Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1958-61年

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Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1958-61年

前回紹介しました1957-58年のアルバムに引き続き、

今回は、1958-1961年に制作されたアルバム「Porgy And Bess」「Kind of Blue」「Sketches of Spain」「Someday My Prince Will Come」を紹介・評価していきたいと思います。

この時代のマイルス・デイヴィスは、とても充実したアルバムを発表しており、特に、「Kind of Blue」は、マイルス・デイヴィスのアルバムに限らず、ジャズの全アルバムの中でも、屈指の名盤アルバムです。

雑誌などで、ジャズの歴代アルバム・ランキングが紹介されると、「Kind of Blue」か、ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」が第1位になっています。

そんな充実した時代のマイルス・デイヴィスのアルバム4枚を、今回、紹介・評価していきたいと思います。


評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Porgy And Bess5.85点
2Kind of Blue9.4点
3Sketches of Spain6.0点
4Someday My Prince Will Come7.17点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

アルバム名発売年評価点
Porgy And Bess1958年5.85点

【各楽曲の評価】

1. Buzzard song(評価点:6点)

ギル・エバンズのオーケストラから始まりますが、すぐに、マイルスの静かなトランペット・ソロが入ってきます。

マイルスが音楽担当している映画「死刑台のエレベータ」に収録されていそうな渋く都会的な曲です。

2. Bess you is my woman now(評価点:6点)

この曲も、マイルスのトランペットが渋い作品です。

前半は、オーケストラは控え目で、マイルスのトランペットの良さを引き立たせていますが、後半から、オーケストラが目立っていき、ムード音楽のような曲調に変わっていきます。

3. Gone(評価点:7点)

オーケストラのメロディがはっきりしていて分かりやすい作品です。

途中から、ドラムや、トランペットのソロが入るため、ジャズらしさが出ています。

4. Gone gone gone(評価点:5点)

マイルスのトランペットが、怪しげで神秘的に感じます。

オーケストラは、控え目で、2分弱の短い作品です。

5. Summertime(評価点:7点)

本作の中では、最も有名な曲で、ジャズ・スタンダードにもなっている曲です。

ここでのマイルスのトランペットは、ミュート・トランペットで無難な演奏をしています。

6. oh Bess, Oh where’s my bess(評価点:5点)

イントロは、スローテンポの曲で、フルートも演奏されています。

途中からミドル・テンポに変わり、活気が出てきます。

7. Prayer(Oh Doctor Jesus)(評価点:7点)

イントロは、トランペットとオーケストラが絡み合って、掛け合いの演奏をしていますが、途中から、トランペット中心の演奏に変わります。

全体的に、怪しげな雰囲気のある曲です。

8. Fisherman, Strawberry and devil crab(評価点:5点)

牧歌的な作品で、全体的に静かな曲です。

前曲「Prayer(Oh Doctor Jesus)」が激しい曲であったため、落ちついた印象を受けます。

9. My man’s gone now(評価点:5点)

トランペット中心の曲ですが、オーケストラが前面に出てくるため、ムード音楽のように感じます。

10. It ain’t necessarily so(評価点:6点)

ドラムのシンバルの音が目立っている曲です。

どことなく、マイルスの「So What」の雰囲気を感じます。

11. Here comes de honey man(評価点:5点)

波のようなゆらゆらした印象を受ける曲で、海を感じさせます。

1分弱の短い曲です。

12. I loves you Porgy(評価点:6点)

「Summertime」に次ぐ有名曲で、ジャズ・スタンダードにもなっている曲です。

キース・ジャレットや、ビル・エヴァンズのピアノ演奏でも有名な曲です。

こちらは、終始、マイルスのミュート・トランペットで演奏されています。

13. There’s a boat that’s leavin’ soon for New York(評価点:6点)

ラスト・ナンバーは、ビッグ・バンド形式の演奏で、ミュージカルらしさを感じる曲です。


【アルバム全体のコメント】

「ポーギーとベス」は、アメリカの作曲家ジョージ・ガーシュウィンが作曲した3幕からなるオペラで、ミュージカルの先駆けにもなった曲集です。

本作は、その「ポーギーとベス」を、ギル・エヴァンスのオーケストラと共演して演奏しています。

ギル・エバンズとの共演は、「Miles Ahead」に次ぐ、2枚目になります。

個人的には、「Miles Ahead」と同様、最初のうちは斬新で興味深く聴けるのですが、同じ曲調が続くため、最後の方は退屈に感じてしまいます。

ムード音楽に近いアルバムです。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet, flugelhorn
Gil Evans:Arranger and Conductor
Paul Chambers – bass
Philly Joe Jones – Drums

