鬼子母神

評価: 3.4
2011年発売の10作目のアルバムで、「絶界の鬼子母神」を原作とした組曲形式のコンセプト・アルバムです。そのため、全体としては1曲扱いになりますが、各章ごとに曲は区切られています。この「絶界の鬼子母神」は未読ですが、内容を知らなくても十分楽しめる作品となっています。全体的にヘビーな曲が多いため、ポップ路線の陰陽座が好きな人には、難解なアルバムに感じるかもしれません。1回聞いただけでは理解するのが難しく、何度も繰り返し聞いて、良さが分かってくるスルメ的なアルバムです。日本のメタル・バンドらしさが表れており、要所要所で、日本独特の演歌、お祭りを感じさせる曲が収録されています。コンセプト・アルバムとして完成度の高いアルバムです。
臥龍點睛

評価: 3.5
2005年発売の6作目のアルバムです。黒猫色が強かった前々作「鳳翼麟瞳」と、瞬火色が強かった前作「夢幻泡影」のちょうど中間のようなアルバムで、黒猫と瞬火のボーカルの塩梅がちょうど良い曲構成になっています。収録曲「甲賀忍法帖」は、テレビアニメで使用されたこともあり、陰陽座の曲の中では、最も有名な曲です。このアルバムの中での注目曲は、20分に及ぶ組曲「義経」で、「悪忌判官」「夢魔炎上」「世邂逅」で構成されている曲は、全曲メロディアスで、陰陽座の個性溢れる素晴らしい作品です。「悪忌判官」の瞬火のボーカルがヴィジュアル系ではありますが、それでもメロディアスさは、陰陽座の曲の中でもピカイチの作品です。ラスト・ナンバー「我が屍を越えてゆけ」は、「舞い上がる」と同様、アニメ・ソング、アイドル系の曲で、この系統の曲が、陰陽座の定番になってきました。メロディアスで非常に聞きゃすいアルバムですが、音質があまり良くないことが残念なところです。

百鬼繚乱

評価: 3.6
2000年発売のセカンド・アルバムで、演奏、ボーカルともに、質が向上し、ファースト・アルバムよりも、完成度の高い作品に仕上がっています。日本の文学的な要素が満載で、「桜花ノ理」に登場する「あなたが蜘蛛だったのですね」のセリフは、京極夏彦の小説「絡新婦の理」の一節ですし、「奇子」は、手塚治虫の著作「奇子」をテーマにしています。この2曲は、歌詞もさる事ながら、曲の良さも抜群で、「奇子」における黒猫のアニメ調の語りのパートは、なんとも言えない独特の世界観が出ています。黒猫の才能には、驚かされてしまいます。ラスト・ナンバーの「がいながてや」は、陰陽座 初のお祭りソングで、今後の陰陽座のアルバムでは、お祭りソングが定番になっていきます。

煌神羅刹

評価: 3.8
2002年発売の3作目のアルバムで、メジャーデビューアルバムでもあります。オープニング・ナンバーの「羅刹」から、瞬火と黒猫のガチンコ勝負のボーカル合戦が繰り広げられています。疾走感溢れるヘビーメタルの曲が、多くを占めており、迫力満点のアルバムです。「牛鬼祀り」では、瞬火と黒猫以外に、招鬼のデスボイスも聞くことができます。「月に叢雲花に風」は、シングル・カットされたメロディアスな陰陽座らしい作品で、黒猫は、3種類の声を使っており、黒猫のボーカルの凄さがよく表れています。注目曲は、組曲「黒塚」で、前半の美しいバラード曲から、一気に、ギター・リフが炸裂する後半に突入する構成が素晴らしく、途中の黒猫の怖すぎる語りも入っています。ラストは、恒例のお祭りソングで終了します。全体的に、捨て曲がなく、質の高い曲ばかりで、和風テイストとヘビーメタルが、うまくマッチしたアルバムです。

