Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1968-70年

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Miles Davis(マイルス・デイヴィス)アルバムの紹介・評価|1968-70年

前回紹介しました1967-68年のアルバムに引き続き、

今回は、1968-70年に制作されたアルバム「Filles De Kilimanjaro」「In a Silent Way」「Bitches Brew」「A Tribute to Jack Johnson」を紹介・評価していきたいと思います。

この時代のマイルスは、電子化(ヒュージョン)に突き進み、「Miles in the Sky」で、初めて電子楽器を使用しましたが、まだ、ジャズの雰囲気が強く残っていました。

しかし、「Filles De Kilimanjaro」から、徐々にヒュージョン化し、「In a Silent Way」で完全にジャズから脱出し、「Bitches Brew」へと辿り着きます。

この「Bitches Brew」は、今までに聴いたことのないような音楽を展開し、ジャズ史上最も革命的な作品となりました。

「Filles De Kilimanjaro」から、「Bitches Brew」まで、わずか1年足らずで到達していることから、マイルスは、急ピッチで、音楽性を変化させたと言えます。

「A Tribute to Jack Johnson」は、映画「ジャック・ジョンソン」のサントラで、ロック寄りのヒュージョンを展開しています。

そんなマイルス・デイヴィスのアルバム4枚を、今回、紹介・評価していきたいと思います。


評価点は、個人的な独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

マイルス・デイヴィスのおすすめのアルバムを知りたい方や、マイルス・デイヴィスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

アルバムの評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Filles De Kilimanjaro キリマンジャロの娘6.25点
2In a Silent Way6.5点
3Bitches Brew8.17点
4A Tribute to Jack Johnson6.5点

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

アルバム名発売年評価点
Filles De Kilimanjaro キリマンジャロの娘1968年6.25点

【各楽曲の評価】

1. Frelon Brun(評価点:7点)

マイルス初の8ビートを使用した革新さを感じさせる作品です。

この曲では、チック・コリアがピアノを、デイブ・ホランドがベースを演奏しており、ファンキーなグループ感が強調されています。

2. Tout de Suite(評価点:6点)

イントロから、エレピが使用され、エレクトリック化されていることが分かる曲です。

ここでエレピを弾いているのは、ハービー・ハンコックです。

ダークでスローテンポのイントロから、各メンバの激しいソロへと展開されていきます。

3. Petits Machins(評価点:6点)

ギル・エヴァンスが全面的に関わったと言われている曲で、怪しげな雰囲気を醸し出している作品です。

全体的に、変則拍子が採用されており、各メンバはフリーな形式で演奏を行なっています。

黒魔術的なウェイン・ショーターの演奏とマッチしています。

4. Filles de Kilimanjaro(評価点:6点)

前曲までとは、雰囲気が変わり、爽やかな印象を持つ管楽器中心の作品です。

爽やかと言っても、現在のヒュージョンのような軽さのある爽やかさではなく、ダークな中に、時折表れる明るいメロディが、爽やかさを出している程度です。

5. Mademoiselle Mabry(評価点:6点)

本作の中で、最も長い16分にも及ぶバラード曲です。

ジャズ時代のミュート・トランペットを使用したセンチメンタルなバラードではなく、ソウルフルさを持ったメロウなバラード曲です。

1曲目「Frelon Brun」と同様、チック・コリアがピアノを、デイブ・ホランドがベースを演奏しています。


【アルバム全体のコメント】

エレクトリック化の過渡期の作品で、まだ、ジャズ寄りのアルバムですが、アコースティックと電子楽器が、ちょうど良い塩梅でミックスされています。

本作の収録曲は、全曲マイルスのオリジナル曲となっています。

本作では、チック・コリア(ピアノ)とデイヴ・ホランド(ベース)が、2曲演奏しており、マイルスの新しい音楽に取り組もうという姿勢がみられるアルバムです。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:tenor saxophone
Herbie Hancock:electric piano(track2,3,4)
Chick Corea:electric piano(track1,5)
Ron Carter:electric bass(track2,3,4)
Dave Holland:double basson(track1,5)
Tony Williams:drums

アルバム名発売年評価点
In a Silent Way1969年6.5点

【各楽曲の評価】

1. Shhh/Peaceful(評価点:6点)

3部構成の作品で、全曲マイルスのオリジナル曲です。

イントロから、エレピ、オルガン、エレキギターが入り、その上にマイルスのトランペットが乗ってきます。

明らかに前作までの電子楽器の使用方法とは異なり、新たなヒュージョンへと向かっていることが分かる作品です。

キーボードは、特に明確なメロディを持っておらず、ギターと管楽器を際立たせるための裏方に徹しています。

2. In A Silent Way/It’s About That Timel(評価点:7点)

イントロとラストのギター、エレピの美しさが際立っており、牧歌的な雰囲気を感じさせる作品です。

このイントロとラストのメロディを聞くと、ヒュージョンへ移行したからと言って、過激な曲ばかりではなく、美しい曲もあるのだと安心することができます。

中間部では、リズミカルな曲調に変化し、ドラマティックな展開がされていきます。


【アルバム全体のコメント】

本作から、マイルスの本格的なヒュージョンが開始されます。

キーボードに、ジョー・ザヴィヌルが加わり、ハービー・ハンコック、チック・コリアの3名体制でキーボードが演奏され、色々なキーボードの音が、バックで渦巻いています。

次作「Bitches Brew」の前哨戦のようなアルバムですが、「Bitches Brew」のような過激さはなく、分かりやすい作品です。

そのため、「Bitches Brew」を聞く前に、本作で肩慣らしをしておくことをおすすめします。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:soprano sax
Herbie Hancock:electric piano
Chick Corea:electric piano
Josef Erich Zawinul:organ
John McLaughlin:electric guitar
Dave Holland:bass
Tony Williams:drums

