Bill Evans(ビル・エヴァンス)アルバムの紹介・評価|1961-62年

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Bill Evans(ビル・エヴァンス)アルバムの紹介・評価|1961-62年

前回紹介しました1956-59年のアルバムの紹介・評価に引き続き、ビル・エヴァンスのアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

今回は、ビル・エヴァンスの1961-62年のアルバム「Nirvana」「Undercurrent」「Moon Beams」「How My Heart Sings!」を紹介・評価していきます。

この4枚のアルバムは、スコット・ラファロとのトリオ アルバムの後に発売されたアルバムですが、スコット・ラファロとのトリオ アルバムに引けを取らない作品です。

「Nirvana」は、ハービー・マンとの連名、「Undercurrent」は、ジム・ホールとの連名のアルバムで、ビル・エヴァンスのリーダー作ではありませんが、良作のアルバムであるため、ここで取り上げました。


評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

ビル・エヴァンスのおすすめのアルバムを知りたい方や、ビル・エヴァンスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

以下が評価結果です。

No作品評価点(10点満点)
1Nirvana5.67点
2Undercurrent7.5点
3Moon Beams6.75点
4How My Heart Sings!7.0点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

アルバム名発売年評価点
Nirvana1961年5.67点

【各楽曲の評価】

1. Nirvana(評価点:6点)

ハービー・マンの作曲した渋い作品です。

ベースが、スコット・ラファロからチャック・イスラエルに変わった効果なのか、イントロからベースが活躍しています。

美しいピアノと、渋いフルートの相性の良さを感じる作品です。

2. Gymnopedie(評価点:5点)

近代クラシックの作曲家エリック・サティの有名曲です。

この曲は、第1番〜第3番があり、第1番が有名曲ですが、ここでは、第2番を演奏しているところに、独自性を感じます。

3. I Love You(評価点:5点)

コール・ポーターが、ミュージカル映画のために作った作品で、ここでの演奏は、ハービー・マンのフルートと、ビル・エヴァンスのピアノともに、明るく、スウィングしています。

