ショパン ピアノ作品集(「ピアノ協奏曲」「ロンド」「単独作品」)
前回は、ショパンのピアノ作品集「マズルカ」の紹介・評価をしましたので、今回は、最終回として、ショパンの「ピアノ協奏曲」「ロンド」「単独作品」を紹介・評価していきたいと思います。
ショパンの管弦楽の曲の数は多くありませんが、その中でも、「ピアノ協奏曲」の2曲が最も知られています。
もともとショパンは、管弦楽に興味を持っていなかったようですが、「世の中に認められるためには、管弦楽を作曲することが有利だった」ことから、20才の頃に、この「ピアノ協奏曲」の2曲が作曲されました。
「ロンド」は、異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式の曲で、ショパンは、4曲作曲しています。
今回は、そんな「ピアノ協奏曲」「ロンド」と、今まで取り上げていませんでした「単独作品」も併せて、紹介・評価していきます。
評価点は、いい曲かどうかで、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価と違うところもあるかもしれませんが、その点、ご了承ください。
ショパンの曲を聞いてみたい方、ショパンのピアノ曲の評価や、おすすめの曲を知りたい方に、役立つ記事になっています。
評価結果
評価結果は、以下の通りになりました。
作品 | 評価(10点満点) |
---|---|
ピアノ協奏曲 | 6.33点 |
ロンド | 6.00点 |
評価の詳細は、以下の通りです。
ピアノ協奏曲
【ピアノ協奏曲第1番】
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | 第1楽章 | 堂々としたオーケストラから始まりますが、最初の4分ほど、ピアノは全く登場しません。オーケストラからピアノに変わると、堂々とした演奏から、美しいピアノ中心の曲になります。20分近いソナタ形式の曲で、ショパンの作品の中で、最も壮大な作品です。 | 7点 |
2 | 第2楽章 | ショパン自身「たとえば、美しい春の月夜のような」と表現している曲で、その表現がぴったりのロマンチックな曲です。威風堂々とした第1楽章とは正反対で、終始、静かなロマンチックさが表れている曲です。 | 6点 |
3 | 第3楽章 | 導入部のピアノの旋律は、古典クラシックのようで、あまりショパンらしさが感じられません。一方、オーケストラは、はつらつとした明るい旋律で、その対比が面白い作品です。終始、ピアノとオーケストラの掛け合いがされ、終盤に向けてピアノの演奏が激しくなっていきます。 | 5点 |
【ピアノ協奏曲第2番】
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | 第1楽章 | 導入部のオーケストラは、古典風の趣があります。ピアノ協奏曲第1番 第1楽章と同様、なかなかピアノは登場してきません。ピアノが登場する辺りから長調に転調され、オーケストラは控えめになり、哀愁の漂う美しいピアノの演奏に入っていきます。 | 7点 |
2 | 第2楽章 | 当時、ショパンは、コンスタンティア・グラドコフスカという女性に恋をしており、この曲は、彼女のことを想いながら作曲されたと言われています。そのため、オーケストラとピアノの旋律には、甘くロマンチックさが溢れています。 | 6点 |
3 | 第3楽章 | マズルカのような舞曲から始まり、ピアノの激しさが増していきます。第1楽章、第2楽章と異なり、ピアノとオーケストラの掛け合いが多い曲で、全体的に華やかな作品です。 | 7点 |
平均点 | 6.3点 |
出版された順に第1番、第2番と付けられていますが、実際は、第2番の方が早く作曲されており、第1番は、1830年、第2番は、1829年に作曲されています。
ショパンが、20才頃の若い時代に作曲されたため、オーケストレーションの部分で、弱点を指摘されることが多い作品です。それでも、ピアノはショパンらしい甘美なメロディを持っています。
ロンド
No | 曲名 | 感想 | 評価点 |
