Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1987-91年

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Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1987-91年

前回紹介しました1984-86年のアルバムに引き続き、

今回は、1987-91年に制作されたアルバム「Music From Siesta」「Amandra」「Dingo」「Doo-Bop」を紹介・評価していきたいと思います。

マイルスは、1991年9月28日、肺炎と呼吸不全などの合併症により、突然、亡くなってしまいます。

そのため、今回紹介する4枚のアルバムは、マイルスの最晩年のアルバムになります。

ただ、「Music From Siesta」と「Dingo」は、サウンドトラックであるため、純粋なマイルスのアルバムではありません。

また、「Doo-Bop」は、未完成のままマイルスが亡くなってしまったため、イージー・モー・ビー(「Doo-Bop」のラップ担当)が、大きく手を加えたアルバムです。

そんなマイルス・デイヴィスのアルバム4枚を、今回、紹介・評価していきたいと思います。


評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Music From Siesta5.2点
2Amandla6.75点
3Dingo5.75点
4Doo-Bop5.67点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

アルバム名発売年評価点
Music From Siesta1987年5.2点

【各楽曲の評価】

1. Lost in Madrid, Part 1(評価点:4点)

サウンドトラックらしい、ジャーンという効果音と風の音から始まります。

その後、暗い哀愁のあるマイルスのトランペットが入ってきます。

2分に満たない短い曲です。

2. Siesta/Kitt’s Kiss/Lost in Madrid, Part 2(評価点:6点)

スパニッシュなギターが印象的な曲で、闘牛の登場シーンに似合いそうなマイルスのトランペットが、さらにスペインの情景をイメージさせます。

マイルスのアルバム「スケッチ・オブ・スペイン」を彷彿させます。

3. Theme for Augustine/Wind/Seduction/Kiss(評価点:6点)

ピアノ、トランペット、サックスが主役で最もジャズしている曲です。

この曲のマイルスのトランペットも、スパニッシュで哀愁たっぷりのソロ演奏がされています。

バックのシンセサイザーの音も、この曲にマッチしています。

4. Submission(評価点:5点)

バックの肉声とシンセサイザーの音が心地良い曲で、その音をバックに、チャイムとサックスが絡んできます。

チャイムが奏でるメロディーが印象的です。

5. Lost in Madrid, Part 3(評価点:4点)

うねるシンセサイザーの音が終始流れている前衛音楽のような曲です。

1分に満たない短い曲です。

6. Conchita/Lament(評価点:4点)

リズムが中心の曲で、アフリカを感じさせます。

美しいシンセサイザーのメロディーとリズムの掛け合いが聞きどころで、サウンドトラックらしい曲です。

7. Lost in Madrid, Part 4/Rat Dance/The Call(評価点:5点)

マイルスの静かなトランペット・ソロから、格闘の音楽へと突き進んでいきます。

ラストは、サックス・ソロで静かに終わります。

8. Claire/Lost in Madrid, Part 5(評価点:7点)

アコースティック・ギターとマイルスのトランペットが交互に演奏される美しい曲です。

バックのシンセサイザーとベースが、アコースティック・ギターとトランペットを盛り上げてくれています。

9. Afterglow(評価点:4点)

シンセサイザーが中心のアンビエント・ミュージックのような曲です。

2分に満たない短い曲です。

10. Los Feliz(評価点:7点)

ラストは、シンセサイザーとマイルスの切ないトランペットが鳴り響き、映画のラストシーンに相応しい美しい曲です。


【アルバム全体のコメント】

本作は、アメリカのサスペンス映画「シエスタ」のサウンドトラックで、マイルスとマーカス・ミラーの共同リーダー作になります。

マーカス・ミラーがほとんどの曲の作曲、楽器演奏を行なっているため、マイルスとマーカス・ミラー共同リーダー作と言っても、マーカス・ミラー色が色濃く出ています。

全体的に、暗い曲が多く、スパニッシュな雰囲気が漂っています。

マイルスは、10曲中7曲でトランペット演奏をしていますが、控えめな演奏となっています。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Marcus Miller:bass, bass clarinet, etc.
John Scofield:acoustic guitar
Omar Hakim:drums on
Earl Klugh:classical guitar
James Walker:flute
Jason Miles:synthesizer programming

