Bill Evans(ビル・エヴァンス) アルバムの紹介・評価|1963-65年

ビル・エヴァンス 1963-65年アルバム(“Theme from The V.I.P.s” “Trio ’64” “Trio ’65” “Stan Getz & Bill Evans” “with Symphony Orchestra”)の紹介・評価

前回紹介しました“Interplay” “Empathy” “Loose Blues” “Conversations With Myself”に引き続き、ビル・エヴァンスのアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

今回は、ビル・エヴァンスの1963-65年アルバム「Theme from The V.I.P.s」「Trio ’64」「Stan Getz & Bill Evans」「Trio ’65」「with Symphony Orchestra」を紹介・評価していきます。

「Stan Getz & Bill Evans」は、アメリカの白人ジャズ・サックス奏者スタン・ゲッツとの共演アルバム、「Trio ’64」「Trio ’65」は、ビル・エヴァンスらしい、ピアノ・トリオのアルバム、「Theme from The V.I.P.s」と「with Symphony Orchestra」は、ビル・エヴァンスの中では、異色なムード音楽の強いアルバムです。

「Theme from The V.I.P.s」と「with Symphony Orchestra」は、ビル・エヴァンスらしさが全く出ておらず、なぜ、ビル・エヴァンスは、このようなアルバムに参加したのか疑問に感じるアルバムでもあります。

ビル・エヴァンスも人間なので、ムード音楽を制作したいと思った時期があったのかもしれません。

そんな4枚のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

ビル・エヴァンスのおすすめのアルバムを知りたい方や、ビル・エヴァンスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

以下が評価結果です。

No作品評価点(10点満点)
1Theme from The V.I.P.s4.00点
2Trio ’646.5点
3Stan Getz & Bill Evans6.67点
4Trio ’656.63点
5Bill Evans Trio with Symphony Orchestra4.75点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

Theme from The V.I.P.s

No曲名感想評価点
1Theme from “Mr. Novak”アメリカのテレビ・ドラマ「Mr. Novak」のテーマ曲で、夏を感じさせる爽やかな曲です。曲は悪くはないのですが、ジャズではなく、ムード音楽で、ビル・エヴァンスのピアノの良さが全く表れていません。あえて、ビル・エヴァンスが演奏しなくても良いような気がします。3点
2The Caretakers Themeこの曲も、アメリカのテレビ・ドラマの曲です。少しジャズっぽさはあり、ビル・エヴァンスのピアノの良さが少し生かされているかと思います。ピアノ・ソロもありますが、バックのオーケストラが、ムード音楽っぽさを出しています。4点
3Moreイタリアのドキュメンタリー映画の曲で、ボサノバが入ったムード音楽です。ビル・エヴァンスのピアノの音数が少なく、ビル・エヴァンスらしさが全くありません。楽譜通りに演奏している感じです。4点
4Walk on the Wild Sideこちらも映画音楽ですが、3曲目とは異なり、ビル・エヴァンスのピアノは軽快に演奏されています。バックのオーケストラがなければ、ジャズに聞こえなくはないですが、ムード音楽のアレンジにしてしまっています。5点
5The Days of Wine and Roses映画「酒とバラの日々」のテーマ曲で、ヘンリー・マンシーニ作曲の有名な曲です。曲は素晴らしいのですが、楽譜通りのピアノは、あえてビル・エヴァンスが演奏しなくてもいいのではと思ってしまいます。5点
6Theme from “The V.I.P.s”イギリスのコメディ映画のテーマ曲です。女性のコーラスも入っているため、更にムード音楽っぽさになっています。曲も面白くなく、ピアノも特筆すべきことはなく、つまらない曲です。2点
7Hollywoodこのアルバムの中では、最も、ジャズっぽい曲で、ビル・エヴァンスのピアノが渋い演奏であるため、唯一、ビル・エヴァンスのピアノの良さを感じさせる曲です。しかし、オーケストラのアレンジは相変わらず、ムード音楽になっています。5点
8Sweet Septemberよく知らない曲ですが、映画音楽でもドラマの音楽でもなさそうです。ドラムとコーラスが目立っている曲です。ビル・エヴァンスのピアノは、楽譜通りの演奏で、つまらないです。3点
9On Green Dolphin Streetジャズ・スタンダードにもなっている有名な映画音楽です。この曲も、オーケストラがムード音楽していて、ビル・エヴァンスのトリオで演奏している「On Green Dolphin Street」の方が断然良いです。4点
10The Man with the Golden Arm同名の映画のテーマ曲で、ピンク・パンサーの曲に少し似ていて、探偵ものに似合いそうな曲です。ビル・エヴァンスが演奏するような曲ではないですね。3点
11Lauraこちらも同名の映画音楽で、出だしのビル・エヴァンスのピアノが美しい曲です。途中から、オーケストラが入ってきて、ボサノバっぽい曲調に変わります。悪い曲ではないです。6点
12On Broadwayこの曲は、ジョージ・ベンソンのカバー・バージョンが有名な曲だと思います。ムード音楽っぽさはないですが、ビル・エヴァンスのピアノ演奏は、面白みはないです。4点
平均点4.0点

