Bill Evans(ビル・エヴァンス) アルバムの紹介・評価|1959-61年

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ビル・エヴァンス 1959-61年アルバム(“Portrait in Jazz” “Explorations” “Sunday at the Village Vanguard” “Waltz for Debby”)の紹介・評価

今回から、ジャズ・ピアニスト Bill Evans(ビル・エヴァンス) のアルバムを、数回に渡り、紹介・評価していきたいと思います。

ビル・エヴァンスは、ジャズ界の中で最も有名なピアニストで、多くのジャズ・ピアニストに影響を及ぼしました。

ビル・エヴァンスのピアノは、クラシカルの要素を取り入れながら、即興演奏において、とても美しいメロディを奏でます。

ジャズ・ピアニストの中で、ビル・エヴァンスほど美しいメロディを演奏できる人はいないと思っています。

ビル・エヴァンスのリーダー作のアルバムは、ピアノ、ベース、ドラムのトリオ演奏が多いことが特徴です。

今回は、そんなビル・エヴァンスのアルバムの中で、最も人気のあるアルバム「Portrait in Jazz」「Explorations」「Sunday at the Village Vanguard」「Waltz for Debby」を紹介・評価していきます。

この4枚のアルバムが際立っているのは、ビル・エヴァンスとベースのスコット・ラファロの相性が抜群に良いことにあります。

残念ながら、スコット・ラファロは、交通事故で若くして他界してしまい、ビル・エヴァンスのアルバムには、この4枚しか参加していません。

評価点は、個人的な独断と偏見で採点していますので、世間一般の評価とは異なるかもしれませんが、その点は、ご了承ください。

ビル・エヴァンスのおすすめのアルバムを知りたい方や、ビル・エヴァンスのアルバムの評価を知りたい方に、役立つ記事になっています。

評価結果

評価結果は以下になりました。

No作品評価点(10点満点)
1Portrait in Jazz7.33点
2Explorations7.13点
3Sunday at the Village Vanguard6.5点
4Waltz for Debby8.29点

(メンバ)
Bill Evans:Piano
Scott LaFaro:Bass
Paul Motian:drums

評価の詳細は、以下の通りです。

評価詳細

Portrait In Jazz

No曲名感想評価点
1Come Rain Or Come Shineこの曲は、「虹の彼方」で有名なハロルド・アーレン作曲のポピュラーソングです。このイントロ・ナンバーから、ビル・エヴァンスのピアノの美しさが溢れており、この曲だけで、このアルバムが名盤に値することが分かります。8点
2,3Autumn Leaves(stereo,mono)言わずとしれたジャズのスタンダード曲「枯葉」で、オリジナル曲は、スローテンポのバラード曲ですが、ここでのビル・エヴァンスの演奏は、軽やかな明るい曲にアレンジしてしまっています。この軽やかな曲調を好むか好まないかは、人それぞれだと思いますが、ビル・エヴァンスの演奏の素晴らしさは、伝わってきます。マイルス・デイヴィスの「枯葉」が有名ですが、マイルス・デイヴィスのバラードな演奏とは対照的です。7点
4Witchcraftこの曲は、サイ・コールマン作曲のポピュラー・ソングで、フランク・シナトラのシングル曲でも有名な曲です。ここでの演奏は、スコット・ラファロのベースが効いており、ピアノとベースのせめぎ合いが続けられています。7点
5When I Fall In Loveビクター・ヤングとエドワード・ヘイマンが、1952年の映画「零号作戦」の主題歌として作曲した甘いバラード曲で、ビル・エヴァンスの甘美なピアノ演奏が際立っています。マイルス・デイヴィスの「Steamin’」にも収録されていますので、ビル・エヴァンスのピアノか、マイルス・デイヴィスのトランペットか、どちらが良いか聴き比べるのも面白いかと思います。9点
6Peri’s Scopeビル・エヴァンスのオリジナル曲で、エヴァンスのガールフレンドのペリに催促されて作られた曲と言われています。ビル・エヴァンスのオリジナル曲では、「Waltz For Debby」が有名ですが、この曲は、ビル・エヴァンスのオリジナル曲の中では、影に隠れてしまって、ほとんど演奏されることのない曲です。5点
7What Is This Thing Called Love?コール・ポーターが1929年のミュージカル「ウェイク・アップ・アンド・ドリーム」のために作った曲で、ピアノ、ベースともに速い演奏がされており、ビル・エヴァンスのピアノの演奏技術を味わえる曲です。6点
8Spring Is Hereミュージカル『私は天使と結婚した』のためにリチャード・ロジャースが作曲した作品で、ビル・エヴァンスのピアノ演奏にとてもマッチしたバラード曲です。静かなバラード曲であるため、真夜中に聞くのに適した曲です。9点
9Some Day My Prince Will Comeディズニーの『白雪姫』 の挿入歌で、ジャズのスタンダード曲としても有名な曲です。オリジナル曲を忠実に演奏しており、ビル・エヴァンスのピアノ・ソロは、軽やかにスイングしています。7点
10,11Blue In Green(take3,take2)マイルス・デイヴィスとビル・エヴァンスの共作曲で、マイルス・デイヴィスの「Kind Of Blue」にも収録されています。このアルバムの「Blue In Green」は、ビル・エヴァンスのピアノだけでメロディを奏でているため、「Kind Of Blue」の同曲とは雰囲気が異なります。8点
平均点7.3点