4. Willow Weep for Me(評価点:7点)

アン・ロネル作曲のジャズ・スタンダード曲で、邦題は、「柳よ泣いておくれ」です。

この曲は、ハービー・マンのフルートよりも、ビル・エヴァンスのピアノの方が目立っており、ビル・エヴァンスらしい、美しくロマンティックな演奏が聴けます。

5. Lover Man(評価点:6点)

ビリー・ホリデーが歌ったことで有名になったコール・ポータ作曲のブルース調のバラード曲です。

前曲「Willow Weep for Me」と同様、ビル・エヴァンスのピアノが美しく演奏されています。

6. Cashmere(評価点:5点)

ハービー・マンの作曲で、アップテンポの明るい曲ですが、哀愁を感じさせる作品です。

ハービー・マンのオリジナル曲であるため、フルート中心の演奏がされています


【アルバム全体のコメント】

ビル・エヴァンスと、フルート奏者ハービー・マンとの共演作で、ビル・エヴァンスのアルバムの中では、地味なアルバムです。

地味なアルバムにしている要因は、音が非常に悪いことにあります。

ピアノの音が割れてしまっている曲は、耳障りで、録音状態が良ければ、もっと有名なアルバムになっていたかもしれません。

このアルバムの中で、珍しいのは、クラシックのエリック・サティの「ジムノペディ 第2番」を取り上げているところです。


【参加メンバー】

Bill Evans:Piano
Herbie Mann:flute
Chuck Israels:bass
Paul Motian:drums

アルバム名発売年評価点
Undercurrent1962年7.5点

【各楽曲の評価】

1. My Funny Valentine(評価点:9点)

ジャズの有名なスタンダード曲で、色々なジャズ・ミュージシャンが演奏しています。

マイルス・デイヴィス、チェット・ベイカーの演奏が特に有名でしょうか。

ビル・エヴァンスとジム・ホールのこの演奏も名演ですが、他のジャズ・ミュージシャンと異なり、アップテンポのアレンジがされています。

2. I Hear a Rhapsody(評価点:7点)

ジョージ・フラゴス、ジャック・ベイカー、ディック・ギャスペアが作曲した作品で、ジャズのスタンダードとなった1941年のポップ・ソングです。

ここでは、ギターとピアノが交互に、美しくもセンチメンタルな演奏がされています。

3. Dream Gypsy(評価点:7点)

ジュディス・ヴィーヴァーズが作曲した美しいバラード曲です。

前曲「I Hear a Rhapsody」と同様、ビル・エヴァンスのピアノ、ジム・ホールのギターともに、センチメンタルな演奏がされています。

4. Romain(評価点:9点)

ジム・ホールのオリジナル曲です。

ビル・エヴァンスの音数の少ない美しいピアノから始まり、その後のジム・ホールのギターは、優しく美しさに溢れています。

途中から、ピアノとギターのバトル演奏が展開されていきます。

5. Skating in Central Park(評価点:7点)

モダン・ジャズ・カルテットのピアニスト ジョン・ルイスが作った曲です。

モダン・ジャズ・カルテットでも演奏されている曲ですが、こちらのビル・エヴァンスとジム・ホールの演奏の方が有名かもしれません。

明るめの曲をしっとり演奏しています。

6. Darn That Dream(評価点:6点)

ベニー・グッドマンのバンドで、ミルドレッド・ベイリーが歌い、1940年のチャートで、1位をとった作品です。

ベニー・グッドマンのバンド演奏とは異なり、こちらのビル・エヴァンスとジム・ホールは、都会の静かな夜にマッチするような演奏を行っています。


【アルバム全体のコメント】

ビル・エヴァンスのピアノとジム・ホールのギターのガチンコ勝負の演奏が展開されているアルバムです。

ビル・エヴァンスの多数のアルバムの中でも、最も美しさに溢れ、屈指の名盤に値する作品です。

全曲ピアノとギターだけの演奏であるため静かな曲が多く、都会の夜に似合います。

ピアノが前に出てくる時は、ギターが伴奏に徹し、ギターが前に出てくる時は、ピアノが伴奏に徹し、時折、お互いがバトル演奏を行うスタイルは、2人の演奏のバランスの良さを感じます。


【参加メンバー】

Bill Evans:Piano
Jim Hall:Guitar

アルバム名発売年評価点
Moon Beams1962年6.75点

【各楽曲の評価】

1. Re: Person I Knew(評価点:8点)

ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、ビル・エヴァンスが作った曲の中でも、上位に位置付けられるほどの美しい作品です。

ドラムとベースの音が良く、ビル・エヴァンスのピアノを盛り上げています。

2. Polka Dots and Moonbeams(評価点:8点)

ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲の愛らしいポピュラー・ソングです。

チャック・イスラエルのベースは、スコット・ラファロのベースよりも目立たず、地味な印象がありますが、ビル・エヴァンスのピアノが引き立つような演奏をしてくれています。

この曲も、ビル・エヴァンスのセンチメンタルなピアノ演奏を引き立たせています。

3. I Fall in Love Too Easily(評価点:6点)

フランク・シナトラが取り上げたことで有名になったジャズのスタンダード曲です。

この曲も、チャック・イスラエルのベースが控えめで、ビル・エヴァンスのピアノの美しさを際立たせています。

4. Stairway to the Stars(評価点:7点)

曲名通りのロマンチックさが溢れているスタンダード曲です。

この曲のビル・エヴァンスのピアノは、他の曲と比較すると、はっきりとした大きめの音で演奏しています。

5. If You Could See Me Now(評価点:6点)

ジャズ ピアニスト タッド・ダメロン作曲のスタンダード曲です。

ビル・エヴァンスの後のアルバム「Trio’65」でも、再演しています。

「Trio’65」のベースは、同様に、チャック・イスラエルですが、「Trio’65」の方が目立った印象を受けます。

6. It Might as Well Be Spring(評価点:7点)

この曲は、「ステート・フェア」というミュージカル映画のために作られた曲で、サビのメロディは、ジャズを知らない人でも、一度は聞いたことのある有名曲です。

この有名曲を、ビル・エヴァンスはロマンチックなピアノ演奏で仕上げています。

7. In Love in Vain(評価点:6点)

ミュージカル映画「センテニアル サマー」で使用された曲で、サラ・ヴォーンもこの曲を取り上げて、歌っています。

原曲は明るめですが、ここでのビル・エヴァンスは、暗めのバラード調の演奏を行っています。

8. Very Early(評価点:6点)

このアルバム2曲目のビル・エヴァンスのオリジナル曲で、1曲目の「Re: Person I Knew」よりも、ビル・エヴァンスのライブで多く取り上げている作品です。