 映画音楽やドラマの音楽を集めたアルバムで、全体的にムード音楽のアレンジがされています。なぜ、このようなムード音楽に、ビル・エヴァンスが参加しようとしたのかは不明ですが、イヤイヤ参加させられていたわけではなく、ビル・エヴァンスはノって参加していたようです。
 ビル・エヴァンスのアルバムに、ハズレは少ないですが、このアルバムはハズレに属するかと思います。ビル・エヴァンスの甘美なピアノを期待せず、単なるムード音楽だと思って聞けば、悪いアルバムではないかと思います。このアルバムは、CDでは発売されていません。

(メンバ)
Bill Evans:Piano
Claus Ogerman:arranger, conductor

Trio ’64

No曲名感想評価点
1Little Luluアメリカのアニメ「Little Lulu」のテーマ曲で、可愛らしい曲です。少し、クリスマス・ソングの雰囲気も持っています。ビル・エヴァンスのピアノは、原曲に忠実で、明るく軽快に演奏しています。ゲイリー・ピーコックのベース・ソロが唸っています。7点
2A Sleepin’ Beeハロルド・アーレン作曲のポピュラーソングです。ビル・エヴァンスは、「Montreaux Jazz Festival」でも、この曲を取り上げており、ビル・エヴァンスお得意の軽快な美しいバラード曲です。ビル・エヴァンスのピアノに負けじと、ゲイリー・ピーコックのベースも頑張っています。7点
3Alwaysアーヴィング バーリンが、結婚祝いに妻に書いた曲で、明るめの軽快な曲です。ビル・エヴァンスのピアノと、ゲイリー・ピーコックのベースの絡み合いのバランスがよく、お互いの良さを引き出しています。6点
4Santa Claus Is Coming to Town誰しもが知っている有名なクリスマス・ソングです。ビル・エヴァンスはこの曲が大好きなようで、ライブでも取り上げています。珍しいところでは、ビル・エヴァンスが歌っているバージョンもあります。ようやく、スタジオ盤として、このアルバムに収録されました。7点
5I’ll See You Again英国のソングライター、サー・ノエル・カワードの曲で、色々なグループや歌手にカバーされています。この曲も、ゲイリー・ピーコックのベースが目立っおり、長いベース・ソロも入っています。6点
6For Heaven’s Sake1946年に作られた恋の歌で、ビリー・ホリディが歌っているバージョンが有名かもしれません。美しいバラード曲で、ビル・エヴァンスの甘美なピアノがとてもよく合っています。ゲイリー・ピーコックのベースは控えめで、ビル・エヴァンスのピアノの美しさを引き出しています。7点
7Dancing in the Darkアーサー・シュワルツ作曲の軽快な曲で、ビル・エヴァンスのピアノもアップテンポで軽快な演奏をしています。それに合わせて、ゲイリー・ピーコックのベースも軽快に演奏されています。6点
8Everything Happens to Meマット・デニス作曲のジャズ・スタンダード曲です。ビル・エヴァンスは、スローテンポのバラード風に演奏をしており、ビル・エヴァンスの甘美なピアノが聞けます。6点
平均点6.5点

 Keith Jarrettトリオで有名なGary Peacockがベースで参加しており、Scott LaFaroに近い演奏で、Bill Evansのピアノと相性が良く感じます。Bill Evansのピアノ演奏を邪魔することなく、それでいてベースが主張されています。
 比較的聞きやす曲が収録されており、「Santa Claus Is Coming to Town」が収録されていることもあって、クリスマスに合うアルバムだと思います。

