John Coltrane 1961,1962年アルバム(“Olé Coltrane” “Africa Brass” “Coltrane” “Ballads”)の紹介・評価
前回は、John Coltraneの1960年アルバム(“Coltrane Jazz” “My Favorite Things” “Coltrane’s Sound” “Coltrane Plays the Blues”)の紹介、評価を行いましたので、今回は、その後のアルバム(“Olé Coltrane” “Africa Brass” “Coltrane” “Ballads”)の紹介・評価をしていきたいと思います。
この時代のJohn Coltraneのアルバムは、充実しており、どのアルバムも素晴らしいアルバムです。
この4枚のアルバムは、色々な試みがされており、「Olé Coltrane」と「Africa Brass」は、アフリカを表現、「Coltrane」は、黄金のカルテットを構築、「Ballads」は、バラード全集といった内容のアルバムです。
特に、「Ballads」は、日本において、最大のベストセラーと呼ばれているアルバムです。
そんな4枚のアルバムを、今回、紹介・評価していきたいと思います。
評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。
ジョン・コルトレーンのおすすめのアルバムを知りたい方や、ジョン・コルトレーンのアルバムや評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
評価結果は以下の通りです。
No | 作品 | 評価点(10点満点) |
---|---|---|
1 | Olé Coltrane | 7.00点 |
2 | Africa Brass | 7.00点 |
3 | Coltrane | 6.20点 |
4 | Ballads | 7.13点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
Olé Coltrane
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Olé | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、アフリカを感じさせる緊張感のある作品です。繰り返されるリズムと繰り返されるマッコイ・タイナーのピアノに、ジョン・コルトレーンのアルト・サックス、エリック・ドルフィーのフルート、フレディー・ハーバードのトランペットの緊迫感のある演奏がのってきます。 | 7点 |
2 | Dahomey Dance | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲です。2ベースで演奏されているため、ベースが活躍しており、ジョン・コルトレーンはテナー・サックス、エリック・ドルフィーはアルト・サックスを演奏し、交互にソロをとっています。曲名の「ダホーミー」とは、西アフリカの種族のことで、アフリカのリズムを感じます。 | 6点 |
3 | Aisha | マッコイ・タイナーの愛妻に捧げた渋いバラード曲です。ジョン・コルトレーンは渋い演奏をしていますが、出番はあまりなく、エリック・ドルフィー、フレディー・ハーバードの方が目立ったソロ演奏をしています。マッコイ・タイナーのピアノ演奏の美しさが光っています。 | 8点 |
平均点 | 7.0点 |
同じ時期に録音したアルバム「Africa Brass」を小編成にしたような作品で、アフリカを感じさせるアルバムです。エリック・ドルフィーが、フルートやアルト・サックスで参加しています。
ジョン・コルトレーンは、ソプラノ・サックスとテナー・サックスを演奏していますが、ソロ演奏は少なく感じます。それでも、ジョン・コルトレーンを感じさせるアルバムです。
(メンバ)
John Coltrane:tenor sax, soprano sax
Eric Dolphy:alt sax, flute
Freddie Hubbard:trumpet
McCoy Tyner:piano
Reggi Workman:bass
Art Davis:bass (except tracks 3)
Elvin Jones:drums
Africa Brass
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Africa | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、曲名通りアフリカをイメージしたリズミックな曲です。演奏の主体は、ジョン・コルトレーンのサックスで、そのバックにブラス、ピアノ、リズム隊がのってきて、迫力を増長しています。静と動がはっきりした曲です。 | 7点 |
2 | Greensleeves | 誰もが耳にしたことがあるイギリスの民謡で、ジョン・コルトレーンの定番曲でもあります。ジョン・コルトレーンのソプラノ・サックスの演奏後に、マッコイ・タイナーの長いピアノ・ソロが入ります。ほとんど、ブラス・セクションは入ってこず、ジョン・コルトレーンとマッコイ・タイナー主体の曲です。 | 7点 |
3 | Blues Minor | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、曲名通り、ブルース調の曲です。マッコイ・タイナーのピアノ・ソロを挟んで、ジョン・コルトレーンは、音数の多いソロ演奏で疾走しまくっています。所々で、ブラス・セクションが入ってきます。 | 7点 |
平均点 | 7.0点 |
オーケストラを入れたアルバムで、オーケストラとの共演というと、ギル・エバンズとマイルス・ディヴィスの作品を思い浮かべますが、それとは全く異なり、リズミックなアフリカを感じさせる迫力のあるアルバムです。
ジャズ・レーベル インパルスに移籍後の初のアルバムになります。当時のジョン・コルトレーンの契約金は、マイルス・ディヴィスに次ぐ高額の契約金だったとのことで、この時代のジャズ界は、マイルス・ディヴィスとジョン・コルトレーンが席巻していたことが分かります。
(主要メンバ)
John Coltrane:tenor sax, soprano sax
Booker Little:trumpet
Freddie Hubbard:trumpet
McCoy Tyner:piano
Reggi Workman:bass
Paul Chambers:bass
Elvin Jones:drums
Coltrane
