Miles Davis 1967-68年アルバム(”Sorcerer” “Nefertiti” “Miles in the Sky” )の紹介・評価
前回紹介しました「Quiet Nights」「Seven Steps to Heaven」「E.S.P」「Miles Smiles」に引き続き、今回は、1967-1968年に制作されたアルバム「Sorcerer」「Nefertiti」「Miles in the Sky」を紹介・評価していきたいと思います。
「Sorcerer」「Nefertiti」は、ハービー・ハンコックや、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスによる第2期クインテット 4部作の後半のアルバムになります。
前半の「E.S.P」「Miles Smiles」と比較すると、少し難解で、とっつきにくいと感じるかも知れませんが、都会の夜の雰囲気が出ていて、渋いアルバムです。
「Miles in the Sky」は、マイルス初の電子楽器(エレクトリック・ピアノ、エレクトリック・ギター)を使用した作品で、まだヒュージョンっぽさはなく、ジャズ寄りのアルバムではありますが、ここから、電子マイルスがスタートしていきます。
そんなマイルス・デイヴィスのアルバム3枚を、独断と偏見で、各曲に点数をつけて、評価してみたいと思います。
ジャズのアルバムを聞いたことがない方や、マイルス・デイヴィスのアルバムを知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
アルバムの評価結果は以下になりました。
No | 作品 | 評価点(10点満点) |
---|---|---|
1 | Sorcerer | 6.57点 |
2 | Nefertiti | 6.67点 |
3 | Miles in the Sky | 6.25点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
評価詳細
Sorcerer
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Prince of Darkness | まずは、ウェイン・ショーターの曲からスタートです。マイルスのトランペットとウェイン・ショーターのサックスの活きがいいですね。曲は難解の部類に入るかと思いますが、勢いで押しまくっています。トニー・ウィリアムスの変拍子のドラムも活きがありますが、ハービー・ハンコックのピアノは、無機質で、活きの良さはありません。 | 7点 |
2 | Pee Wee | トニー・ウィリアムス作曲のバラード曲ですが、この曲、マイルスは、演奏に参加していないのです。マイルスは作曲していないし、演奏にも加わっていないって、「マイルスのアルバムじゃないの?」と思いたくなりますが、マイルスが参加していなくても、マイルス色が十分出ています。マイルスの指導力によるものでしょうね。 | 8点 |
3 | Masqualero | ウェイン・ショーター作曲の都会の夜に似合う曲です。バラード曲ですが、少し難解さがあります。前曲では、マイルスは参加していませんでしたが、この曲では、マイルスの独壇場で、存在感がすごいです。ハービー・ハンコックのピアノも前面に出て、マイルスに負けていません。 | 8点 |
4 | The Sorcerer | ハービー・ハンコック作曲のアップテンポの曲で、ウェイン・ショーターの曲とは雰囲気の違いがはっきり分かります。ウェイン・ショーターの曲は、都会の夜を感じさせる少し難解な曲ですが、この曲は、迫力のあるジャズしている曲です。前半はピアノが入ってきませんが、後半は、長いピアノ・ソロが入ってきて、これぞ、ハービー・ハンコックといった演奏をしています。ちなみに、この曲、ハービー・ハンコックのアルバム「Speak Like a Child」にも収録されていて、全編、ピアノの演奏がされています。 | 6点 |
5 | Limbo | この曲もウェイン・ショーター作曲の都会の夜に似合う曲です。都会の夜の雰囲気を作り出すのが、ウェイン・ショーターは上手いですね。ウェイン・ショーターの曲は黒魔術的と言われますが、その黒魔術的な要素があるために、都会の夜を感じさせるのかもしれません。このアルバムの中では、最もドラムが激しい曲です。 | 7点 |
6 | Vonetta | この曲もウェイン・ショーター作曲で、美しいバラード曲です。甘いバラード曲ではなく、鋭さのある都会的なバラード曲です。この曲のハービー・ハンコックのピアノは地味ながらも美しく存在感があります。このアルバムの中では、ハービー・ハンコックのピアノが一番光っています。 | 8点 |
7 | Nothing Like You | 録音時期も違うこの曲をなぜ収録したのか、全く理解に苦しみます。折角のこのアルバムの都会的な雰囲気を、この1曲で台無しにしてしまいました。レコード会社が勝手に入れてしまったのでしょうか。ボーカルも全然いけていないです。 | 2点 |
平均点 | 6.6点 |
各メンバが作った曲で構成されており、ウェイン・ショーターが4曲、ハービー・ハンコックが1曲、トニー・ウィリアムスが1曲とウェイン・ショーターの曲が圧倒的に多いです。マイルスの曲は、1曲もありませんが、それでも、マイルス色の出ているアルバムです。
「Nothing Like You」以外は、1967年の録音で、「Nothing Like You」だけは、1962年の録音です。ボーカルも入っていて、このアルバムの中では浮きまくっています。なぜ、この曲を収録したのかは、???ですね。この1曲のせいで、このアルバムの評価が下がってしまいました。
(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:tenor saxophone
Herbie Hancock: piano
Ron Carter:double bass
Tony Williams:drums
Nefertiti