(メンバ)
Bill Evans:Piano
Gary Peacock:bass
Paul Motian:drums

Stan Getz & Bill Evans

No曲名感想評価点
1Night and Dayコール・ポーター作曲の有名曲で、多くのジャズ・ミュージシャンに取り上げられている曲です。スタン・ゲッツらしい、少しボサノバの入ったサックスから始まり、ビル・エヴァンスのピアノ・ソロへと続きます。ビル・エヴァンスの伴奏時のピアノは、ブレイクを多用しています。最後は、ドラムとベースのソロに入り、スタンゲッツの美しいサックスで終わっていきます。7点
2But Beautifulジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の美しいバラード曲です。ビル・エヴァンスのお得意とするところで、甘美なピアノに、静かなスタン・ゲッツの美しいサックスがのってきます。このアルバムの中では、「Melinda」とともに、美しい曲の1つです。7点
3Funkalleroビル・エヴァンスのオリジナル曲で、ズート・シムズが参加したアルバム「Loose Blues」に収録されていた曲です。アップテンポの軽快な曲で、ビル・エヴァンス、スタン・ゲッツの白熱したノリに乗った演奏をしています。アップテンポの曲でも、サックス音を聞いただけで、スタン・ゲッツだと分かるゲッツらしい音色の演奏です。7点
4My Heart Stood Stillリチャード ロジャース作曲のポピュラーソングです。スタン・ゲッツのサックスは、リラックスした気楽な感じの演奏で始まり、ロン・カーターのベース・ソロと、ビル・エヴァンスの途切れ途切れのピアノ・ソロへと続いていきます。後半は、スタン・ゲッツとビル・エヴァンスの掛け合いで、盛り上がっていきます。6点
5Melindaアメリカの作曲家バートン・レーンの作曲で、繊細な美しいバラード曲です。ビル・エヴァンスもスタン・ゲッツも、終始、静かに繊細な演奏をしています。スタン・ゲッツの優しさ溢れるサックス、ビル・エヴァンスの甘美なピアノと、魅力ある1曲です。6点
6Grandfather’s Waltz曲名から分かる通り、ワルツ風の曲です。ワルツは、「Waltz for Debby」や「How My Heart Sings!」でも分かるように、ビル・エヴァンスの得意ジャンルの1つです。出だしは、ビル・エヴァンスのワルツのピアノから始まり、スタン・ゲッツの優しくも激しいサックスがのってきて相性の良さを感じます。7点
平均点6.7点

 Stan Getzとの共演アルバムですが、Stan GetzもBill Evansも、このアルバムを気に入っていなかったようで、長らく未発表のままでした。
 しかし、私のような素人には悪いところは分からず、とても良いアルバムに思います。Stan Getzの優しいサックスは、Bill Evansのピアノによく合っています。

(メンバ)
Stan Getz:tenor saxophone
Bill Evans:Piano
Ron Carter:bass (tracks 1-3)
Richard Davis:bass (tracks 4-6)
Elvin Jones – drums

Trio ’65

No曲名感想評価点
1Israelアルバム「Explorations」に収録されている既出曲で、アメリカのトランペッター ジョン・E・カリシの作曲のブルース調の曲です。目新しさはありませんが、ビル・エヴァンスのピアノは、いきなり軽快に飛ばしています。6点
2Elsaこの曲も、アルバム「Explorations」に収録されている既出曲で、ビル・エヴァンスと友人関係であったアール・ジンダースが作った曲です。「Explorations」の演奏とさほど変わりはありません。7点
3Round Midnightセロニアス・モンクの代表曲であり、ジャズ・スタンダード曲です。アルバム「Conversations With Myself」にも収録されていますが、こちらのアルバムのトリオ演奏の方がビル・エヴァンスらしくて好きです。7点
4Our Love Is Here to Stayジョージ・ガーシュウィンが、映画「ゴールドウィン・フォリーズ」のために作った曲で、軽快な明るい曲です。ビル・エヴァンスのピアノと、チャック・イスラエルのベースがスウィンギーでノっています。5点
5How My Heart Singsアルバム「How My Heart Sings」にも収録されている既出曲で、ビル・エヴァンスと友人関係であったアール・ジンダースの作曲のワルツ風の曲です。アルバム「How My Heart Sings」よりもスピード・アップされ、軽快さが増しています。9点
6Who Can I Turn To?ライブ アルバム「At Town Hall」でも取り上げられている曲です。「How My Heart Sings」のように、ワルツ風の可愛らしい曲で、ビル・エヴァンスがお得意とするタイプの軽快な曲です。8点
7Come Rain or Come Shineアルバム「Portrait In Jazz」の1曲目の曲で、「虹の彼方」が有名なハロルド・アーレン作曲のポピュラーソングです。「Portrait In Jazz」は、スコット・ラファロのベースでしたが、こちらは、チャック・イスラエルのベースであるため、演奏の弱さを感じます。5点
8If You Could See Me Nowアルバム「Moon Beams」に収録されている既出曲で、ジャズ ピアニスト タッド・ダメロン作曲のスタンダード曲です。こちらのアルバムの演奏の方が、力強さを感じます。6点
平均点6.6点

