曲にマッチしています。7点
6Perfect Way1980年代に活躍したニューウェーブ・バンド「スクリッティ・ポリッティ」のカヴァー曲です。このアルバムの中では、最もポップな曲で、少し浮いてしまっている印象を受けます。「スクリッティ・ポリッティ」の曲を選曲するところに、マイルスのなんとも言えないセンスを感じます。6点
7Don’t Lose Your Mindレゲエ調のリズムと都会的な雰囲気が混ざり合った異質な曲です、マイルスのミュート・トランペットとレゲエのリズムが合うようには思えませんが、そこは、うまいアレンジがされており、それほど違和感を感じません。6点
8Full Nelson1980年代のポップスを彷彿させるようなサウンドで、ファンキーなカッティング・ギターが印象的な曲です。どことなくプリンスの曲に似ているようにも感じます。6点
平均点7点

 本作は、ロックシンガーのプリンスが共同プロデュースを行う予定でしたが、最終的にベーシストのマーカス・ミラーがプロデュースを行った作品です。
 収録曲のほとんどの曲は、マーカスミラーが作曲しているため、マーカスミラーのカラーが色濃く出ています。それでも、マイルスのトランペットが入ってくるとマイルス色に染めてしまうところが、マイルスの偉大さを感じさせます。

(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Marcus Miller:all other instruments,additional synthesizer programming,bass guitar
Jason Miles:synthesizer programming
Adam Holzman:additional synthesizer programming,synthesizer solo
Bernard Wright:additional synthesizers
Omar Hakim:drums,percussion
Paulinho da Costa:percussion
Steve Reid:additional percussion
Michał Urbaniak:electric violin

まとめ

マイルスの1984-86年のアルバム4枚を紹介・評価しました。

「Decoy」は、ファンキーな作品、「You’re Under Arrest」は、ポップスをうまく取り入れた作品、「Aura」は、前衛音楽のような作品、「TUTU」は、ヒュージョン色の強い作品と、

バラエティ豊かで、この時期のマイルスの創作意欲が感じられるアルバムでした。

次回は、最終回として、マイルスの晩年期の1987-91年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

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