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ビル・エヴァンス 1966-68年アルバム(“Intermodulation” “A Simple Matter of Conviction” “Further Conversations with Myself” “Bill Evans Alone”)の紹介・評価
前回紹介しました“Theme from The V.I.P.s” “Trio ’64” “Trio ’65” “with Symphony Orchestra”に引き続き、ビル・エヴァンスのアルバムを紹介・評価していきたいと思います。
今回は、ビル・エヴァンスの1966-68年アルバム「Intermodulation」「A Simple Matter of Conviction」「Further Conversations with Myself」「Bill Evans Alone」を紹介・評価していきます。
こちらの4枚のアルバムは、色々と面白い企画がされており、ビル・エヴァンスの個性が出ています。
「Intermodulation」は、名作「Undercurrent」に引き続き、ジム・ホールとのデュエット作品。
「A Simple Matter of Conviction」は、「Empathy」に引き続き、シェリー・マンとの共演作品。
「Bill Evans Alone」は、初の全曲ソロ・ピアノ作品。
「Further Conversations with Myself」は、「続・自己との対話」とも呼ばれ、「Conversations With Myself」と同様、Bill Evansが、複数台のピアノ演奏を行っている作品。
となっています。
そんな個性的な4枚のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。
評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。
ビル・エヴァンスのおすすめのアルバムを知りたい方や、ビル・エヴァンスのアルバムの評価や、おすすめのアルバムを知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
以下が評価結果です。
No | 作品 | 評価点(10点満点) |
---|---|---|
1 | Intermodulation | 6.67点 |
2 | A Simple Matter of Conviction | 6.33点 |
3 | Further Conversations with Myself | 6.29点 |
4 | Bill Evans Alone | 7.40点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
Intermodulation
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | I’ve Got You Under My Skin | フランク・シナトラの代表曲となっているコール・ポーター作曲の作品です。ジム・ホールのギターが、1962年の共演アルバム「Undercurrent」よりも前面に出ており、心地よい演奏をしています。 | 7点 |
2 | My Man’s Gone Now | オペラ「ポーギーとベス」のために書かれたジョージ・ガーシュウィンの曲で、アルバム「Sunday at the Village Vanguard」にも収録されてるバラード曲です。ビル・エヴァンスのピアノもジム・ホールのギターも、渋い演奏がされています。 | 7点 |
3 | Turn Out the Stars | ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、「At Town Hall」で初演された作品です。前半は、ビル・エヴァンスのピアノ・ソロ、後半は、ジム・ホールのギター・ソロ、ラストは、ピアノとギターの掛け合いで構成されています。ビル・エヴァンスの甘美なピアノを聞くことができます。 | 8点 |
4 | Angel Face | ウェザー・リポートなどで有名なキーボード奏者のジョー・サヴィヌルの作品です。ジョー・サヴィヌルがまだ有名ではない時代に、ジョー・サヴィヌルの曲を取り上げているところが興味深いところです。ジム・ホールの美しいギター演奏を聞くことができます。 | 6点 |
5 | Jazz Samba | 「Theme from The V.I.P.s」や「with Symphony Orchestra」で共演したクラウス オガーマンの作曲で、曲名通り、サンバのようなアップテンポの曲です。このアルバムの中では浮いた印象を受けます。 | 5点 |
6 | All Across the City | ジム・ホールのオリジナル曲で、ジム・ホールの静かなギターが味わえる美しい曲です。ジム・ホールのギターとビル・エヴァンスのピアノが交互にソロをとっています。 | 7点 |
平均点 | 6.7点 |
