John Coltrane 1965年アルバム(“First Meditation” “Om” “Kulu Sé Mama” “Meditation”)の紹介・評価
前回は、John Coltraneの1965年アルバム(“Quartet Plays” “Transition” “Ascension” “Sun Ship”)の紹介・評価を行いましたので、今回は、その後のアルバム(“First Meditation” “Om” “Kulu Sé Mama” “Meditation”)の紹介・評価をしていきたいと思います。
この4枚のアルバムは、ジョン・コルトレーンの末期の作品で、フリー・ジャズ化しまっているため、理解するのが難しいアルバムです。
Jazz初心者の方には、おすすめできないアルバムではありますが、この4枚のアルバムを、今回、紹介・評価していきたいと思います。
評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。
ジョン・コルトレーンのおすすめのアルバムを知りたい方や、ジョン・コルトレーンのアルバムや評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
評価結果は以下の通りです。
No | 作品 | 評価点(10点満点) |
---|---|---|
1 | First Meditation | 6.2点 |
2 | Om | 6.0点 |
3 | Kulu Sé Mama | 6.33点 |
4 | Meditation | 6.4点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
First Meditations
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Love | 邦題は、「崇愛」で、ドコドコとドラムが鳴り響いてるリズムが複雑な曲です。ジョン・コルトレーンのサックスの演奏に加え、マッコイタイナーの長いピアノ・ソロが演奏されています。ジョン・コルトレーンのサックスは、それほど暴走することはなく、この時期の曲としては、聞きやすい作品です。 | 7点 |
2 | Compassion | 静かな爽やかなサックスから始まるこの曲は、邦題として、「憐憫(れんびん)」と名づけられています。最初は、分かりやすいメロディですが、徐々に、ジョン・コルトレーンのサックスが激しさを増して、フリー・ジャズ化してきます。この曲も、マッコイタイナーの長いピアノ・ソロと、エルヴィン・ジョーンズのドラムが鳴り響いています。 | 6点 |
3 | Joy | 宗教の匂いがする「法悦」という邦題が付けられています。その邦題の通り、高揚感があり、達観した印象を持つ曲です。小刻みなメロディを吹くジョン・コルトレーンのサックスから、マッコイタイナーのピアノ・ソロにつながっていきます。ピアノ・ソロの後は、ジョン・コルトレーンのサックスはフリー・ジャズ演奏へと変わっていきます。 | 6点 |
4 | Consequences | 英語の曲名「Consequences」の意味は、「結果」ですが、「帰趨(きすう)」という漢字の難しい邦題が付けられています。ジョン・コルトレーンのサックスと、マッコイ・タイナーのピアノがフリー・ジャズ化してしまっているため、邦題の漢字と同様、理解の難しい曲です。ジョン・コルトレーンは、凄まじいサックス演奏を行っています。 | 6点 |
5 | Serenity | 邦題は、「沈静」で、宗教を感じさせるバラード曲です。バラードといっても、甘い曲ではなく、攻撃的なフリー・ジャズ化されたバラードです。リズムが一定ではなく、ジョン・コルトレーンのサックス、マッコイ・タイナーのピアノは、難解なフリー演奏がされています。このアルバムの中では、曲の長さが一番短く、6分程度の曲です。 | 6点 |
平均点 | 6.2点 |
録音してから10年以上お蔵入りしていたアルバムです。本作の2ケ月後に、「メディテーションズ」のアルバムが録音され、こちらが本家となったために、「ファースト・メディテーションズ」というアルバム名が付けられています。
「メディテーションズ」とは、瞑想という意味で、その名の通り、瞑想を感じさせる宗教的な雰囲気のあるアルバムです。
(メンバ)
John Coltrane:tenor sax
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:bass
Elvin Jones:drums
Om
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Om | カリンバのようなアフリカ系の楽器に、宗教を感じさせる呪文から始まるこの曲は、怪しさ満載の作品です。ジョン・コルトレーンのサックスは、フリー・ジャズ化して、吠えまくっており、分かりやすいメロディなどは、皆無です。それが約30分程度続きますので、聞いている方も最後には疲れてしまいます。ちなみに、タイトル名の「Om」とは、「古代インドのベーダ聖典を起源とする秘密語で、神に祈るさいの感嘆詞であり、呪文などの冒頭で唱える言葉」で、タイトル名から怪しげな雰囲気が漂っています。ジョン・コルトレーンの目指していたフリー・ジャズは、ここに極まった印象を持ちます。 | 6点 |
平均点 | 6点 |
ジャケットは、カッコ良いですが、音楽は、フリー・ジャズで、ラウド・ジャズという言葉が似合うアルバムです。
集団即興のアルバム「Ascension」を小規模にして、アフリカと宗教を結びつけたようなサウンドで、ジャズ好きな人でも、理解するのが困難なアルバムです。ジョン・コルトレーンは、別世界に行ってしまった感じがします。
(主要メンバ)
John Coltrane:tenor sax、soprano sax
Pharoah Sanders:tenor sax
Donald Rafael Garrett:bass and clarinet
Joe Brazil – flute
