ドビュッシー ピアノ作品集 「版画」「映像 第1集」「映像 第2集」「子供の領分」の紹介・評価

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ドビュッシー ピアノ作品集 「版画」「映像 第1集」「映像 第2集」「子供の領分」の紹介・評価

前回は、ドビュッシーの初期のピアノ作品集「2つのアラベスク」「ベルガマスク組曲」「忘れられた映像」「ピアノのために」を紹介しましたので、今回は、中期のピアノ作品集「版画」「映像 第1集」「映像 第2集」「子供の領分」の紹介・評価をしていきます。

ドビュッシーの中期の作品は、本格的に印象主義に傾倒し始めており、難解な曲が徐々に増え始めてきています。

しかしながら、この時代のドビュッシーの作品は、自然の風景の雰囲気をうまく表現しており、美しさに溢れています。

そんなドビュッシーの中期のピアノ作品集を紹介・評価していきます。

評価点は、良い曲かどうかで、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価と違うところもあるかもしれませんが、その点、ご了承ください。

ドビュッシーの曲を聞いてみたい方、ドビュッシーのピアノ曲の評価や、おすすめの曲を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

評価結果は、以下の通りになりました。

作品評価(10点満点)
版画7.33点
映像 第1集7.33点
映像 第2集6.67点
子供の領分5.83点

評価の詳細は、以下の通りです。

版画

作品名評価点(10点評価)
版画7.33点

【各楽曲の評価】

1. 塔(評価点:8点)

この曲は、ドビュッシーが、パリで開かれた世界博覧会で聞いたジャワ島のガムラン音楽に影響を受けて作曲されたと言われている曲です。

そのため、オリエンタルな要素を持ち、主題の旋律がとても美しく、ドビュッシーのピアノ作品の中でも、「月の光」と並ぶ美しい作品です。

2. グラナダの夕べ(評価点:6点)

この曲は、版画の中で、最も難解な作品です。

ところどころで美しい旋律が出てきたり、唐突に連打される旋律が出てきてたりと、曲展開の予測がつかず、不思議な印象を受けます。

曲名から、スペインを表現した曲ですが、スペイン音楽のフラメンコのような明るい曲ではありません。

曲の難解さから、「前奏曲 第1巻」「前奏曲 第2巻」に入っていても不思議ではない作品です。

3. 雨の庭(評価点:8点)

パリの庭園に降り注ぐ雨を表現しており、小雨というよりも、かなりの雨が降っているような風景を思い浮かべます。

この曲は、「忘れられた映像」の「嫌な天気だから「もう森へは行かない」の情景」から引用されていますが、この「雨の庭」の方が、即興的でまとまりがあります。

「版画」の中で、最も有名な曲です。


【全体のコメント】

版画は、極東、スペイン、パリを描いており、印象主義音楽のピアノ曲の手法を確立した作品です。

特に、「塔」は、ガムラン音楽や、バリの民族音楽の影響が感じられる作品です。

印象主義音楽の要素が強いですが、ドビュッシーの作品集では、分かりやすい部類に入ります。

映像 第1集

作品名評価点(10点評価)
映像 第1集7.33点

【各楽曲の評価】

1. 水の反映(評価点:9点)

この曲は、ドビュッシーの印象主義音楽が綺麗にまとまっており、曲名の通り、「水面に映る様々な物体が、形を変えてゆらめいている様子」が、目に浮かびます。

ドビュッシーの曲の中に、水を表現した曲は他にもありますが、この曲が、最も美しい曲です。

2. ラモー賛歌(評価点:6点)

ラモーとは、バロック時代のフランスの作曲家のことで、ドビュッシーは、ラモーに敬意を表していたと言われています。

この曲は、サラバンド(3拍子による荘重な舞曲)風の曲で、「ピアノのために」の「サラバンド」に通じるものがあります。

しかし、「ピアノのために」の「サラバンド」のように淡々としておらず、中間部で、盛り上がりを見せ、ドビュッシーらしい重厚な和音が登場します。

3. 運動(評価点:7点)

この曲は、後の「練習曲集」に匹敵するような抽象的な作品です。

「運動」という曲名が示している通り、軽やかで、くるくる回るような動きのある旋律で、練習曲としての色合いが強い作品です。


【全体のコメント】

「この3つの曲は、全体によくまとまっていると思います。これらはピアノ曲の中で、しかるべき位置を占めるでしょう」と、ドビュッシーが述べている通り、印象主義音楽の代表する作品集です。

印象主義が強く出ている作品ですが、3曲とも分かりやすい曲であるため、ドビュッシー初心者におすすめの作品集です。

特に、「水の反映」は、ドビュッシーの曲の中でも、名曲に位置付けられる曲です。

映像 第2集

作品名評価点(10点評価)
映像 第2集6.67点

【各楽曲の評価】

1. 葉ずえを渡る鐘の音(評価点:8点)