---|---|---|---|
1 | ハ短調 | ショパンが公表した記念すべき一番最初の作品で、15才の時に作曲された曲です。ショパンの洗練された甘美さはまだ持ち合わせてはいませんが、若さが感じられる華やかさのある曲です。 | 5点 |
2 | マズルカ風ロンド | 曲名の通り、マズルカとロンドを合わせたような曲です。主題はマズルカ風、中間部はきらびやかなサロン風のような曲調を持っています。この曲もショパンの若い時代(16才)の時に作曲されたものですが、独創性を感じます。 | 6点 |
3 | 変ホ長調 | 導入部は短調の憂鬱な曲調で始まりますが、その後、長調に転調され、目まぐるしく曲調が変化していきます。途中で、舞曲のような旋律があったり、バラードのように速く激しい曲調に変化したりと前2曲のロンドよりもスケールが大きくなっています。 | 7点 |
4 | 2台のピアノのためのロンド | ショパンの作品では珍しい2台連弾のピアノ曲ですが、もともとはピアノ単独用に書かれていたため、あまり連弾を感じさせない作品です。 | 6点 |
平均点 | 6.0点 |
ショパンの若き時代の作品であるため、ショパンの中期〜後期の独特な甘美さはまだありませんが、若々しい華やかさを持っています。
古典的な形式のロンドは、ショパンは苦手だったようで、ショパンの若い時代に作曲されて以降は、ロンド形式の曲は書かれていません。
単独曲
次は、独立した単独曲を遺作も含めて、紹介・評価していきます。
華麗なる変奏曲
変奏曲とは、主題を、形を変えながら繰り返す形式で、ジャズの即興演奏に近いかもしれません。ショパンは、古典的な変奏曲が苦手だったようで、ピアノ独奏曲の変奏曲は、あまりありません。この曲は、ショパンの初期の作品であるため、古典的な要素が強く、ショパンらしさを感じない作品です。
評価点:5点
ボレロ
ボレロとは、スペインの民族舞曲のことで、ラベルのボレロが有名かと思います。ショパン唯一のボレロの曲で、舞曲らしい派手なリズミカルな作品です。主題は短調で、明るさはなく、暗めのタンゴといった異国情緒が漂っています。
評価点:6点
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
もともとは、管弦楽とピアノによる作品でしたが、後に、ピアノ独奏による「アンダンテ・スピアナート」の部分が作曲され、ピアノ独奏で演奏されるようになりました。ポロネーズの曲ですが、ポロネーズの作品集(第1番〜第16番)には入らず、単独作品の扱いになっています。ポロネーズ作品の中でも華麗な曲で、傑作に位置付けられる曲です。
評価点:7点
タランテラ
タランテラとは、イタリア・ナポリの舞曲のことで、この曲もタランテラらしいリズミカルな舞曲です。しかし、ショパンの甘美さはなく、終始、リズミカルな単調な舞曲が続きます。ショパン唯一のタランテラの曲です。
評価点:4点
演奏会用アレグロ
もともとは、ピアノ協奏曲として制作していましたが、最終的には、ピアノ独奏曲に仕上げられた作品です。そのためか、静かな曲調と華やかな曲調の静と動が混在しており、動のパートをオーケストラ演奏で考えていたのかもしれません。オーケストラ演奏を想定していたパートをピアノ単独で演奏しなければならないため、ショパンの曲の中でも演奏技術の高い曲です。10分以上の壮大な曲です。
評価点:6点
幻想曲
幻想曲とは、形式に捉われない自由な楽曲を意味し、即興曲やバラードに近い曲です。ショパンの曲の中に、幻想即興曲と名付けられている曲もありますので、幻想曲と即興曲の間には、あまり明確な区分けの基準はないのかもしれません。導入部は、重厚さのあるゆったりとした曲調ですが、一気に、速く激しい曲に変わっていきます。この激しい曲調が、幻想曲の持つ自由な形式を表しているのかと思います。15分超の長い曲です。
評価点:9点
子守歌
曲名の通り、導入部は、ゆったりとした静かな曲調ですが、中間部では、ショパンらしい甘美な旋律が溢れ出てきます。ショパンの楽曲の中でも、上位に位置付けられる美しい作品です。
評価点:8点