華やかさのあるバラード調の曲です。


【アルバム全体のコメント】

「How My Heart Sings!」と同時期に発売されたアルバムで、「Moon Beams」の方はスローテンポのバラード調の曲を、「How My Heart Sings!」は、アップテンポの曲を集めたアルバムです。

ビル・エヴァンスの甘美なピアノを聴きたい場合は、この「Moon Beams」の方が適しています。

収録曲と同様にジャケットが美しく、ここに写っている女性は、後に、ヴェルベット・アンダー・グランドで有名になるモデルのニコです。


【参加メンバー】

Bill Evans:Piano
Chuck Israels:Bass
Paul Motian:Drums

アルバム名発売年評価点
How My Heart Sings!1962年7.0点

【各楽曲の評価】

1. How My Heart Sings(評価点:10点)

ビル・エヴァンスと友人関係であったアール・ジンダース作曲のワルツ風の可愛らしい曲です。

この1曲だけでも、このアルバムを聴く価値があるほど素晴らしい作品です。

ビル・エヴァンスの演奏は、ワルツにもよく似合います。

2. I Should Care(評価点:7点)

「スリル・オブ・ロマンス」という映画で使用された曲で、ジャズ・スタンダードにもなっています。

スインギーな明るい曲で、ビル・エヴァンスのピアノとマッチしています。

3. In Your Own Sweet Way(評価点:7点)

「テイク・ファイブ」の演奏で有名なジャズ・ピアニスト デイヴ・ブルーベック作曲のロマンチックな作品で、マイルス・ディヴィスのアルバム「Workin’」でも取り上げられています。

ここでのビル・エヴァンスのピアノと、チャック・イスラエルのベースは、心地良くスイングしています。

4. Walking Up(評価点:6点)

ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、印象的なイントロから、軽快なアップテンポのピアノが展開されていきます。

ビル・エヴァンスには珍しく、ピアノ技巧を披露しています。

ビル・エヴァンスのライブ・アルバム「Montreux Jazz Festival」でも演奏されている曲です。

5. Summertime(評価点:6点)

オペラ「ポーギーとベス」の挿入歌で、ジョージ・ガーシュイン作曲のジャズ・スタンダード曲です。

スローテンポの暗いイメージのある曲ですが、ビル・エヴァンスの演奏は、アップテンポで、独特な演奏を行っています。

6. 34 Skidoo(評価点:6点)

ビル・エヴァンスの2曲目のオリジナル曲です。

リラックスしたアップテンポの曲で、ビル・エヴァンスのピアノが上昇・下降してスイングしています。

7. Ev’rything I Love(評価点:7点)

コール・ポーター作曲の優しく美しい作品です。

ビル・エヴァンスのピアノは、ミドル・テンポで、オリジナル曲を忠実に、美しく演奏されています。

8. Show-Type Tune(評価点:7点)

ビル・エヴァンスの3曲目のオリジナル曲です。

アップ・テンポの軽快なビル・エヴァンスのピアノが心地良い作品で、ビル・エヴァンスのピアノ技巧を味わえます。


【アルバム全体のコメント】

ビル・エヴァンスは、バラード曲を美しく演奏するため、「同時期に発売された「Moon Beams」の方が、ビル・エヴァンスの良さが出ている」と感じる人の方が多いかと思いますが、アップテンポの曲が中心のこのアルバムも負けていません。

評価点も、「How My Heart Sings!」の方が上になりました。

1曲目の「How My Heart Sings」は、ビル・エヴァンスの数ある演奏の中でも、最高の1曲だと思っています。


【参加メンバー】

Bill Evans:Piano
Chuck Israels:Bass
Paul Motian:Drums

まとめ

スコット・ラファロが亡くなった後のアルバム4枚を紹介・評価しました。

ベースが、スコット・ラファロから、チャック・イスラエルに変わり、スコット・ラファロのような攻撃的なベースではなくなりましたが、チャック・イスラエルのベースは、縁の下の力持ちのような存在で、ビル・エヴァンスのピアノを盛り上げています。

「Moon Beams」と「How My Heart Sings!」は、そんなチャック・イスラエルのベースが、ビル・エヴァンスのピアノを引き立たせてくれていました。

次回は、1962-63年のアルバムの紹介・評価をしていきたいと思います。

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