アルバム名発売年評価点
Bitches Brew1969年8.17点

【各楽曲の評価】

1. Pharaoh’s Dance(評価点:9点)

ジョー・ザヴィヌルの作曲で、20分に及ぶ大作です。

繰り返される小刻みなリズムに、不安定なキーボードが、洪水のように表れ、その中で、時折、安定したマイルスのトランペットが鳴り響きます。

途中で、入ってくるバス・クラリネットも不安定で、不安定と安定を繰り返しながら、曲が進行していきます。

2. Bitches Brew(評価点:8点)

マイルスの作曲で、本作では、最も長い27分に及ぶ大作です。

イントロから、マイルスの小刻みなトランペットが爆発しており、ドラムとキーボードがトランペットを追いかけるように鳴り響いていきます。

本作の中では、最も斬新的で、前衛音楽を感じさせる作品です。

3. Spanish Key(評価点:9点)

マイルスの作曲で、カッティング・ギターが印象的なリズミカルでファンキーな作品です。

スパニッシュなマイルスのトランペットもファンキーで、本作の中で最も迫力のある演奏がされています。

全楽器、協調性のあるリズミカルな演奏で、聞き手を興奮状態に誘ってくれます。

4. John McLaughlin(評価点:7点)

ジョン・マクラフリンの名前がついた曲ですが、作曲は、マイルスです。

5分未満の曲で、本作の中では、最も短い曲です。

元々は、長い曲だったようですが、プロデューサーのテオ・マセロが曲の一部を切り取って短い曲に編集しています。

ギターとエレピが中心で、マイルスのトランペットは演奏されていません。

5. Miles Runs The Voodoo Down(評価点:8点)

マイルスの作曲で、ミドル・テンポのファンキーな曲です。

ギターの音が、マイルスに影響を与えたスライ&ザ・ファミリー・ストーンのようなファンキーさを持ち、このファンキーなギターの上を、マイルスのトランペットが軽快に走っていきます。

6. Sanctuary(評価点:8点)

ラスト・ナンバーは、ウェイン・ショーターの作曲で、スロー・テンポの美しいバラード曲です。

これまでの曲が、尖った激しい革新的な曲であったため、この曲は、美しさが際立つ曲となりました。

マイルスの演奏は、ミュート・トランペットではありませんが、大人の美しいトランペットの音色を聞くことができます。


【アルバム全体のコメント】

マイルスのヒュージョンの目指していた姿が、本作で極まりました。

ドラムとパーカッションを4名体制にして、リズムを強調したファンキーな作品で、楽器の使用方法に独自性があります。

従来のジャズとは全く異なる作品であるため、今までのジャズに慣れている人には、一聴しただけでは、難解に感じるかと思います。

しかし、何度も何度も聴くうちに良さが分かってきて、聴くたびに新たな発見ができる魅力的な作品です。

ジャズ史上最も革命的な作品の一つであり、「カインド・オブ・ブルー」に次ぐ、マイルスの最高傑作のアルバムになりました。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:soprano sax
Bennie Maupin:bass clarinet
Chick Corea:electric piano
Josef Erich Zawinul:electric piano
Larry Young:electric piano
John McLaughlin:electric guitar
Dave Holland:bass
Harvey Brooks:electric bass
Lenny White:drums
Jack DeJohnette:drums
Don Alias:drums,Conga
Jim Riley:percussion

アルバム名発売年評価点
A Tribute to Jack Johnson1970年6.5点

【各楽曲の評価】

1. Right Off(評価点:8点)

マイルスの作曲で、1969年11月に録音されたいくつかのテイクが採用されています。

ジャズ・ロックの曲で、特に、ジョン・マクラフリンのギターが、ロックしており、カッティングギターやワウ・ギターを聞くことができます。

また、この曲には、スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「シング・ア・シンプル・ソング」に基づいたリフが含まれています。

マイルスのトランペットがあるため、ジャズ要素が残っていますが、ほぼロックの作品です。

2. Yesternow(評価点:5点)

この曲もマイルスの曲ですが、プロデューサーのテオ・マセロによるテープ編集が、かなり施されています。

中盤では、「イン・ア・サイレント・ウェイ」のテープが使用されおり、ベースとトランペットが中心の怪しげな都会的な雰囲気が出ている作品です。

曲のラストには、ジャック・ジョンソンの言葉が朗読されています。


【アルバム全体のコメント】

本作は、「死刑台のエレベータ」以来のサントラですが、映画のために制作されたアルバムではなく、既に録音されていた曲を、プロデューサーのテオ・マセロが編集し制作したアルバムです。

前作「Bitches Brew」のヒュージョンとは異なり、ロック要素の強い分かりやすい作品です。

25分超えの曲が2曲しか収録されていませんが、その中でも、1曲目の「Right Off」は、ジョン・マクラフリンのロック調ギターが素晴らしい完成度の高い曲です。


【参加メンバー】

Miles Davis:trumpet
Steve Grossman:soprano sax
John McLaughlin:electric guitar
Sonny Sharrock:electric guitar(track2)
Herbie Hancock:organ
Chick Corea:electric piano
Michael Henderson:electric bass
Dave Holland:electric bass(track2)
Billy Cobham:drums
Jack DeJohnette:drums(track2)

まとめ

マイルスの1968-70年のアルバム4枚を紹介・評価しました。

この4枚のアルバムは、マイルスが、ジャズからヒュージョンに移行する過程が、よく分かる作品でした。

次回は、ダンスやロックに傾倒していった1972-83年のアルバムを紹介・評価していきたいと思います。

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