 スコット・ラファロとのトリオの第1作目のアルバムです。1作目から、ビル・エヴァンスとスコット・ラファロの呼吸がぴったりで、スコット・ラファロとの相性が抜群に良いことが感じられます。
 このアルバムでは、斬新なアレンジの「枯葉」が取り上げられることが多いアルバムですが、個人的には、美しさ溢れるバラード曲「When I Fall In Love」「Spring Is Here」がおすすめ曲です。

Explorations

No曲名感想評価点
1Israelアメリカのトランペッター ジョン・E・カリシの作曲で、マイルス・デイヴィスの「クールの誕生」に収録され、有名になった曲です。「クールの誕生」は、小編成のオーケストラであるため、少し明るめの曲調で演奏されていますが、ビル・エヴァンスは、少し暗めのブルース風にアレンジして演奏しています。6点
2Haunted Heartミュージカル「インサイドU.S.A」の挿入歌で、アーサーシュワルツが作曲した作品です。邦題は「魅せられし心」で、優しく歌い上げるようなビル・エヴァンスの演奏にマッチしたバラード曲です。8点
3Beautiful Loveヴィクター・ヤングとエグバート・ヴァン・オルスティンの作曲によるポピュラー・ソングです。ビル・エヴァンスは、バラード曲とは違ったテンポの良い躍動感のある演奏を行っています。スコット・ラファロのベースが効いており、ピアノとの絡みが抜群です。7点
4Elsaこの曲は、ビル・エヴァンスの演奏の中でも、ベストに位置付けられる曲です。ビル・エヴァンスと友人関係であったアール・ジンダースの作曲ですが、ビル・エヴァンスのために書かれた曲だと言ってもいいぐらい、ビル・エヴァンスの演奏にマッチしています。以降、ビル・エヴァンスのレパートリーになる曲です。10点
5Nardisマイルス・デイヴィスが、キャノンボール・アダレイのために書いた曲です。ビル・エヴァンスのピアノは、マイルス・デイヴィスの演奏よりも速いテンポで演奏しています。この曲は、ビル・エヴァンスのピアノ以上に、スコット・ラファロが、迫力のあるベース演奏をしています。7点
6How Deep Is The Ocean?アービング・バーリンが1932年に作曲したラブ・バラード曲です。ビル・エヴァンスは、ラブ・バラードとは異なったテンポの良いアレンジで、ピアノを演奏しています。6点
7I Wish I Knewこ1945年に作られた映画「ダイヤモンド・ホースシュー」の主題歌で、ハリー・ウォーレンが作曲した作品です。ジョン・コルトレーンの「バラード」にも収録されており、ジョン・コルトレーンの演奏のイメージが強いため、ピアノ演奏だけだと少し物足りなさを感じますが、ビル・エヴァンスの美しいアレンジには、センスの良さを感じます。7点
8Sweet And Lovely1930年代を代表するポピュラー・ソングです。曲の良さ以上に、トリオ演奏として真価が発揮されている曲です。このアルバムの中のトリオ演奏では、ベストな1曲だと思っています。6点
平均点7.1点

 スコット・ラファロとのトリオの第2作目のスタジオ・アルバムで、1作目の「Portrait In Jazz」よりも落ち着いた雰囲気のアルバムです。そのため、スコット・ラファロとのトリオの4枚のアルバムの中では、地味な印象を持ちます。
 しかし、各曲どれも優れており、特に「Elsa」と「Nardis」は、今後のビル・エヴァンスのレパートリーになる重要曲です。

Sunday at the Village Vanguard

No曲名感想評価点
1Gloria’s Stepスコット・ラファロのオリジナル曲で、スコット・ラファロはベーシストとしての才能だけではなく、作曲能力もあったことが分かる曲です。スコット・ラファロの自作曲であるため、ベース・ソロがたっぷりあり、聞き応えのある作品です。7点
2My Man’s Gone Nowジョージ・ガーシュウィン作曲のオペラ「Porgy and Bess」のために書かれた曲です。この曲もベースが効いており、ピアノとの絡みがとても良く、迫力満点の激しいベース・ソロには、痺れてしまいます。7点
3Solarマイルス・デイヴィスのオリジナル曲で、マイルス・デイヴィスのアルバム「Walkin’」に収録されています。オリジナルは、バラード曲ですが、ここでは、テンポの良いトリオ演奏がされています。6点
4Alice in Wonderlandディズニー映画「不思議の国のアリス」の主題曲で、有名なスタンダード曲です。チャーミングなワルツ風の曲で、ビル・エヴァンスのレパートリー「How My Heart Sings!」のように、ワルツ曲は、ビル・エヴァンスのお得意とするところです。8点
5All Of Youコール・ポーター作曲のポピュラー・ソングです。多くのジャズ・ミュージシャンに演奏されており、マイルス・デイヴィスの「Round About Midnight」にも収録されています。この曲もテンポの良いトリオ演奏がされています。6点
6Jade Visions2曲目のスコット・ラファロのオリジナル曲で、スコット・ラファロのベースのイントロから、ビル・エヴァンスの美しいピアノが絡んできます。スコット・ラファロのオリジナル曲ですが、ベース・ソロは入っていません。5点
平均点6.5点