アルバム名発売年評価点
Amandra1988-1989年6.75点

【各楽曲の評価】

1. Catémbe(評価点:6点)

マーカス・ミラーの作曲で、アフリカ、特にジャングルを感じさせる曲です。

マイルスのトランペットが主役ですが、マーカス・ミラーらしい近代的なアレンジがされています。

時折現れるマーカス・ミラーのチョッパー・ベースもマーカス・ミラーらしさが出ています。

2. Cobra(評価点:7点)

本作にも参加しているキーボード奏者ジョージ・デュークの作曲で、シンセサイザーとマイルスのミュート・トランペットの掛け合いがされている曲です。

ケニー・ギャレットのソプラノ・サックスがアクセントになっています。

3. Big Time(評価点:6点)

マーカス・ミラーの作曲で、ヒップホップやロックを感じさせる曲です。

マイルスのトランペットもこの曲調に合わせるように、ヒップホップやロック調の演奏を行なっています。

4. Hannibal(評価点:9点)

ファンキーなベースとギターで始まるこの曲は、マーカス・ミラーの作曲で、本作のベスト・ナンバーです。

ベースとギターのカッコ良さに加え、マイルスのミュート・トランペットが都会的であり、渋さが出ています。

ケニー・ギャレットのアルト・サックスも、マイルスに負けじと都会的な音を出しています。

5. Jo-Jo(評価点:6点)

マーカス・ミラーの作曲で、「ニュージャックスウィング」のような軽快なリズムとシンセサイザーをバックに、マイルスも軽快にトランペットを演奏しています。

6. Amandla(評価点:8点)

マーカス・ミラーの作曲で、都会的な渋いバラード曲です。

このようなバラード曲には、マイルスのミュート・トランペットが良く似合います。

ケニー・ギャレットのアルト・サックスも渋さが出ています。

7. Jilli(評価点:5点)

ジョン・ビグハムの作曲で、全編にジョン・ビグハムの演奏が盛り込まれています。

沖縄民謡を感じさせるリズムに、マイルスの変則的なトランペットが特徴的な曲です。

8. Mr. Pastorius(評価点:7点)

ラスト・ナンバーもマーカス・ミラーの作曲で、1987年に亡くなったベーシスト ジャコ・パストリアスに捧げられた曲です。

都会の夜に似合う渋いマイルスのトランペットの演奏で幕が閉じられます。


【アルバム全体のコメント】

マイルスのラスト・アルバム「Doo-Bop」は、制作途中でマイルスが亡くなってしまったため、本作がマイルスの最後のフル・スタジオ・アルバムになります。

マイルスの作った曲は、1曲もありませんが、最後のアルバムらしく、1980年代マイルスの集大成的な作品に仕上がっています。

息のあったマーカス・ミラーとの共演によって、最高の演奏を聞くことができます。

晩年のマイルスは、音楽以外に、絵画にもハマっており、本作のジャケットは、マイルスが描いた自画像になります。

マイルスの音楽性にも通じるマイルスらしい絵画に感じます。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Marcus Miller:arrangements,keyboards,guitars,bass,drums,soprano saxophone
George Duke:keyboards,Synclavier,arrangements
Joey DeFrancesco:keyboards
Joe Sample:acoustic piano
John Bigham:keyboards,guitars,drum programming,arrangements
Jason Miles:synthesizer programming
Michael Landau:guitars
Foley:guitars
Jean-Paul Bourelly:guitars
Billy “Spaceman” Patterson:wah-wah guitar
Ricky Wellman:drums
Omar Hakim:drums
Al Foster:drums
Don Alias:percussion
Mino Cinelu:percussion
Paulinho da Costa:percussion
Bashiri Johnson:percussion
Kenny Garrett:alto saxophone,soprano saxophone
Rick Margitza:tenor saxophone

アルバム名発売年評価点
Dingo1990年5.75点

【各楽曲の評価】

1. Kimberley Trumpet(評価点:5点)

鳥のさえずりとともに、爽やかなトランペット演奏が始まります。

この曲のトランペットは、マイルスではなく、チャック・フィンドレーが演奏しています。

朝の目覚めとともに聞きたい曲です。

2. The Arrival(評価点:6点)

この映画のメインテーマ曲で、トランペットは、マイルスが演奏しています。

マイルスのソロから、ストリングスやピアノが加わり盛り上がっていきます。

どことなくフェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」のメイン・テーマ曲のメロディに似ています。

