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Bill Evans(ビル・エヴァンス)アルバムの紹介・評価|1969-72年
前回は、ビル・エヴァンスの1966-68年のアルバム紹介・評価を行いましたので、
今回は、ビル・エヴァンスの1969-72年アルバム「What’s New」「From Left to Right」「The Bill Evans Album」「Living Time」の紹介・評価をしていきたいと思います。
1970年代に突入すると、ジャズ界にはエレクトリック化の波が押し寄せ、フュージョンが流行していきます。
ビル・エヴァンスも、今回紹介する「From Left to Right」からエレクトリック化を始めました。
エレクトリック・ピアノ(エレピ)を使用し始めても、ビル・エヴァンスの音楽的魅力は失われません。
しかし、一般的な評価としては、ビル・エヴァンスのエレピ演奏には好意的な意見が多くありません。
また、「Living Time」はジョージ・ラッセルとの共演による問題作であり、ビル・エヴァンスの作品の中では珍しく、失敗作と見なされることが多いアルバムです。
今回は、そんなビル・エヴァンス不遇の時代に発表された4枚のアルバムを紹介し、評価していきたいと思います。
評価点は、個人的な独断と偏見で各曲に点数をつけて評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点はご了承ください。
ビル・エヴァンスのおすすめのアルバムを知りたい方や、ビル・エヴァンスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
以下が評価結果です。
| No | 作品 | 評価点(10点満点) |
|---|---|---|
| 1 | What’s New | 6.71点 |
| 2 | From Left to Right | 6.00点 |
| 3 | The Bill Evans Album | 6.00点 |
| 4 | Living Time | 4.88点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
| アルバム名 | 発売年 | 評価点 |
|---|---|---|
| What’s New | 1969年 | 6.71点 |
【各楽曲の評価】
1. Straight, No Chaser(評価点:7点)
セロニアス・モンク作曲で、主題のメロディーが、セロニアス・モンクらしい作品です。
この曲は、マイルス・ディビズのアルバム「Milestones」でも取り上げられています。
イントロから、ジェレミー・スタイグのフルートが活躍しており、ビル・エヴァンスとジェレミー・スタイグの熱い演奏を聞くことができます。
2. Lover Man(評価点:7点)
ビリー・ホリデーが歌ったことで有名な曲で、ブルース調のバラード曲です。
ハービー・マンと共演したアルバム「Nirvana」でも取り上げられていますが、ジェレミー・スタイグは、ハービー・マンよりも、熱く激しい演奏をしています。
ジェレミー・スタイグのフルートが中心で、ビル・エヴァンスは、伴奏に徹しています。
3. What’s New(評価点:7点)
ボブ・ハガート作曲のポピュラー・ソングで、ジョン・コルトレーンのアルバム「バラード」でも取り上げられている曲です。
スローテンポのバラード曲ですが、ジェレミー・スタイグとビル・エヴァンスは、お互いに熱い演奏を繰り広げています。
エディ・ゴメスのベース・ソロも入っており、2人に負けまいと、熱い演奏をしています。
4. Autumn Leaves(評価点:7点)
Jazzのスタンダード曲で、ビル・エヴァンスの演奏の中では、スコット・ラファロとのトリオ演奏が有名です。
ここでの演奏は、スコット・ラファロとのトリオ演奏と同様、軽快なピアノのイントロが再現され、軽やかな明るい曲にアレンジされています。
長いベース・ソロの後のビル・エヴァンスの速いピアノ・ソロに圧巻されてしまいます。
5. Time Out for Chris(評価点:6点)
このアルバム唯一のビル・エヴァンスのオリジナル曲で、ブルース調の曲です。
ビル・エヴァンスとジェレミー・スタイグの渋い演奏を聞くことができます。
ブルース調の曲でも、フルートとの相性が良いことが分かります。