アルバム名発売年評価点
Kind of Blue1959年9.4点

【各楽曲の評価】

1. So What(評価点:9点)

マイルスの「So What」(だから何だ)という口癖がそのまま曲名になったと言われています。

ピアノとベースから静かに始まり、ホーン・セクションが入り、マイルスのトランペットと、ジョン・コルトレーンのサックスへと繋がっていきます。

誰かの演奏が目立つわけではなく、トランペット、サックス、ピアノ、ベース全てが一体化されています。

マイルスの代表曲の1つです。

2. Freddie Freeloader(評価点:9点)

この曲のみピアノは、ウイントン・ケリーが演奏しています。

ウイントン・ケリーは素晴らしいジャズ・ピアニストですが、やはり、他の曲と同様、ビル・エヴァンズにピアノを弾いて欲しかった気がします。

ブルース調の曲で、コルトレーンのサックス・ソロは、激しくはありませんが、一番光っているソロ演奏をしています。

3. Blue In Green(評価点:10点)

マイルスの作曲とクレジットされていることが多いですが、実際は、ビル・エヴァンズとの共作のようです。

そのためか、ビル・エヴァンズの耽美的な美しさが溢れている優れたバラード曲です。

マイルスのトランペットも美しいですが、ビル・エヴァンズのピアノの方が存在感があり、ビル・エヴァンズのための曲のように感じます。

4. All Blues(評価点:9点)

曲名通り、ブルース曲ですが、激しさはなく、静かなバラード・ブルースといった印象を受ける曲です。

ホーン・セクションから、マイルスのトランペット、ジョン・コルトレーンのサックス、ビル・エヴァンズの演奏と続いていきます。

音数の多いジョン・コルトレーンのサックスと、甘美なビル・エヴァンズのピアノが目立っており、マイルスのトランペットは、控え目に感じます。

5. Flamenco Sketches(評価点:10点)

マイルスの作曲ではありますが、ビル・エヴァンズのアイデアに基づいており、「Blue In Green」と同様、ビル・エヴァンズの美しさが溢れている曲です。

この曲は、全ての楽器の演奏が素晴らしいですが、特に、絶妙なタイミングで入ってくるジョン・コルトレーンの甘いサックスが、光っています。

また、ビル・エヴァンズのとろけてしまうような甘美なピアノも聞きどころです。


【アルバム全体のコメント】

「ジャズは、このアルバムを作るために生まれた」ということが書かれていた本がありました。

ちょっと言い過ぎ感はありますが、ジャズの歴史の中で、金字塔的なアルバムであることは間違いありません。

本作のマイルスのトランペットと、ジョン・コルトレーンのサックスの演奏は、もちろん素晴らしいですが、それ以上に、ビル・エヴァンスのピアノが目立っています。

ジャズにおいて重要な楽器は、管楽器(トランペット、サックス)であり、ピアノは地味な存在として位置付けられていますが、本作のビル・エヴァンスのピアノは、異常な緊張感に包まれており、マイルスとジョン・コルトレーンを陵駕しています。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
John Coltrane:tenor saxophone
Cannonball Adderley:alt saxophone
Bill Evans:piano (track 1,3-5)
Wynton Kelly:piano (track 2)
Paul Chambers:bass
Jimmy Cobb:drums

アルバム名発売年評価点
Sketches of Spain1959年6.0点

【各楽曲の評価】

1. Concierto De Aranjuez アランフェス協奏曲(評価点:7点)

スペインの作曲家ホアキン・ロドリーゴが作曲したギター協奏曲で、フラメンコ風のスペインの雰囲気が表れている曲です。

ジャズの中では、ジム・ホールの「アランフェス協奏曲」のアルバムが有名です。

本作では、終始、淡々とした演奏がされ、盛り上がりは特になく、オーケストラ、トランペットどちらが目立っているわけでもなく、無難な演奏をしています。

2. Will O’ The Wisp(評価点:5点)

バックにフラメンコのカスタネットが終始流れていますが、曲自体は、フラメンコの印象はなく、とらえどころのない不思議な作品です。

マイルスのミュート・トランペットと、オーケストラの掛け合いが終始なされています。

3. The Pan Piper(評価点:6点)

後半の3曲は、ギル・エバンズの曲です。

この曲も、マイルスのミュート・トランペットと、オーケストラの掛け合いがされており、途中からベースが入ってくるあたりから盛り上がりを見せ、中東のエキゾチックな雰囲気を出しています。