 スコット・ラファロとのトリオのライブ・アルバムで、1961年6月の最終日の日曜日に収録されたライブ音源です。前作のスタジオ・アルバム「Explorations」では、スコット・ラファロのベースが控え目でしたが、このアルバムでは、スコット・ラファロのベースが全開で、スコット・ラファロのためのアルバムと言っても過言ではないぐらい、スコット・ラファロのベースが活躍しています。
 スコット・ラファロのオリジナル曲「Gloria’s Step」「Jade Visions」の2曲は、スコット・ラファロの作曲能力が高いことが分かる作品です。

Waltz For Debby

No曲名感想評価点
1My Foolish Heart1949年のアメリカ映画「愚かなり我が心」の主題歌で、ビクター・ヤングが作曲した作品です。映画の中で流れる「My Foolish Heart」は、それほど印象に残る曲ではありませんが、このビル・エヴァンスの演奏の美しさは素晴らしく、ビル・エヴァンスの演奏の中でも、最も美しい演奏と言っても過言ではありません。もし、この映画の中で、ビル・エヴァンスの演奏の「My Foolish Heart」が流れていたら、もっと感動的な映画になっていたかと思います。10点
2,7Waltz For Debby(テイク2,テイク1)ビル・エヴァンスのオリジナル曲で、ビル・エヴァンスのオリジナル曲の中では、最も有名な曲です。ビル・エヴァンスのお兄さんの娘デビィに捧げて書いた曲で、この曲を聞くと、相当可愛らしい娘さんだったことが想像ができます。とても可愛らしいワルツ曲です。10点
3,8Detour Ahead(テイク2,テイク1)ジャズ・トリオであるソフトウィンズ作曲のバラード曲です。イントロのビル・エヴァンスの静かなピアノから、激しいベースに呼応して、ピアノもスリリングな演奏に変わっていきます。7点
4,9My Romance(テイク1,テイク2)ミュージカル「ジャンボ」の主題歌で、リチャード・ロジャースが作曲した作品です。最初の1分ほどは、ピアノだけの演奏ですが、その後、ドラム・ベースが入ってきて、スィングするトリオ演奏が始まります。7点
5Some Other Time前曲に続き、この曲もミュージカルの曲で、レナード・バーンスタインが作曲した作品です。美しいバラード曲で、イントロが、アルバム「Everybody Digs Bill Evans」に収録されている「Peace Piece」に雰囲気が似ています。ビル・エヴァンスのバラード曲の演奏の美しさには、格別なものがあります。9点
6Milestonesマイルス・デイヴィス作曲の有名曲です。オリジナルは、激しい曲ですが、ここでのビル・エヴァンスの演奏は、激しい中にも美しさがあり、そのバランスが絶妙です。8点
7Porgy(I Love You,Porgy)ジョージ・ガーシュウィン作曲のオペラ「Porgy and Bess」のために書かれた美しいバラード曲です。「Sunday at the Village Vanguard」でも、「Porgy and Bess」の曲を演奏しており、そちらは「My Man’s Gone Now」が選曲されています。7点
平均点8.3点

 「Sunday at the Village Vanguard」がスコット・ラファロのベースに重きを置いた作品に対して、このアルバムは、ビル・エヴァンスのピアノに重きを置いた作品になっています。
 話し声やグラスの音、キャッシャーを打つ音が入っていたりと臨場感があふれています。他のビル・エヴァンスのどのアルバムよりも、ピアノの美しさに格別なものがあります。このアルバムは、ビル・エヴァンスの代表作でもあり、ジャズ界でも屈指の名盤です。

まとめ

スコット・ラファロが参加したビル・エヴァンス・トリオのアルバム4枚を紹介しました。

2枚はスタジオ・アルバム、2枚はライブ・アルバムですが、全て素晴らしいアルバムで、スコット・ラファロが25歳で交通事故死しなければ、もっとたくさんの名盤ができていたのではないかと感じます。

25歳はあまりにも早い死でした。

ビル・エヴァンスはショックの余りしばらくの間ピアノに触れることすら出来ず、半年もの間、音楽シーンから遠ざかっていたとのことです。

ビル・エヴァンスは、この4枚以外にも多数素晴らしいアルバムを残していますので、今後も、ビル・エヴァンスの作品を紹介していきたいと思います。

次回は、ビル・エヴァンスの最初期の1956-59年のアルバムの紹介・評価をしていきたいと思います。

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