 既出曲ばかりであるためか、世間一般では、あまり評判のよくないアルバムです。しかし、各楽曲は素晴らしく、ビル・エヴァンスのベスト・アルバム的な選曲がされています。
 既出曲は、テンポを速めて、元の曲よりも鋭くカッコ良い演奏がされています。ただ、「Portrait In Jazz」や「Explorations」からの既出曲は、スコット・ラファロのベースが素晴らしかったため、こちらのアルバムの方が劣って聞こえます。

(メンバ)
Bill Evans:Piano
Chuck Israels:Bass
Larry Bunker:drums

Bill Evans Trio with Symphony Orchestra

No曲名感想評価点
1Granadasスペインのクラッシック作曲家エンリケ・グラナドスの作曲の「乙女とナイチンゲール」にちなんだ曲です。最初は、神妙なビル・エヴァンスのピアノから始まり、その後、オーケストラが重なりクラッシック要素の強いアレンジがされています。途中から、一気にピアノ・トリオのジャズ音楽に変化しますが、オーケストラが入ってくるとムード音楽のような雰囲気になります。5点
2Valseバッハの「フルートソナタ BWV 1031の第2楽章」にちなんだ曲です。暗めの曲で、ビル・エヴァンスのピアノが美しく、あまりムード音楽さはなく、ジャズのアレンジがされています。6点
3Prelude近代クラッシック作曲家スクリャービンの曲で、田園風景をイメージする曲です。オーケストラが主体であるため、サロン風のムード音楽で、ビル・エヴァンスのピアノは音数が少なく、遠慮がちに演奏されています。4点
4Time Rememberedビル・エヴァンスのオリジナル曲で、「Loose Blues」にも収録されている曲です。こちらも、オーケストラが主体で始まり、ムード音楽さが表れていますが、途中から、ビル・エヴァンスのピアノ・ソロが入ってくるため、救われた感じがします。5点
5Pavaneフォーレ作曲の「パヴァーヌ」で、ピアノとオーケストラの掛け合いから始まり、途中からピアノ・トリオのジャズのアレンジに変わっていきます。ピアノ・トリオに変わっても、あまり魅力のあるアレンジではありません。3点
6Elegia (Elegy)クラウス・オガーマンの曲で、前半は、ほとんどオーケストラの演奏で、ピアノはあまり入ってこなく、クラッシック要素の強いアレンジがされています。後半は、ピアノ主体で、ビル・エヴァンスは静かにピアノを演奏しています。5点
7My Bellsビル・エヴァンスのオリジナル曲で、こちらも「Loose Blues」に収録されている曲です。爽やかなオーケストラの始まりから、軽快なピアノ・トリオの演奏が始まります。5点
8Blue Interludeショパンの曲をベースにしているようですが、ショパンの何の曲をモチーフにしているのかは分かりません。暗めの曲で、ピアノとオーケストラの掛け合いがされていますが、ジャズ要素の強いアレンジがされています。5点
平均点4.8点

 「Theme from The V.I.P.s」に続く、Claus Ogermanとの2作目の共演作になります。
 「Theme from The V.I.P.s」が、映画やドラマの音楽を集めたムード音楽でしたが、こちらは、クラッシック音楽を集めたムード音楽です。「Theme from The V.I.P.s」よりは、ジャズのアレンジがされています。

(メンバ)
Bill Evans:Piano
Chuck Israels – bass
Larry Bunker – drums
Claus Ogerman:arranger, conductor

まとめ

1963-65年録音のビル・エヴァンスのアルバム4枚を紹介・評価しました。

「Trio ’64」「Trio ’65」は、ビル・エヴァンスのアルバムの中では、標準的なアルバムで、ジャズ初心者でも聞きやすいアルバムです。

「Stan Getz & Bill Evans」は、スタン・ゲッツとビル・エヴァンスは、楽器が違えども似たような演奏をするため、相性の良さを感じるかと思います。

「Theme from The V.I.P.s」「with Symphony Orchestra」は、ビル・エヴァンスのピアノを期待せずに、ムード音楽だと思って聞けば、そこそこ良いアルバムに感じるかと思いますが、ビル・エヴァンスの甘美なピアノを期待してしまうと、期待ハズレなアルバムになるかと思いますので、ビル・エヴァンスのマニア向けの作品かと思います。

次回は、1966-68年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

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