4. Saeta(評価点:5点)

中東のエキゾチックな怪しげなメロディや、マーチのメロディ、スペイン風の闘牛に使われそうなメロディと、色々な曲が混ざり合った不思議な曲です。

5. Solea(評価点:7点)

ラスト・ナンバーは、マイルスのトランペットが独壇場の曲で、締めくくりに相応しい作品です。

この曲もエキゾチック風であり、スペイン風でもある曲です。

スペイン風のリズムが曲にアクセントをつけています。


【アルバム全体のコメント】

ギル・エヴァンスのオーケストラとの共演の3枚目にあたるアルバムで、ギル・エヴァンスとの共演作では、最も、評価の高いアルバムです。

異国情緒が溢れたアルバムで、「Miles Ahead」や「Porgy And Bess」のようなムード音楽とはまた違った雰囲気のあるアルバムです。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet, flugelhorn
Gil Evans:Arranger and Conductor
Paul Chambers – bass
Jimmy Cobb – Drums

アルバム名発売年評価点
Someday My Prince Will Come1961年7.17点

【各楽曲の評価】

1. Someday My Prince Will Come(評価点:8点)

ディズニー映画「白雪姫」の曲であるため、誰でも1度は耳にしたことのある有名曲です。

この曲のみ、テナー・サックスが、ハンク・モブレーと、ジョン・コルトレーンで演奏されています。

テナー・サックスのソロでは、先発がハンク・モブレーで、後発がジョン・コルトレーンです。

ハンク・モブレーは地味なソロ演奏ですが、ジョン・コルトレーンは音数の多い派手な演奏で、ハンク・モブレーの演奏とは全く異なっています。

2. Old Folks(評価点:7点)

ウィラード・ロビソンが作曲したポピュラー・ソングで、ジャズ・スタンダードにもなっているバラード曲です。

マイルスのミュート・トランペットがひたすら美しく、ウィントン・ケリーのピアノもそれに合わせて、美しく演奏されています。

テナー・サックスは、ハンク・モブレーで、ハンク・モブレーのサックスは、バラード曲によく似合います。

3. Pfrancing(評価点:6点)

マイルスのオリジナル曲で、ブルース調のミドル・テンポの作品です。

マイルスとハンク・モブレーが、地味な演奏であるためか、ウィントン・ケリーのブルース調のピアノが、目立って聞こえます。

4. Drad-Dog(評価点:8点)

マイルスのオリジナル曲で、この曲も、マイルスのミュート・トランペットがひたすら美しい曲です。

ウィントン・ケリーのピアノとハンク・モブレーのサックスも美しさに溢れています。

5. Teo(評価点:7点)

マイルスのオリジナル曲で、エキゾチックな雰囲気を感じる曲です。

この曲のテナー・サックスは、ジョン・コルトレーンで、ハンク・モブレーのサックスとは正反対に、音を外した高速の演奏は、聞く人に強烈な印象を与えます。

一方、ハンク・モブレーの方は、忠実な演奏で、聴けば聴くほど味が出てくるようなタイプの演奏です。

6. I Thought About You(評価点:7点)

ジミー・ヴァン・ヒューゼンが作曲したバラード曲のポピュラー・ソングです。

バラード曲には、マイルスのミュート・トランペットがよく似合います。


【アルバム全体のコメント】

バラード曲が多く収録されているアルバムであるため、マイルスのアルバムの中では、聞きやすいアルバムです。

ジョン・コルトレーンが、「Someday My Prince Will Come」と「Teo」の2曲に参加しています。

ジョン・コルトレーンが、マイルスのアルバムに参加するのは、これが最後のアルバムになります。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Hank Mobley:tenor sax (track 1-4,6)
John Coltrane:tenor sax (track 1,5)
Wynton Kelly:bass
Jimmy Cobb:drums (track 1,3-6)
Philly Joe Jones:drums (track 2)

まとめ

マイルス・デイヴィスの1958-61年のアルバム4枚を紹介・評価しました。

やはり、「Kind of Blue」が、ジャズの歴史的名盤になっていることもあって、ずば抜けて、素晴らしいアルバムです。

「Kind of Blue」よりも評価は低かったですが、「Someday My Prince Will Come」も、マイルス・デイヴィスのアルバムの中では、上位に位置付けられるアルバムです。

ギル・エバンズとの共演作「Porgy And Bess」と「Sketches of Spain」は、結果的には、「Sketches of Spain」の方が評価が高くなりました。

ギル・エバンズとの共演作のアルバムは、4枚発売されていますが、どのアルバムを評価するかは、人の好みによって変わってくるかと思います。

次回は、ハービー・ハンコックや、ウェイン・ショーターが加入してくる1962年-1966年のアルバムを紹介していきたいと思います。

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