「Undercurrent」以来のジム・ホールとの再会作品です。いい意味で、「Undercurrent」のような緊張感がなく、まったりとリラックスして聞けるアルバムです。
「Undercurrent」と比較すると、ジム・ホールのギターは伴奏に徹しているように感じます。そのため、ビル・エヴァンスの甘美なピアノを多く味わうことができます。
(メンバ)
Bill Evans:Piano
Jim Hall:guitar
A Simple Matter of Conviction
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | A Simple Matter of Conviction | オープニング・ナンバーは、ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、このアルバムの意気込みが感じられる作品です。ビル・エヴァンスの流暢なピアノを、心地よく聞くことができます。 | 6点 |
2 | Stella by Starlight | ヴィクター・ヤング作曲の有名なジャズ・スタンダード曲で、美しいバラード曲です。ビル・エヴァンスのピアノは目立っておらず、エディ・ゴメスのベース中心の作品です。 | 7点 |
3 | Orbit(Unless It’s You) | ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、ミドルテンポの美しい作品です。最初にエディ・ゴメスのベース・ソロが入り、その後に、ビル・エヴァンスの軽快なピアノ・ソロが続きます。シェリー・マンのドラムは、伴奏に徹しています。 | 6点 |
4 | Laura | 1944年の映画「ローラ」のためにデヴィッド・ラクシンが作った曲です。アルバム「Theme from The V.I.P.s」にも収録されていましたが、こちらは、ビル・エヴァンスの軽快なピアノ演奏で、ビル・エヴァンスらしさが出ています。 | 6点 |
5 | My Melancholy Baby | アーニー バーネット作曲のポピュラー・ソングで、こちらも明るめの軽快な曲です。エディ・ゴメスの音数の多いベース・ソロや、短いながらもシェリー・マンのドラム・ソロが入っています。 | 6点 |
6 | I’m Getting Sentimental Over You | ジョージ・バスマン作曲で、セロニアス・モンクが好んで取り上げていた曲です。テンポの良いベースや、シェリー・マンの繊細なブラシのドラムをバックに、ビル・エヴァンスは、転がすようなピアノ演奏を行っています。 | 8点 |
7 | Star Eyes | ジーン・デ・ポールと、ドン・レイ作曲の1943年の映画「I Dood It」で使われた曲です。ビル・エヴァンスの軽快なピアノを、エディ・ゴメスのベースとシェリー・マンのドラムが、バックで盛り上げてくれています。 | 6点 |
8 | Only Child | ビル・エヴァンスの3曲目のオリジナル曲で、このアルバム唯一の静かなバラード曲です。イントロは、ビル・エヴァンスのピアノのみの演奏で、その後、静かにベースとドラムが入ってきます。ビル・エヴァンスのピアノ主体の作品です。 | 6点 |
9 | These Things Called Changes | ラスト・ナンバーも、ビル・エヴァンスのオリジナル曲です。このアルバムの中では、最もアップテンポの曲で、特に、エディ・ゴメスのベースが高速で、エディ・ゴメスのテクニックが味わえます。シェリー・マンのドラム・ソロも申し分ない演奏です。 | 6点 |
平均点 | 6.3点 |
名ドラマー シェリー・マンとの2回目の共演アルバムです。1回目の共演アルバム「Empathy」では、ビル・エヴァンスのオリジナル曲は、1曲も収録されていませんでしたが、こちらのアルバムは、4曲、オリジナル曲が収録されています。
ほとんどが明るめの軽快な曲で、エディ・ゴメスのベースと、シェリー・マンのドラムのリズムが素晴らしいアルバムです。ただ、ジャズとは思えないセンスの良くないジャケットが、残念ところです。
(メンバ)
Bill Evans:Piano
Eddie Gomez:bass
Shelly Manne:drums
Further Conversations with Myself
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Emily | 多重録音の最初の作品「Conversations With Myself」は、3台のピアノの多重録音でしたが、今回のアルバムは、2台のピアノの多重録音です。その成果が、このオープニング・ナンバーから表れており、ピアノの音数が減り、美しい演奏がされています。この曲は、映画「The Americanization of Emily」の主題歌で、トニー・ベネットなども取り上げている曲です。 | 7点 |
2 | Yesterdays | ジェローム カーン作曲のジャズ・スタンダード曲です。前曲「Emily」よりも音数が増えて、4手で演奏されていることがはっきり分かり、ごちゃごちゃしている印象を受けます。 | 5点 |