夢幻泡影

評価: 4.0
2004年発売の5作目のアルバムで、前作「鳳翼麟瞳」のようなポップさは少なくなり、疾走するヘビーメタル度の強い作品に仕上がっています。それでも、メロディアスさは失われておらず、ヘビーメタルとメロディアスさがうまくブレンドされたアルバムです。前作は、黒猫のボーカルが多くを占め、女性的なメタル・アルバムでしたが、このアルバムは、瞬火のボーカルが増えたことにより、男性的なメタル・アルバムとなりました。世間一般的には、黒猫のボーカルの方が人気が高いように感じますが、瞬火のボーカルの凄さが、このアルバムで発揮されています。初期 陰陽座の集大成的な作品で、陰陽座の1つの頂点となるアルバムです。
陰陽座のメンバ
陰陽座は、本名を名乗らず、2文字の和風の芸名?で、紹介されています。
瞬火・黒猫・招鬼・狩姦によって、結成され、ドラムは、サポートメンバとして、斗羅が参加していましたが、2009年に脱退しています。
以下に、メンバー4人を紹介します。
- 瞬火(またたび)(ボーカル、ベース担当):陰陽座のリーダーで、ほとんどの陰陽座の曲の作詞・作曲を担当しています。作曲能力がとても高く、ヘビーメタル、ポップスどちらもメロディアスな曲を書いています。また、歌唱力も高く、ヴィジュアル系のボーカルが特徴です。初期のアルバムでは、黒猫とボーカルを分かちあっていましたが、最近のアルバムでは、ボーカルをとることが少なくなってきています。
- 黒猫(くろねこ)(ボーカル担当):ヘビーメタル、ポップス、アイドル、アニメソング、演歌など、どのジャンルの曲でもこなせる日本を代表するボーカリストです。浜田麻里と比較されることが多いですが、浜田麻里は高音のボーカル、黒猫は低音・中音のボーカルを得意としており、どちらもヴィブラートを効かせた凄腕のボーカリストです。陰陽座では、バラード調の曲の作詞・作曲も行っています。
- 招鬼(まねき)(ギター担当):瞬火の実弟で、陰陽座のツインギターの一端を担っています。また、ギター以外にも、陰陽座の曲の中で、デス・ボイスを担当たり、「鬼」や「輪入道」などの作曲を行っていたりもします。高校時代に漫画家を目指していたこともあり、陰陽座の関連グッズなどで殆ど全てのイラストを担当しています。
- 狩姦(かるかん)(ギター担当):叙情的な招鬼のギターとは対象的に、テクニカルな速弾きのギター演奏を得意としています。陰陽座では、数曲作曲も行っており、「鼓動」や「眼指」は、狩姦単独で作曲した作品です。
陰陽座の音楽
陰陽座のアルバムは、メタル路線のアルバムと、キャッチーなポップ路線のアルバムに、大きく分けることができます。
更に、メタル路線のアルバムは、初期のドロドロとして妖怪メタルと、中期、後期のパワーメタルに分けることができます。
メタル路線とポップ路線は、時代によって分かれる訳ではなく、マンネリ化を避けるために、交互に発売しているように感じます。
それぞれの区分けの初心者向け、中級者向け、上級者向けの分類は、以下の通りです。
【メタル路線のアルバム】
- 鬼哭転生(1999年):中級者向け
- 百鬼繚乱(2000年):初心者向け
- 煌神羅刹(2002年):初心者向け
- 夢幻泡影(2004年):初心者向け
- 魔王戴天(2007年):上級者向け
- 鬼子母神(2011年):上級者向け
- 雷神創世(2014年):中級者向け
- 覇道明王(2018年):上級者向け
- 龍凰童子(2022年):中級者向け
【ポップ路線のアルバム】
- 鳳翼麟瞳(2003年):初心者向け
- 臥龍點睛(2005年):初心者向け
- 魑魅魍魎(2008年):中級者向け
- 金剛九尾(2009年):初心者向け
- 風神界逅(2014年):中級者向け
- 迦陵頻伽(2016年):中級者向け
その他のアルバム
- 封印廻濫
- インディーズ時代のシングルやオムニバスに収録されていた曲に、新曲2曲を加えたミニアルバムです。ミニアルバムと言っても40分近くあり、質の高い曲ばかりが収録されていますので、通常の陰陽座のアルバムとみなしても差し支えのない作品です。
- 妖怪メタルらしいパワーメタルやスラッシュメタルの曲が多く、陰陽座のライブの定番曲も収録されているため、陰陽座ファンには、必聴のアルバムです。
- 赤熱演舞
- 「鳳翼麟瞳」発売後の陰陽座初のライヴアルバムです。「鬼哭転生」から「鳳翼麟瞳」までのアルバムの収録曲を万遍なく選曲しているため、初期の陰陽座のベスト・アルバムとして聞くのにも最適なアルバムです。
- スタジオ・アルバムの音を忠実に再現しています。瞬火と黒猫のボーカルは、スタジオ・アルバムよりも更にパワーアップしており、陰陽座がライブ・バンドであることが分かります。黒猫のライブの定番フレーズ「ばいにゃらー」も入っています。
- 陰陽雷舞
- 「臥龍點睛」発売後の「龍頭龍尾~陰の巻・陽の巻」ツアーの音源で、2枚組のライブ・アルバムです。「赤熱演舞」よりも音が分厚くなり、音質が向上しています。
- 「臥龍點睛」からの選曲は、スタジオ・アルバムよりも音が良くなり、音質の悪かった「臥龍點睛」よりもパワーアップしています。残念なのは、組曲「義経」が収録されていないことぐらいで、それ以外は、大変満足できるライブ・アルバムです。
まとめ
最後に、陰陽座のランキング結果をまとめます。
順位 | アルバム名 | 点数 |
---|---|---|
1位 | 夢幻泡影 | 4.0 |
2位 | 煌神羅刹 | 3.8 |
3位 | 百鬼繚乱 | 3.6 |
4位 | 臥龍點睛 | 3.5 |
5位 | 鬼子母神 | 3.4 |
6位 | 覇道明王 | 3.3 |
7位 | 金剛九尾 | 3.25 |
8位 | 龍凰童子 | 3.2 |
9位 | 風神界逅 | 3.15 |
10位 | 雷神創世 | 3.1 |
11位 | 魔王戴天 | 3.05 |
12位 | 鬼哭転生 | 3.0 |
13位 | 迦陵頻伽 | 2.9 |
14位 | 鳳翼麟瞳 | 2.8 |
15位 | 魑魅魍魎 | 2.7 |
陰陽座のアルバムのランキング付けをしましたが、どのアルバムも質が高く、ランキング付けは大変でした。
個人の好みによってランキングは変わり、人によっては、最下位のアルバムを、1位にランキングすることもあるかと思います。
それだけ、陰陽座のアルバムは、どのアルバムも素晴らしいと言うことができます。
海外でも通じるバンドだと思っていますが、和風テイストを崩さず、今後も日本国内に限って、活動していくのでしょうね。
次回は、もう1つの日本の妖怪メタル・バンド 人間椅子の全アルバム ランキングをしていきたいと思います。
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