3. Concert On The Runway(評価点:6点)

この映画でマイルスが演じているビリー・クロスのハスキー・ヴォイスの台詞から始まるこの曲は、「マイルストーンズ」を彷彿させる激しい演奏がされています。

途中から、ビッグ・バンドやコーラスも入り、純粋なモダン・ジャズではないところに面白さがあります。

4. The Departure(評価点:6点)

この曲もマイルスの台詞から始まり、飛行機の騒音とともに、映画のメインテーマ曲「The Arrival」が演奏されていきます。

5. Dingo Howl(評価点:2点)

虫の音と狼の遠吠えに、一瞬、トランペットが入ってくるだけの短い曲です。

6. Letter as Hero(評価点:5点)

ピアノ・トリオから始まり、軽快なトランペットが入るジャズらしい曲です。

マイルスらしくない明るいトランペットの演奏は、ビリー・クロスのトランペットを演じていることが分かります。

7. Trumpet Cleaning(評価点:6点)

ビッグ・バンド形式の曲で、昔のマイルスのクール・ジャズを感じさせます。

ミュート・トランペットの演奏であるためか、この曲のトランペットは、マイルスらしさがあります。

8. The Dream(評価点:8点)

映画のメインテーマ曲「The Arrival」の再演で、ピアノとミュート・トランペットの演奏が、美しさに溢れています。

このアルバムの中では、私的なベスト・ナンバーです。

9. Paris Walking I(評価点:6点)

軽快なベースの後に、マイルスのビブラートを効かせたトランペットが印象的な曲です。

次第に、ビッグ・バンド形式に変化していきます。

10. Paris Walking II(評価点:5点)

前曲「Paris Walking I」から、ビッグ・バンド形式の曲が続きますが、こちらの曲のトランペットは、マイルスの演奏ではありません。

そのため、軽快で明るい雰囲気があります。

11. Kimberley Trumpet in Paris(評価点:7点)

都会の雑音の中に、マイルスらしい都会的なトランペットが演奏されます。

マイルスのトランペットは、都会の夜によく似合います。

12. The Music Room(評価点:3点)

トイ・ピアノが演奏されている曲で、マイルスが、ピアノを演奏しています。

後半は、ピアノとともに、マイルスの台詞とトランペットが入ります。

13. Club Entrance(評価点:6点)

エレキ・ベース、サックス、トランペットが中心の曲で、ジャズというよりもヒュージョンのような曲です。

14. The Jam Session(評価点:8点)

この曲も、ヒュージョンに近い曲で、アルバム名通り、色々な楽器の即興演奏を聴くことができます。

マイルスは、途中の歓声の後から、ミュート・トランペットで参加してきます。

15. Going Home(評価点:7点)

映画のメインテーマ曲「The Arrival」の再演で、しんみりとしたミュート・トランペットが心に響きます。

16. Surprise!(評価点:6点)

「サプライズ」の歓声で始まるこの曲は、映画を見ていないとどのような流れでこの曲に行き着いたのかが分かりませんが、ビッグ・バンド形式の明るい曲であるため、ハッピーエンドで終わる映画だと想像できます。


【アルバム全体のコメント】

本作は、マイルスが出演している映画「ディンゴ」のサウンドトラックで、ミシェル・ルグランと共同制作されました。

マイルスは、映画の中で、伝説のジャズ・ミュージシャン ビリー・クロスを演じており、ビリー・クロスの役に徹したトランペット演奏を行っています。

良質な曲が多いですが、マイルスの本来のトランペット演奏ではないことや、16曲中9曲しかマイルスはトランペットを演奏していないため、マイルスの本来の演奏ではないと理解した上で、聴くのが良いアルバムです。