3 | Santa Claus Is Comin’ To Town | ビル・エヴァンスが大好きなクリスマス・ソングで、ライブでも良く演奏している曲です。アルバム「Trio ’64」にも収録されています。華やかなクリスマスを感じますが、「Trio ’64」のピアノ・トリオの演奏の方が、個人的には好みです。 | 5点 |
4 | Funny Man | ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、2台のピアノ演奏に合っている曲です。ピアノの音数がちょうどよく、イントロの美しさと、途中の盛り上がり方は、2台のピアノあってこそできる技だと思います。 | 7点 |
5 | The Shadow of Your Smile | 映画「いそしぎ」の主題曲で、ジャズ・スタンダードにもなっている有名曲です。イントロの暗めの主題のメロディは、美しさが溢れています。主題のメロディが終わると、アドリブが展開されていきますが、これもビル・エヴァンスらしい甘美な演奏がされています。 | 8点 |
6 | Little Lulu | この曲も、「Trio ’64」に収録されており、アメリカのアニメ「Little Lulu」のテーマ曲で、可愛らしい作品です。「Trio ’64」のピアノ・トリオの時も、軽快な演奏でしたが、2台のピアノになって更に軽快な演奏になりました。 | 6点 |
7 | Quiet Now | アメリカのジャズ・ピアニスト ニー・ザイトリンの作品で、曲名通り、静かな曲です。イントロは、1台のピアノで演奏され、途中から、もう1台のピアノが絡んできます。 | 6点 |
平均点 | 6.3点 |
アルバムの邦題は、「続・自己の対話」で、ビル・エヴァンス自身のピアノ多重録音の2枚目のアルバムになります。1枚目「自己の対話」は、ピアノ3台の多重録音でしたが、このアルバムは、2台のピアノに減っています。
ビル・エヴァンス自身は、「自己の対話」に不満を持っていたようで、名誉挽回に、このアルバムを吹き込んだとされています。そのため、「自己の対話」よりもごちゃごちゃ感がなくなり、スッキリとした音になっています。
(メンバ)
Bill Evans:Piano
Bill Evans Alone
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Here’s That Rainy Day | ブロードウェイ ミュージカルで使用されたジミー ヴァン ヒューゼン作曲のポピュラー・ソングです。静かなクラシカルな美しいイントロから、ジャズらしい躍動感のあるアドリブに入っていきます。センチメンタルなバラード曲です。 | 7点 |
2 | A Time for Love | 映画音楽で有名なジョニー・マンデルの美しい作品です。1曲目と同様、最初は、静かなバラード風の演奏から始まり、徐々に熱を帯び、ジャズらしいスインギーなアドリブに入っていきます。ソロ・ピアノの美しさが表れています。 | 8点 |
3 | Midnight Mood | ウェザー・レポートで有名なジョー・サヴィヌルの作品です。イントロは、哀愁を感じる暗めの曲調ですが、途中から、明るめの軽快な演奏に変わっていきます。この対比が面白く、ジャズらしさを感じます。 | 6点 |
4 | On a Clear Day (You Can See Forever) | ミュージカル「晴れた日に未来がのぞける」の主題歌で、ビル・エヴァンスのピアノは、このアルバムの中では、最も明るく軽快に演奏されています。それでも、影を感じさせる演奏で、このアルバム全体の雰囲気に合っています。 | 6点 |
5 | Never Let Me Go | レイ・エヴァンスとジェイ・リヴィングストンのポップナンバーで、このアルバム最大の聴きどころの曲です。14分半に及ぶ長い曲(ビル・エヴァンスの曲の中では、最も長い曲です)で、哀愁たっぷりの演奏を聞かせてくれます。 | 10点 |
平均点 | 7.4点 |
「自己の対話」では、ひとりトリオ、「続・自己の対話」では、ひとりデュエットと続き、このアルバムでは、とうとうソロ・ピアノになりました。
哀愁の帯びた曲が多く、特に、「Never Let Me Go」は、最も哀愁が帯びており、レコードでは片面全てを使って、14分半の演奏を行っています。長い曲ですが、ダレることなく、完璧な演奏を聞かせてくれます。
(メンバ)
Bill Evans:Piano
まとめ
1966-68年録音のビル・エヴァンスのアルバム4枚を紹介・評価しました。
ビル・エヴァンスのアルバムでは、ピアノ・トリオの演奏が多い中、今回紹介しましたアルバムは、「A Simple Matter of Conviction」以外、ピアノ・ソロやデュエット作品であり、今までとは違うビル・エヴァンスの良さが分かるアルバムです。
次回は、1969-72年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。
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