6. Spartacus Love Theme(評価点:7点)
史劇映画「スパルタカス」の主題曲で、アルバム「Conversations With Myself」にも収録されています。
「Conversations With Myself」の場合は、3台のピアノで演奏されているため、ごちゃごちゃした印象がありましたが、本作では、ビル・エヴァンスの甘美なピアノ演奏が聞けます。
ジェレミー・スタイグのフルートも美しさが表れています。
7. So What(評価点:6点)
マイルス・ディビズの名作「Kind of Blue」に収録されている曲で、「Kind of Blue」でも、ビル・エヴァンスがピアノを演奏しています。
このアルバムでは、トランペット、サックスの代わりに、フルートで演奏されているため、「Kind of Blue」とはかなり雰囲気が異なります。
【アルバム全体のコメント】
ビル・エヴァンスのアルバムの中でフルート奏者と共演した作品としては、1962年の「Nirvana」も挙げられます。
「Nirvana」では地味な演奏が展開されていますが、本作ではジェレミー・スタイグのフルートとビル・エヴァンスのピアノが、互いにぶつかり合うような迫力あるバトルを繰り広げています。
そのバックでは、エディ・ゴメスのベースが控えめながらも力強く、全体をしっかりと支えています。
【参加メンバー】
Bill Evans:Piano
Jeremy Steig:flute
Eddie Gomez:bass
Marty Morell:drums
| アルバム名 | 発売年 | 評価点 |
|---|---|---|
| From Left to Right | 1970年 | 6.0点 |
【各楽曲の評価】
1. What Are You Doing the Rest of Your Life(評価点:8点)
くすんだエレピから始まる哀愁のある美しい曲です。
エレピからアコースティック・ピアノに演奏が変わり、オーケストラがバックで流れますが、オーケストラはあまり主張していないため、ムード音楽の雰囲気は感じられません。
2. I’m All Smiles(評価点:6点)
静かな朝に似合う爽やかな曲です。
アコースティック・ギターにエレピは、相性が良く感じます。
この曲も、バックでオーケストラの演奏が入ってきます。
途中からビル・エヴァンスのエレピのソロが入り、ジャズと言うよりも、ヒュージョン寄りの作品です。
3. Why Did I Choose You?(評価点:6点)
イントロが、オーケストラ中心の演奏であるため、クラシックやムード音楽のような印象を受けます。
ビル・エヴァンスのアコースティック・ピアノのパートは、ビル・エヴァンらしい甘美な演奏ですが、エレピのパートは、甘美さがあまり感じられません。
4. Soirée(評価点:6点)
イントロは、アコースティック・ピアノの演奏ですが、すぐにエレピの演奏に変わります。
バックのアコースティック・ギターが、エレピの良さを引き立てています。
アコースティック・ピアノとエレピのバランスが良い作品です。
5. The Dolphin-Before(評価点:7点)
アコースティック・ギターとアコースティック・ピアノを中心としたボサノバ調の曲です。
爽やかな曲であるため、カフェ・ミュージックに最適な作品です。
この曲がカフェで流れていたら、おしゃれなカフェに感じてしまいます。
6. The Dolphin-After(評価点:5点)
前曲「The Dolphin-Before」と同じ曲ですが、アレンジが変わっています。
アコースティック・ギターがなくなり、オーケストラが加わったことで、ムード音楽に近くなっています。
7. Lullaby for Helene(評価点:5点)
クラシック音楽のようなイントロから、エレピの演奏が始まります。
オーケストラとエレピの掛け合いがされた後、アコースティック・ギターが加わり、ヒュージョン色が強くなっていきます。
8. Like Someone in Love(評価点:6点)
映画「ユーコンの女王」で使用された曲で、ビング・クロスビーのヒットにより、スタンダード曲になりました。
ビル・エヴァンスのアコースティック・ピアノが美しいバラード曲です。
9. Children’s Play Song(評価点:5点)