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Nefertiti | このアルバムもウェイン・ショーターの曲からスタートです。渋いバラード曲ですが、各メンバのアドリブ・ソロが入っておらず、ひたすら同じメロディが繰り返されていきます。この辺り、目新しさを感じます。マイルスの指示で、このような曲にしたのでしょうか。 | 6点 |
2 | Fall | ウェイン・ショーターの曲が連続で続きます。マイルスのトランペットと、ハービー・ハンコックのピアノが美しく、これぞ都会的な夜に似合うウェイン・ショーターらしい曲です。ハービー・ハンコックのピアノのソロの間、同じメロディが繰り返され、その後のウェイン・ショーターのサックスのソロが渋すぎます。 | 8点 |
3 | Hand Jive | トニーウイリアムスの曲で、アップテンポのノリの良いジャズ曲です。トニーウイリアムスの曲ということもあり、ドラムのリズムが激しく、マイルスもウェイン・ショーターもノリの良い演奏をしています。ハービー・ハンコックのピアノのソロの出だしは、少し、セロニアス・モンクを思わせるところがあります。 | 6点 |
4 | Madness | ハービー・ハンコックのアップテンポの曲で、ハービー・ハンコックのアルバム「処女航海」に入っていてもおかしくなさそうな曲です。マイルスのトランペット・ソロとハービー・ハンコックのピアノ・ソロが聞きどころです。 | 7点 |
5 | Riot | この曲も、ハービー・ハンコックの曲で、このアルバムの翌年に発売されるハービー・ハンコックのアルバム「Speak Like a Child」にも収録されている曲です。「Speak Like a Child」の方は、管楽器がトロンボーンで、ピアノ中心の演奏になっていますが、こちらの方は、サックスとトランペットのソロが中心となっています。 | 7点 |
6 | Pinocchio | ラストは、ウェイン・ショーターの曲で、5人のテンポの良い演奏で締め括られます。ピノキオをイメージして作ったのかは分かりませんが、トランペット、サックス、ピアノのソロが均等に配置され、ジャズらしい曲に仕上がっています。 | 6点 |
平均点 | 6.7点 |
前作「Sorcerer」と同様、各メンバが作った曲で構成されており、ウェイン・ショーターが3曲、ハービー・ハンコックが2曲、トニー・ウィリアムスが1曲と、マイルスの曲は、1曲もありません。
アルバム名にもなっている「Nefertiti」は、マイルスとウェイン・ショーターが同じメロディを繰り返す曲で、アドリブ・ソロが入っておらず、新しいジャズのスタイルが伺えます。
(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:tenor saxophone
Herbie Hancock: piano
Ron Carter:double bass
Tony Williams:drums
Miles in the Sky
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | Stuff | エレクトリック・ピアノ(エレピ)から始まるこの曲は、マイルス初のエレクトリック化された曲です。エレピとロック調のドラムが、並々ならぬ緊張感があり、その上にマイルスの繰り返されるトランペットのメロディが乗っかってきます。「Sorcerer」や「Nefertiti」では、マイルスの曲はありませんでしたが、この曲はマイルス作曲で、新しい音楽に取り組むマイルスの情熱が感じられます。 | 7点 |
2 | Paraphernalia | この曲は、ジョージ・ベンソンのギターがフィーチャーされたウェイン・ショーターの曲です。ジョージ・ベンソンのギターは前面には出てきませんが、バックで、ジョージ・ベンソンらしいギター・プレイが聞けます。ハービー・ハンコックのピアノとの絡みもなかなか良い味が出ています。 | 6点 |
3 | Black Comedy | トニー・ウィリアムスの作曲で、エレクトリック化しておらず、このアルバムの中で、最もジャズしている曲です。1曲目「Stuff」のエレピが良いか、この曲のようなアコースティック・ピアノが良いか聞き比べるのも良いかと思います。斬新さはありませんが、アナログのピアノはやはり響きが良いです。 | 6点 |
4 | Country Son | マイルスの曲で、リズムが様々に変わり、最初はアップテンポのジャズ曲から始まり、途中でスローテンポのバラード曲となり、ミドルテンポへと展開されていきます。1曲目「Stuff」ほどの斬新さはありませんが、マイルスの音楽が変わりつつあることが分かる曲です。 | 6点 |
平均点 | 6.3点 |
マイルス初のエレクトリックピアノとエレクトリックギターが使用されたアルバムです。ここからエレクトリック・マイルスがスタートしますが、まだジャズ要素の強いアルバムです。
注目は、17分を超える「Stuff」で、この曲から、「In a Silent Way」や「Bitches Brew」へとつながっていきます。エレクトリックピアノの音が斬新で、そこにアナログなトランペットとサックスが絡み合い、その対比が興味深く面白さがあります。
(メンバ)
Miles Davis:trumpet
Wayne Shorter:tenor saxophone
Herbie Hancock:piano
Ron Carter:bass
Tony Williams:drums
George Benson:Guitar(track2)
まとめ
Miles Davisの1967-1968年のアルバム4枚を紹介・評価しました。
第2期クインテットによるジャズしている「Sorcerer」「Nefertiti」から、初のエレクトリックを使用した「Miles in the Sky」と、これから新たなマイルスが始まる過渡期のアルバムでした。
次のアルバム「キリマンジャロの娘」から、本格的な電子マイルスが始まりますが、その前に、マイルスのジャズ・アルバムのまとめとして、次回は、今まで評価してきたアルバムのランキングをまとめたいと思います。→ Miles Davis(マイルス・デイヴィス) 全アルバム ランキング Jazz編
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