舟歌
ショパンの単独曲の中では、最も有名な曲で、ショパンのベスト版には必ず収録される作品です。導入部では、ゆっくりとゆらゆらしている舟のイメージを抱かせますが、中間部では、嵐のような大きな揺れに変わるように激しい曲調になります。あるピアニストが、「舟歌は、恋をしなければ絶対に弾くことができない」と言っていましたが、それだけ感情を込めて演奏をしないと、うまく表現が出来ない難曲です。
評価点:9点
葬送行進曲 ハ短調
ショパンの葬送行進曲では、ピアノソナタ第2番が有名であるため、この曲は、ほとんど知られていない作品です。ピアノソナタ第2番の葬送行進曲ほど暗い印象はなく、少し明るさが入ったゆったりとした曲です。
評価点:5点
ヘクサメロン変奏曲 第6変奏
「ヘクサメロン」とは、フランツ・リストの呼びかけによって6人の作曲家が合作したピアノ曲のことです。1分足らずの短い曲ですが、美しさと激しさを併せ持った作品です。
評価点:6点
ドイツ民謡「スイスの少年」の主題による変奏曲
この曲以降は、遺作になります。この曲は、1826年もしくは1827年作曲のショパンが若い時代の作品で、変奏曲ということもあり、ショパンらしさはほとんどありません。生前に発表しなかったのも分かるような作品です。
評価点:3点
四手のための変奏曲
ピアノ連弾の曲で、「ヴェニスの謝肉祭」の旋律を主題とした変奏曲です。ショパンが16才の時に作曲された曲のためか、古典風でショパンらしさはほとんどなく、あまり面白みのない作品です。
評価点:3点
変奏曲「パガニーニの思い出」
ヴァイオリニストのニコロ・パガニーニが作曲した「ヴェネツィアの謝肉祭 変奏曲 作品10」を、演奏会でショパンが聴いたことを機に、この主題に基づいて作曲された作品です。この曲も古典風でショパンらしさはほとんどない曲です。
評価点:4点
カンタービレ 変ロ長調
夜想曲風の美しさがありますが、1分足らずの短い曲です。美しい曲であるため、夜想曲集の中に入れてもよかったのではないかと感じます。
評価点:6点
アルバムの一葉(モデラート)
静かなワルツ風、サロン風の特徴を持つ曲です。ゆっくりとした美しさはありますが、1分足らずの短い曲であるため、物足りなさを感じます。
評価点:4点
ギャロップ 変イ長調
導入部はポロネーズ風ですが、途中から、子供の練習曲のような作風に変わっていきます。遺作の中でも、最もショパンらしさがないため、敢えて遺作として発表する必要はなかったのではないかと感じてしまいます。30秒足らずの短い曲です。
評価点:2点
フーガ イ短調
フーガとは、曲の途中から、前に出た主題や旋律が次々と追いかける形式の曲で、バッハの曲が有名です。この曲もバッハに似ており、対立法が用いられています。ショパンの曲の中では異色な作品です。
評価点:6点
2つのブーレ
ブーレとは、オーヴェルニュとビスカヤに共通する17世紀の舞曲です。ショパンは、2曲のブーレを作曲しており、ともに30秒足らずの短い曲です。ともに明るめの舞曲で、古典的な雰囲気が漂っています。
評価点:4点
まとめ
今回紹介しました「ピアノ協奏曲」「ロンド」「単独作品」の中では、「舟歌」ぐらいしか有名な曲はありません。
「ピアノ協奏曲」は、有名ではありますが、ショパンはピアノ独奏曲が主体であるため、管弦楽が入った「ピアノ協奏曲」を聞く人は、あまりいないのではないかと思っています。
しかし、管弦楽が入っても、ピアノの旋律は美しいため、ショパンの「ピアノ協奏曲」を聞いたことがない人は、1度は聞いてみるのも良いかと思います。
今回で、ショパンのピアノ曲全曲の紹介・評価が終わりました。
ショパンの作品は多く、全曲聞くには、相当な時間を要しますので、ショパンの初心者の方は、ベスト・アルバムから聞くことをお勧めします。
その中から、好きな曲が入っている作品集を聞いていくのが良いかと思います。
次回は、今までの記事のまとめとして、ショパンのピアノ全作品集のランキングをまとめたいと思います。
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