ラスト・ナンバーは、ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、トイ・ピアノのような音色のイントロから、アコースティック・ピアノに変わり、子供向けの練習曲のような可愛らしい曲に変化していきます。
【アルバム全体のコメント】
ビル・エヴァンスにとって初めてエレクトリック・ピアノを使用したアルバムです。
ジャケットでは、左手でアコースティック・ピアノ、右手でエレクトリック・ピアノを弾くビル・エヴァンスの姿が写されており、その表情は、いかにも楽しげに見えます。
エレクトリック・ピアノの導入によって、本作は賛否両論を呼ぶ作品となりました。
ムード音楽のようでありながら、そうなりきらない微妙な雰囲気を持っています。
一部のトラックでは音が割れてしまっており、音質面に難があるのは惜しいところです。
【参加メンバー】
Bill Evans:piano, electric piano
Eddie Gómez:bass
Marty Morell:drums
Sam Brown:guitar
Michael Leonard:conductor, arranger
| アルバム名 | 発売年 | 評価点 |
|---|---|---|
| The Bill Evans Album | 1971年 | 6.0点 |
【各楽曲の評価】
1. Funkallero(評価点:6点)
ズート・シムズが参加したアルバム「Loose Blues」に収録されていた曲です。
エレピのソロと、アコースティック・ピアノのソロ演奏の対比が面白い作品です。
2. Two Lonely People(評価点:7点)
ビル・エヴァンスのオリジナル新曲で、ビル・エヴァンスらしい甘美なバラード曲です。
アコースティック・ピアノだけの演奏で、エレピは演奏されていません。
3. Sugar Plum(評価点:6点)
この曲も、ビル・エヴァンスのオリジナル新曲です。
前曲と同様、アコースティック・ピアノ中心の演奏ですが、最後に、少しだけ、エレピが登場してきます。
エディ・ゴメスのベースが地味なからも、この曲を盛り上げてくれています。
4. Waltz For Debby(評価点:7点)
ビル・エヴァンスのオリジナル曲の中では、最も有名な曲で、可愛らしいワルツ曲です。
スコット・ラファとのトリオ演奏が有名ですが、ここでは、アコースティック・ピアノとエレピで演奏されています。
5. T.T.T.(評価点:5点)
ビル・エヴァンスのオリジナル新曲です。
軽快なピアノに、歪んだベースが特徴で、ビル・エヴァンスのピアノよりも、エディ・ゴメスのベースの方が目立っています。
ベース・ソロのあたりから、エレピの演奏が始まります。
6. Re: Person I Knew(評価点:5点)
ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、アルバム「Moon Beams」にも収録されています。
「Moon Beams」の方は、トリオ演奏で、美しさが溢れていますが、このアルバムのエレピの演奏は、雰囲気がだいぶ変わり、美しさが半減してしまっています。
7. Comrade Conrad(評価点:6点)
ビル・エヴァンスのオリジナル新曲です。
イントロのアコースティック・ピアノの演奏は、ビル・エヴァンスらしい美しさが表れていますが、終盤に向けて、過激なエレピ演奏に変わっていきます。
【アルバム全体のコメント】
前作「From Left to Right」に続き、エレクトリック・ピアノを取り入れたアルバムです。
エレクトリック・ピアノとアコースティック・ピアノの対比をどのように感じるかによって、この作品の評価が分かれるかもしれません。
収録曲はすべてビル・エヴァンスのオリジナルですが、そのうち4曲が新曲で、残りの3曲はエレクトリック・ピアノを加えた再演となっています。
なお、ジャケットのビル・エヴァンスの姿は老けて見え、もう少し若々しいデザインであれば印象も違ったのではないかと感じさせます。
【参加メンバー】
Bill Evans:piano, Fender Rhodes
Eddie Gómez:bass
Marty Morell:drums
| アルバム名 | 発売年 | 評価点 |
|---|---|---|
| Living Time | 1972年 | 4.88点 |
【各楽曲の評価】
1. Living Time: Event I(評価点:5点)
トライアングルのような鉄筋の音にノイズが入ってくるイントロから、今までのビル・エヴァンスの音楽とは異なることが分かります。