この曲は、「フランスの一地方で、ミサの時刻まで打ち鳴らされる弔鐘を表現した」との説があります。

しかし、西洋よりも東洋の影響を受けている印象を受けます。

ドビュッシーの曲の中では、あまり有名な曲ではありませんが、隠れた名曲に値する曲です。

詩的な曲名も味わい深さがあります。

2. そして月は廃寺に落ちる(評価点:5点)

この曲も東洋を感じさせます。

ドビュッシーのスケッチ・ブックの中に、「ブッダ」と記されている事実からも、東洋を意識していることが分かります。

理解するのに時間を要する曲で、最初は、難解に感じるかもしれません。

1曲目と同様、味のある詩的な曲名です。

2. 金色の魚(評価点:7点)

ドビュッシーの書斎に飾ってあった日本の漆器盆に金粉で描かれた錦鯉に触発された作品と言われています。

金魚の動きが如実に音に表現されており、ドビュッシーの表現力の凄さが分かる曲です。


【全体のコメント】

この時代のドビュッシーは、東洋に感心を寄せており、「ドビュッシーが、パリの万国博覧会で、ガムランに聞き入っていた」との逸話が、有名です。

「映像 第2集」は、ドビュッシーが東洋に関心を示していたことがよく分かる作品で、3曲とも東洋を感じさせる曲で構成されています。

子供の領分

作品名評価点(10点評価)
子供の領分5.83点

【各楽曲の評価】

1. グラドゥス・アド・パルナッスム博士(評価点:7点)

変わった題名の曲ですが、この曲は、ムツィオ・クレメンティの練習曲集「グラドゥス・アド・パルナッスム」(パルナッスム山への階梯)をパロディ化しています。

子供のために書かれた曲ではないため、他の曲とは少し違う雰囲気があります。

2. 象の子守歌(評価点:5点)

「子供の領分」の中では、最も難解な曲です。

中間部で、分かりやすい旋律が表れますが、全体的に、遅くずっしりとした静かな曲です。

この遅くずっしりとした旋律が、象の歩く様子をイメージできます。

3. 人形へのセレナード(評価点:6点)

「セレナード」とは、「夕べの音楽」を意味します。

その「夕べの音楽」の通り、静かな曲で、人形が踊っているかのように、可愛らしい旋律があります。

「象の子守歌」ほど、難解さはありませんので、こちらの曲の方が、子供の子守歌にあっているように思えます。

4. 雪は踊っている(評価点:6点)

曲名の通り、雪が舞っている中、雪の妖精が踊っている姿を、イメージできる曲です。

繰り返される速い旋律が、しんしんと降り積もる雪の景色を感じ、中間部での激しい旋律は、暗く重い雪の夜のような不安さを覚えます。

5. 小さな羊飼い(評価点:4点)

冒頭は、静かに始まりますが、中間部から曲調が変わり、難解な旋律と分かりやすい旋律が入り混じります。

この不安定な旋律が、羊や羊飼いの気ままさを表現しているように感じます。

子供に聞かせるには、少し難解な曲に思えます。

6. ゴリウォーグのケークウォーク(評価点:7点)

ゴリウォーグとは、絵本に出てくる黒人の男の子の人形のキャラクターの名前で、ケークウォークは黒人のダンスの一種です。

ジャズの要素も入っており、「子供の領分」の中では、最も有名な曲です。

滑稽な曲で、子供に聞かせるには一番適している作品だと感じます。


【全体のコメント】

子供の領分は、ドビュッシーが溺愛していた当時3歳の娘のために作られた作品集です。

そのため、子供向けの曲が多いですが、その中でも、ドビュッシーらしさは失われておらず、作品の中に、印象主義の強い難解な曲が散りばめられています。

まとめ

今回は、ドビュッシーの中期のピアノ作品集4作品を、紹介・評価しました。

今回紹介しました「版画」「映像 第1集」「映像 第2集」は、水、雨、金魚、鐘など自然物をありのままに美しく表現しており、印象主義の強い作品でした。

「子供の情景」は、子供向けに作られた作品ではありますが、こちらも印象主義を感じさせる曲が、何曲かありました。

このように、今回の4作品は、ドビュッシーの印象主義の美しい面が表れており、ドビュッシーの印象主義音楽を知りたい方に、最適な作品集となります。

次回は、ドビュッシー後期のピアノ作品集「前奏曲集 第1巻」「前奏曲集 第2巻」「12の練習曲」の紹介・評価をしていきたいと思います。

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