【参加メンバー】

Jimmy Cleveland:trombone
Buddy Collette:woodwind
Miles Davis:trumpet
Marty Krystall:woodwind
Michel Legrand:keyboards,arranger,conductor
Alphonse Mouzon:drums,percussion
Charles Owens:woodwind
Kei Akagi:keyboards
Richard Todd:French horn
Foley:bass
John Bigham:drums,percussion
George Bohanon:trombone
Oscar Brashear:trumpet
Ray Brown:trumpet
David Duke:French horn
Chuck Findley:trumpet
Kenny Garrett:alto saxophone
George Graham:trumpet
Bill Green:woodwind
Thurman Green:trombone
Marni Johnson:French horn
Jackie Kelso:woodwind
Abraham Laboriel:bass
Harvey Mason Sr.:drums,percussion
Lew McCreary:trombone
Dick Nash:trombone
Alan Oldfield:keyboards
Benny Rietveld:bass
Mark Rivett:guitar
Nolan Andrew Smith:trumpet
John Stephens:woodwind
Ricky Wellman:drums,percussion
Vincent DeRosa:French horn
Terrance Thomas:Saxophone

アルバム名発売年評価点
Doo-Bop1991年5.67点

【各楽曲の評価】

1. Mystery(評価点:7点)

マイルスとイージー・モー・ビーの共作で、マイルスらしい都会的なトランペットを聴くことができます。

まだ、ヒップホップは入ってこず、マイルスらしさが出ています。

オープニング・ナンバーとしては、快調な曲です。

2. The Doo-Bop Song(評価点:6点)

マイルスとイージー・モー・ビーの共作で、クール&ザ・ギャングなどの曲をサンプリングしています。

都会的なトランペットに、ヒップホップが絡み、斬新さを感じます。

3. Chocolate Chip(評価点:5点)

マイルス、イージー・モー・ビー、ドナルド・ヘップバーンの共作で、重厚なリズムに、軽快なマイルスのミュート・トランペットが入ってきます。

ヒップホップに合う演奏がされています。

4. High Speed Chase(評価点:4点)

マイルス、イージー・モー・ビー、ラリー・マイゼル共作で、この曲は、マイルスの死後に、ドナルド・バードの曲をサンプリングして完成させています。

曲名通り、ハイ・テンポの曲で、ノリの良い曲に仕上げています。

5. Blow(評価点:5点)

マイルスの声から始まるこの曲は、前曲「High Speed Chase」のノリの良さが引き継がれ、軽快なヒップホップが展開されていきます。

ジェームス・ブラウンの曲がサンプリングされています。

6. Sonya(評価点:6点)

マイルス、イージー・モー・ビーの共作で、ハウスのようなリズムに、マイルスの軽快なミュート・トランペットが乗ってきます。

1990年代のディスコを感じさせる曲です。

7. Fantasy(評価点:5点)

4曲目「High Speed Chase」と同様、マイルスの死後完成させた曲です。

マイルスのソロ演奏を、イージー・モー・ビーがサンプリングして完成させています。

8. Duke Booty(評価点:6点)

マイルス、イージー・モー・ビーの共作で、この曲も、ハウスのリズムが特徴的な曲です。

マイルスのトランペットと、ハウスのリズムは、意外にもマッチしています。

9. Mystery (Reprise)(評価点:7点)

オープニング・ナンバー「Mystery」の再演になります。


【アルバム全体のコメント】

本作の制作途中で、マイルスが急死してしまったため、マイルスにとっては、未完成の作品となりました。

完成していた曲は6曲だけで、マイルスの死後、イージー・モー・ビーが、未発表のトランペット演奏を使って、本作を完成させました。

マイルスが初めてヒップホップを取り入れたアルバムで、マイルスの新境地を感じさせます。

しかし、マイルスの未完成作品であったこともあり、音楽評論家からは、低い評価が与えられました。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Deron Johnson:keyboards
J.R:performer
A.B. Money:performer

まとめ

マイルスの晩年のアルバム4枚を紹介・評価しました。

サウンドトラックのアルバム「Music From Siesta」と「Dingo」は、マイルスのアルバムの中では、異質なアルバムと位置付けられていますが、

「Amandra」は、1980年代のマイルスを締め括るに相応しい良質なアルバムでした。

「Doo-Bop」は、マイルスの未完成作品でありながら、ヒップホップを取り入れた斬新なアルバムで、最後まで、マイルスは進化を続けました。

次回は、今まで評価してきたマイルスの全アルバムのランキングをまとめたいと思います。

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