この曲は、現代音楽であり、ビル・エヴァンスのピアノやエレピの音は、ほとんど聞こえません。
2. Living Time: Event II(評価点:6点)
イントロは、ベース、エレピ、アコースティック・ピアノの演奏ですが、甘美さは全くなく、攻撃的なサウンドです。
バックのリズムが騒がしいため、それが攻撃性を増しています。
途中から、オーケストラや管楽器が入ってきて、ごちゃごちゃになっていきます。
3. Living Time: Event III(評価点:4点)
不協和音だらけのキーボードに、攻撃的なリズムとベースが絡んでくる曲です。
途中から入ってくる管楽器も凶暴で、ホラー映画に似合いそうな曲です。
最も現代音楽している作品です。
4. Living Time: Event IV(評価点:6点)
ロック調のキーボードから、ブラス・バンドの演奏が始まります。
この曲も攻撃的な曲ではありますが、メロディーがはっきりしているため、前3曲に比べると、まともに聞こえます。
しかし、途中から高速になっていき、ごちゃごちゃしていきます。
5. Living Time: Event V(評価点:6点)
ノイジーな音と、ビル・エヴァンスの分かりやすいアコースティック・ピアノが混じり合ったイントロから、ジャズのピアノ演奏が行われていきます。
このアルバムの中では、一番、ジャズしている曲ですが、一筋縄ではいかず、途中からさまざまな楽器が混ざり合い、ごちゃごちゃしていきます。
6. Living Time: Event VI(評価点:4点)
ビル・エヴァンスの美しいピアノから始まりますが、すぐにロック調の曲に変わってしまいます。
リズミカルなカッコ良い曲ですが、ビル・エヴァンスには、このような曲は似合いません。
7. Living Time: Event VII(評価点:4点)
この曲は、トニー・ウィリアムスのドラムが中心の曲で、ビル・エヴァンスのピアノは活躍していません。
8.Living Time: Event VIII(評価点:4点)
前半は、ピアノ中心の現代音楽を感じさせる曲で、ビル・エヴァンスは、甘美な曲だけではなく、現代音楽のようなピアノも弾けることが分かります。
途中から、オーケストラが入ってきて、ごちゃごちゃして終了していきます。
このアルバムを象徴したような終わり方をしています。
【アルバム全体のコメント】
本作はジョージ・ラッセルとの共演によるアルバムで、ビル・エヴァンスらしい繊細で美しいサウンドは感じられません。
マイルス・デイヴィスの「Bitches Brew」のビル・エヴァンス版といったような作品です。
ビル・エヴァンスのアルバムの中でも、最も評判の悪い作品として知られています。
ビル・エヴァンスのアルバムとして聴くと違和感を覚えますが、ジョージ・ラッセルの作品として捉えれば、実験的で興味深い内容ともいえます。
もし本作が「ジョージ・ラッセル名義のアルバム」として発表されていれば、ここまでの悪評は立たなかったかもしれません。
その意味で、惜しい作品です。
【参加メンバー】
George Russell:arranger, conductor
Bill Evans:piano, Fender Rhodes piano
Eddie Gómez:acoustic bass
Tony Williams, Marty Morell:drums
まとめ
1969〜72年に録音されたビル・エヴァンスのアルバム4枚を紹介・評価しました。
この時期から、ビル・エヴァンスも時代の流れに逆らわず、エレクトリック・ピアノ(エレピ)を導入し始めました。
1972年以降のスタジオ・アルバムでも、エレピは継続的に使用され続けます。
一般的には、Riverside時代のスコット・ラファロとの共演による4作品のようなサウンドを好む人が多いため、エレピを使用したアルバムは低い評価を受けがちです。
しかし、エレピとアコースティック・ピアノの対比には独自の魅力があり、エレピの音に抵抗がなければ、決して悪い作品群ではありません。
まだエレピ時代のビル・エヴァンスを聴いたことがない方は、この機会にぜひ聴いてもらえればと思います。
次回は、1974-75年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。
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