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Out of This World | ハロルド・アーレンが作曲したポピュラー・ソングです。15分近い曲で、ジョン・コルトレーンがひたすらサックスを吹きまくっています。最初は、まともな普通の演奏ですが、徐々に白熱し、疾走していきます。途中、マッコイ・タイナーのピアノ・ソロが入り、一旦、落ち着きますが、また、ジョン・コルトレーンの白熱した演奏に戻ります。 | 6点 |
2 | Soul Eyes | マル・ウォルドロン作曲のバラード曲です。ジョン・コルトレーンのサックスは、1曲目とは異なり、白熱せずに、バラードらしく美しい演奏をしています。マッコイ・タイナーのピアノも美しく、次作「バラード」に収録されてもおかしくないような作品です。 | 7点 |
3 | The Inch Worm | 映画「アンデルセン物語」の曲で、ジョン・コルトレーンがソプラノ・サックスを演奏していることもあり、イントロは、「My Favorite Things」に似た印象を持ちます。ジョン・コルトレーンは、比較的、おとなしめの演奏を行っています。 | 6点 |
4 | Tunji | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲です。ゆったりとした重いバックの演奏が、ジョン・コルトレーンのサックスにいい味つけをしています。この曲も、ジョン・コルトレーンは、おとなしめの演奏を行っています。 | 6点 |
5 | Miles’ Mode | ジョン・コルトレーンのオリジナル曲で、ジョン・コルトレーンらしい音数の多いサックスを披露しています。途中、マッコイ・タイナーの長いピアノ・ソロが入ります。 | 6点 |
平均点 | 6.2点 |
ジャケットがシンプルで、ジョン・コルトレーンのアルバムの中では、マイナーなアルバムかもしれませんが、素晴らしい演奏を聞くことができます。
アルバム名「Coltrane」は、1957年発売の初リーダー作と同じアルバム名であるため、混乱してしまいます。黄金カルテットの最初のアルバムであるため、初リーダー作と同様、自分の名前のアルバム名を付けたのかもしれません。
(メンバ)
John Coltrane:tenor sax, soprano sax
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:double bass
Elvin Jones:drums
Ballads
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Say It | フランク・レッサーとジミー・マクヒューによる作曲で、このアルバムの中では、最も甘いバラード曲です。ジョン・コルトレーンのゆっくりとしっかりとしたサックスで、この甘いバラード曲を仕上げています。 | 9点 |
2 | You Don’t Know What Love Is | 多くののジャズ・ミュージシャンが好んで演奏するジーン・ディポールの曲で、ソニー・ロリンズの演奏が有名です。ジョン・コルトレーンの甘いサックスのバックで、マッコイ・タイナーも、甘いピアノ演奏を行っています。 | 7点 |
3 | Too Young to Go Steady | ナット・キングコールの歌でヒットしたポップ曲で、こちらもジョン・コルトレーンの甘い演奏が聞けます。途中に、マッコイ・タイナーのピアノ・ソロも入っており、ピアノ単独の美しさを味わえます。 | 7点 |
4 | All or Nothing at All | フランク・シナトラの歌でヒットした曲です。このアルバムにはあまり似つかないアラビア風の曲で、1曲目〜3曲目とは異なり、ジョン・コルトレーンは若干加速気味にサックスを吹いています。 | 6点 |
5 | I Wish I Knew | ハリ・ウォーレン作曲のジャズ・スタンダード曲です。最初にマッコイ・タイナーの印象的なピアノ・ソロから始まり、ジョン・コルトレーンの甘いとろけるようなサックスが入ってきます。 | 7点 |
6 | What’s New | ボブ・ハガート作曲のポピュラー・ソングで、ヘレン・メリルなどボーカル・バージョンが有名です。前曲と同様、最初にマッコイ・タイナーのピアノ・ソロから始まりますが、ジョン・コルトレーンは、加速気味にサックスを演奏しています。 | 6点 |
7 | It’s Easy to Remember | ハート&ロジャーズの作曲で、1曲目の「Say It」に曲調が似ています。「Say It」と同様、ジョン・コルトレーンは、ゆっくりとしっかりとした甘い演奏を行っています。 | 7点 |
8 | Nancy (With the Laughing Face) | フランク・シナトラの当時2歳の娘「ナンシー」を題材としたジミー・ヴァン・ヒューゼンが作曲したナンバーです。ジョン・コルトレーンの美しいサックスを聞くと、2歳の娘というよりも恋人に捧げているような曲に思えます。 | 8点 |
平均点 | 7.1点 |
日本ではジョン・コルトレーンの最大のベストセラーと言われており、ジャズ・ファン以外の人達にも愛されているアルバムです。
この時代のジョン・コルトレーンのアルバムは、音数の多い難解なサックス演奏がされていましたが、このアルバムはバラード中心ということもあり、一般受けする分かりやすい曲ばかりが収録されています。
(メンバ)
John Coltrane:tenor saxophone
McCoy Tyner:piano
Jimmy Garrison:bass
Elvin Jones:drums
まとめ
今回は、1961年,1962年のアルバム4枚を紹介・評価してきました。
その中でも、「Ballads」は、ジョン・コルトレーンのアルバムの中で、最も有名で、ジャズ・ファン以外の人にも人気のあるアルバムです。
ジョン・コルトレーンのアルバムで、「Ballads」しか聞いたことがない人は、「ジョン・コルトレーンは甘いサックスを演奏する人」と思われている人が、多くいるのではないかと思います。
しかし、ジョン・コルトレーンのアルバムの中では、「Ballads」が異色作で、ジョン・コルトレーンの一部の魅力しか表れていません。
そのため、「Ballads」しか聞いたことがない人には、激しいジョン・コルトレーンのアルバムも、是非とも聴いてもらいたいと思っています。
次回は、1962-64年のアルバムを紹介・評価していきたいと多います。
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