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:bass
Elvin Jones:drums
Kulu Sé Mama
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Kulu Sé Mama (Juno Sé Mama) | アフリカがルーツの民族楽器(ンビラ)が使用されており、アフリカのリズムを強調し、ジュノ・ルイスのボーカルが主役の曲です。ジョン・コルトレーンのサックスは、ほとんど目立っておらず、実際、ジョン・コルトレーンのサックス・ソロはなく、ゲスト参加しているファラオ・サンダースのサックスの方が目立っています。難解さはなく、アフリカを感じさせます。 | 8点 |
2 | Vigil | ピアノとベースは入っておらず、エルヴィン・ジョーンズのドラムとジョン・コルトレーンのサックスだけで演奏されています。余計な音が入っていないため、ジョン・コルトレーンのサックスを堪能するのに適した作品です。 | 5点 |
3 | Welcome | マッコイ・タイナーのピアノと、ジョン・コルトレーンのサックスが中心のバラード曲です。この時期のジョン・コルトレーンのサックスとしては珍しく、終始静かな演奏がされています。 | 6点 |
平均点 | 6.3点 |
このアルバムのメインは、ジュノ・ルイス ボーカルの「Kulu Sé Mama (Juno Sé Mama)」で、アフリカを感じさせる曲です。この曲は、20分ほどの長さがあるため、アルバム全体を、アフリカらしくしています。
「Kulu Sé Mama (Juno Sé Mama)」では、ジョン・コルトレーンのサックスは目立っていませんが、他の2曲で、ジョン・コルトレーンのサックスを堪能することができます。
(メンバ)
John Coltrane:tenor sax
Pharoah Sanders:tenor saxophone, percussion
Juno Lewis:vocals, percussion, conch shell, hand drums
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:bass
Donald Rafael Garrett:clarinet, bass, percussion
Frank Butler:drums, vocals
Elvin Jones:drums
Meditation
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | The Father and the Son and the Holy Ghost | メロディを吹いているジョン・コルトレーンのサックスのバックで、騒々しいドラム、サックスが鳴り響いています。ジョン・コルトレーンのサックスは、最初は分かりやすいメロディを奏でていますが、その後は、フリー・ジャズになり、全体的に騒々しい音楽になっています。 | 6点 |
2 | Compassion | 1曲目から切れ目なく演奏が続きます。「ファースト・メディテーションズ」の同曲は、静かな爽やかなサックスから始まりましたが、こちらは騒々しい始まり方がされています。ジョン・コルトレーンのサックスにメロディがあるため、聞きやすい作品です。 | 6点 |
3 | Love | ジミー・ギャリソンの長いベース・ソロから始まるのは、「ファースト・メディテーションズ」の同曲には、なかったものです。その後に続くジョン・コルトレーンのサックスは、美しくも妖しさが漂っています。ジョン・コルトレーンのサックスは、しっかりしたメロディを吹いているため分かりやすい曲です。 | 7点 |
4 | Consequences | 「ファースト・メディテーションズ」の同曲と同じ演奏で、ジョン・コルトレーンのサックスと、マッコイ・タイナーのピアノがフリー・ジャズ化してしまっているため、理解の難しい曲です。ジョン・コルトレーンは、凄まじいサックス演奏を行っています。 | 6点 |
5 | Serenity | 最後は、バラード曲で締め括られますが、甘いバラード曲ではなく、攻撃的なバラード曲で、このアルバムの中では、最も瞑想的な作品です。「ファースト・メディテーションズ」の同曲よりは、分かりやすい演奏がされています。 | 7点 |
平均点 | 6.4点 |
アルバム「ファースト・メディテーションズ」と曲は重複していますが、こちらのアルバムは、セクステットの演奏のため、「ファースト・メディテーションズ」よりも重厚さが増しています。
「ファースト・メディテーションズ」収録の「Joy」が、このアルバムでは、「The Father and the Son and the Holy Ghost」に差し替えられています。この曲は、フリー・ジャズしており、このアルバムの中では、最も難解な曲です。
(メンバ)
John Coltrane:tenor saxophone
Pharoah Sanders:tenor saxophone, percussion
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:bass
Elvin Jones:drums
Rashied Ali:drums
まとめ
今回は、ジョン・コルトレーンの末期の4枚のアルバムを紹介・評価してきました。
ジョン・コルトレーンの末期のアルバムは、フリー・ジャズ化してしまったため、ジャズ初心者には難解なアルバムで、ジョン・コルトレーンのマニア向けのアルバムです。
そのため、ジョン・コルトレーンのアルバムを聞いたことがない方は、他のアルバムを先に聞いて、ジョン・コルトレーンの音楽を深堀りしたいと思った場合に、聞くのが良いかと思います。
次回は、ジョン・コルトレーン最後のアルバム1966年-1967年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。
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